オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
悪名高き皇帝ネロの後のローマ帝国の物語で、紀元69年から98年までを描いている。
ガルバ、オトー、ヴィテリウス、ヴェスパシアヌス、ティトゥス、ドミニティアヌスと皇帝が次々と変わる時代だが、ローマ帝国自体は比較的安定していたようである。首相が次々と変わる日本のように国民がどこか政治に無関心な様子である。それは見方を変えると、すでに国自体がそう簡単に不安定な状態にならないという確信が国民のなかにあったのだろう。
次々変わる皇帝のその政策やふるまいをここまで連続して見せられると、どのような人間が信用を失いやすく、どのような人間が長く信頼を勝ち取れるかという傾向が見えてくるようだ。「歴史から学ぶことは多い」と言葉としては多くの人が知っていて、使ったりもするが、ローマ帝国の皇帝たちから学べることは、企業の経営者たちにも共通している気がする。まだローマ帝国の歴史なかばではあるが、結局カエサルとオクタビアヌスに勝る皇帝はいないのではないかと思えてくる。
本書のもう一つの個人的な見所はポンペイで有名なヴォスヴィオ火山の噴火である。当時ヴォスヴィオ火山の麓の町で生きていた男性がタキトゥスという当時の作家に送った手紙の全訳はそれが確かに現実に存在した悲劇であることを伝えてくれる。
トライアヌスが皇帝になったことで終わる本書。ローマ帝国はこの後「五賢帝時代」と呼ばれる時代に入っていくのである。
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カテゴリー: 趣味/関心事
「自律神経が整う時間コントロール術」小林弘幸
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
自律神経を整えるための生活方法を書いている。
正直僕自身も人生の効率化はかなり強く意識していて、本書に書いてある多くのこと、例えばミニマリズムや早起きや整理整頓、毎日の同じことを繰り返す、などはすでに生活に取り入れている。そんな僕でもいくつか現在できてなくて取り入れたいなと思えることがいくつかあった。
朝はメールを見ない
スマホの通知機能はオフ
夕食は就寝の3時間前までに
記念日を大切に
どれも説明するまでもないかもしれないが、なかなかわかっていてもできないものだ。また、著者がロンドンの病院で働いていたときに出会った尊敬できる人の考え方が印象に残った。
一見冷たく寂しく聞こえる言葉だが、人のせいにしないで常に冷静にいるために、また人の励ましや行為に心から感謝できる心構えなのだと、語っている。僕自身の普段の心構えと似ている部分もあるが、人へのアドバイスとして心に留めておきたいと思った。
全体的にはものすごい特別な内容が書かれているわけではない。試行錯誤をして生きてきた人がある程度の年齢に達すれば誰しもそれなりに独自の生き方や習慣を身につけており、そんななかの1人がそれを本にしてシェアしてくれたという印象である。もちろん上に書いたようにそのなかからも得られるものはあるが特別、知人にお勧めするほどの内容ではない。
【楽天ブックス】「自律神経が整う時間コントロール術」
「美術館で働くということ」オノユウリ
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
東京都現代美術館の仕事の様子を描いた漫画である。
先日読んだ原田マハの「弾幕のゲルニカ」が以前か気になっていた学芸員という仕事に再び
目を向けた。
本書を読み始めて知ったのだが、どうやら展覧会などで美術館に訪れたときに、部屋の隅に座っている黒い服を着た女性は学芸員ではないらしい。学芸員という職業の名前を最初に知ったのが、美術館で座っている人を指してのことだっただけにこれには驚かされた。実際には、美術館にのんびり座っている暇もないほど、毎日忙しく、好きな画家や好きな美術に本当に深く関われる仕事だとわかった。
前半は展覧会などを企画する学芸員の仕事の様子が描かれており、美術館に所属する学芸員たちは自分のすすめる作家の展覧会を提案し、企画し、作家と一緒になって展覧会を開催するのだという。だから、ときには学芸員の意見が作家の作品に影響を与えることもあるのだという。そう考えると、決してただ美術を展示するだけの受け身な仕事でないことがわかる。人生で経験できる仕事はわずかだけど、こんな生き方もしてみたかったと思わせてくれるだろう。
後半のコレクション担当もとても面白かった。コレクション担当とは美術館の所蔵する作品を決定、管理する仕事で美術館が所蔵する作品を決める際には、何を後世に伝えるべきかを職員の間で議論して決めていくのだそうだ。そうやって議論のすでに決定された所蔵された作品が貸し出されたりする際には我が子を送り出す親のような気持ちになるのだという。
学芸員という仕事について知りたくて手に取った本ではあるが、むしろ美術の奥深さ、展覧会、美術館など、美術に対する考え方もさらに深めてくれた気がする。
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「「引きずらない」人の習慣 怒り、悲しみ、不安のワナにハマらない」西多昌規
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人生において、怒りや悲しみを引きずるのは悪い事ではないが、早く立ち直って前向きに冷静に生きることができれば人生はきっと良くなるはず。僕自身、どちらかというとまさに「引きずらない人」なのだが、「引きずる人」に今以上にいいアドバイスを与えられたらと考え、本書を手に取った。
気になったのは次の項目。
引きずる人は白黒二択で考える、引きずらない人はグレーでも納得できる
引きずる人はまず言い訳をする、引きずらない人はまず素直に謝る
いい汗をかくことは、メンタルにもプラスの効果がある
どれも思い当たることばかり、引きずるか引きずらないかという性格と直接関連性があるとは思っていなかったが、どれも「引きずらない」自分自身に当てはまることばかり。周囲を見渡しても「引きずらない」人は往々にして、多趣味で忙しく、運動をしていることが多いように感じる。
前半は日常的な出来事に対して「引きずらない」ための方法を書いているが、後半では、身近な人の死や、失恋など、引きずらないわけにはいかないような大きな悲しみに対する方法としても触れている。僕自身それほど大きな悲しみにはまだ出会っていないがぜひ次のことはぜひ覚えておきたいと思った。
思ったのは、こういう本を読む人も大部分は「引きずらない人」なのではないかということ。
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「Justin Bieber: First Step 2 Forever: My Story」Justin Bieber
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ジャスティンビーバーのことは正直、その名前と、YouTubeから火が点いて人気が出たということしか知らなかったが、若くても違う国の話でも、違う分野の話でも、サクセスストーリーのなかには学ぶ部分があり、本書も目についたのは偶然だが、何か学ぶ部分があるのではないかと思って手に取った。
やはりジャスティンが音楽に興味を抱いたときに、周囲の人間が誰も止めずにむしろサポートしたことが、子育てに関心のある僕にとっては印象的だった。モノをドラム代わりにスティックでたたいて壊すジャスティンをきっと家族や周囲の人間は暖かく見守ったのだろう。同じようにジャスティン自身も家族やファンの大切さを何度も繰り返しているのが素敵だった。このような本を読むといつも感じることだが、成功している人ほど周囲の人間のありがたみをしっかり認識しているという点は、見習うべきことなのだろう。
その若さゆえに、さすがにアラフォーの僕の心に響くような言葉は多くはなかったが、カナダという遠い地の一つの素敵な家族の形を垣間見ることができたきがする。もちろん、本書を読んでから、いろんなジャスティンの音楽をYouTubeで検索してみてみたし、ジャスティンが本書の中で触れている、ジャスティンの憧れのアーティストたちにも改めて興味を持った。YouTubeで一度ずつチェックして自分の視野の範囲を音楽の範囲にも広げていきたいと思った。
「超ひも理論をパパに習ってみた 天才物理学者・浪速阪教授の70分講義」橋本幸士
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
数学関連の書籍というとだいたい途中からついていけなくなるもの。それでも部分的にで新しい考え方に触れられたり、新しい方面に好奇心をかきたてることができればいいと思って本書も読み始めた。
超ひも理論とはなんだろう。一時期ポアンカレ予想を理解しようとした時も似たような話が出てきたが、どうやらこの話はそれとは別物で、どうやら次元の話のようだ。
僕の理解した範囲で説明すると、陽子は3つのクオークから成り立ち、そのクオークを説明するのに異次元の存在を考えたほうが都合いいということなのだとか。そして超ひも理論はその次元の存在を根底から覆すものなのだそうで、本書はそこに至るまでを高校生にもわかるように説明している。
個人的には、高次元の存在が低次元の世界に存在したときには、消えることが可能という考え方はすごく印象に残ったが、納得するほど理解できたとはとても言えないので、いくつか気になる単語や参考文献を残しておいて今後の読書につなげたい。
本書はタイトルからもわかるように、物理学者のパパが娘に超ひも理論を少しずつ説明していくという体裁をとっているが、パパが「娘に仕事を説明できることができて幸せだった。」と書いている点が印象的だった。やはり父親は、自分が人生で大きな時間を費やす分野を娘に理解してほしいんだろうなと感じた。
クオーク
グルーオン
ファインマン図
マルダセナ予想
ヤンミルズ理論
関連書籍
「大栗先生の超弦理論入門」
「スティーブ・ジョブズ」ウォルター・アイザックソン
オススメ度 ★★★★☆ 4/5アップルを創り、マッキントッシュ、iPod、iPhoneを生み出して世界を大きく変えたスティーブ・ジョブズを描く。
もはや本書を読まなくても、誰もが聞いたことあるほどの有名な世界を変えたエピソードである。アップルが取り入れたコンピューターのGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)に始まり、その後ジョブズがアップルを離れた後のアップルの低迷。そしてアップルに戻ってからのiPodによる音楽革命やiPhoneの登場などである。
なぜこれほど多くの画期的な製品をアップルは生み出せたのか。本書はその答えを知るための大きな手がかりとなるだろう。やはりアップルのトップであるステーブ・ジョブズが自分たちの作り出すものに対して並々ならぬこだわりを持ったためだろう。誰もがシンプルなものがいいとわかっていながらも世の中には複雑な製品が溢れているのである。アップルのこだわりである
というのがどれほど難しいことか、組織でものづくりに関わったことがある人ならわかるだろう。それに加えて、ジョブズが重視したのはいつだって「利益を出す」ことではなく「世界を変えるような新しいものを生み出す」ことだったのも大きいだろう。
世の中に「利益を出す」こと以外の目的を優先して動いている会社がどれほどあるんだろうか。もちろん、会社の創設時にはそのような熱い思いを持っている会社はあることだろう。それを持続することがどれほど難しいことか、多くの社員を抱え、多くの生活が会社の存続に委ねられてきたときに、「利益を出す」ことを優先してしまうことが、多くの企業にとってどれほど避けがたいものなのか、よくわかるのではないかろうか。
そんな多くの素晴らしい製品を生み出したジョブズだが、人間的にはかなり偏った性格だったようだ。もちろんそれも話には聞いていたが、本書を読むと改めてその偏りがわかる。家族や身近な人に対する接し方はとても普通の人が耐えられるものではなく、それによってジョブズも多くの困難にぶつかったようにも感じる。
本書でそのようなジョブズの性格を深く知ると、一般的に「普通」の人間性を持った人間が革新的な製品を生み出すことはできないのだろうか、とさえ思ってしまう。
さて、ジョブズ
なきアップルは今後どうなっていくのか、その動向に今後も注目したいと思った。
【楽天ブックス】「スティーブ・ジョブズ(1)」、「スティーブ・ジョブズ(2)」
「もじ部」雪朱里
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
書体デザイナーと書体に関わる仕事をしている人や書体についてデザインをしている人が書体について議論する「もじ部」のインタビューを記録している。
普段から書体に向き合っている人々の目線で書体について語られている点が非常に新鮮で、この一冊だけで書体について多くのことを学べた気がする。
UDフォントと言われるユニバーサルフォントには特に決まった形はないということと、UDフォントは見やすさを重視してはいるものの、もじ単体での読みやすさを重視するあまり日本語の持つリズムを乱していることもあるのだという。あまり考えずにUDフォントがあるならUDフォントを使用してきた僕としては非常に耳の痛い話である。
日本語は縦書きも横書きもあるので、縦に書かれた場合と、横に書かれた場合のフォントの理想形も異なるのだという。「い」や「む」の最後の一画の向き方向が次の字が下にあるか右にあるかで確かに変わるのである。書体づくりの奥深さを感じた。
また、書体デザイナー小林章さんの章では、欧文フォントのスペーシングについて学生たちに教えている。文字周辺スペースの面積を均等にするようにスペーシングするというのはわかっていてもがそれだけの知識では十分ではないというのは多くのデザイナーは経験として知っているのではないだろうか。本書で小林章氏はスペーシングについて新たな考え方を示してくれている。「AVAIL」「AVILA」という同じアルファベットで構成されながらも異なる言葉についてのスペーシングを例に、文字の並びによっっても最適なスペーシングが異なることを説明しているのだ。
パソコンによってデザインが一般の人の手の届くところに来たことはいいことだと思うが、それによって表面的なデザインが増えてしまうのも事実だろう。プロを自負するデザイナーはぜひ本書の知識を知って書体のあるべき姿を広めていってほしいと思った。
【楽天ブックス】「もじ部」
「暗幕のゲルニカ」原田マハ
![](https://i0.wp.com/tshop.r10s.jp/book/cabinet/7524/9784103317524.jpg?w=840&ssl=1)
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
イラクへの武力行使を発表された国連安保理ロビーにあるゲルニカには暗幕がかけられていた。戦争の悲惨さを訴えるゲルニカに武力行使を発表する場で暗幕をかけた理由が何なのか。ピカソに人生をかけたMomaのキュレーター八神瑤子(やがみようこ)はそんなピカソ騒動に巻き込まれていく。
まず自分の無知さを知ったのが、ピカソが作成したゲルニカは、絵画の他に3つのタペストリーがあり、その1つがニューヨークの国際連合本部にあるのだという。本書はそんな「もう一つのゲルニカ」と、ピカソ自身がゲルニカを描く様子とそのときの世界の情勢を描いている。
本書は2001年の同時多発テロ直後の現代と、1937年のゲルニカ爆撃時のピカソとその周囲の人々を交互に描いている。1937年の場面ではパリ博覧会のための絵画を依頼されたピカソが、描く絵画の題材に悩む様子からゲルニカができるまで、そしてゲルニカがアメリカに渡るまでを描いており、現代の場面では同時多発テロからアメリカのイラク侵攻を描いている。
ゲルニカがゲルニカという町で起きた惨劇の様子を描いているということは知っていたが、その惨劇がどのような状況のもとで起こったのかは本書を読むまで漠然としか知らなかった。本書によって、ヒトラー、ムッソリーニ、フランコの独裁政治という歴史とあわせてゲルニカを理解する事ができた。
また、ゲルニカという絵画が公開当初から大きな物議を引き起こし、混乱する世界状況の中で秘密裏にアメリカに渡ったというのも今回始めて知った事実である。
1937年を場面としたゲルニカとピカソにまつわる物語はとても印象的だったが、現代の物語の描き方は若干安っぽい印象を受けた。必ずしも現代と絡めて物語を構成しなくてもよかったのはないだろうか。一つの有名な絵画を生み出すまでの画家の苦悩や当時の状況を描くだけでも十分魅力的な物語になるのではないかと感じた。
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「ミセス・ケネディ 私だけが知る大統領夫人の素顔」クリント・ヒル
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ケネディの暗殺といえばもはや知らないことがいないほどの大事件。そのとき隣に座っていたケネディ夫人は僕自身にとってはそれほど有名な人物ではなかったのだが、フィリピン人の英語の先生が、「私のお手本となる人」としてダイアナ妃とケネディ夫人を挙げたので興味を抱いた。
本書はケネディが1960年に大統領に就任したときから、ケネディ夫人のシークレット・サービスつまりボディガードとして働いた男性クリント・ヒルによって書かれている。クリント・ヒルはあの暗殺の瞬間夫人を守るために後ろから車に飛び乗った男性なので覚えている人もいるのではないだろうか。そんな常に身辺にいる男性から描かれたからこそ、ジャクリーン・ケネディの素顔が見えてくる。
1960年にケネディが大統領に就任した時、ケネディ夫人はまだ31歳でアメリカの歴史上もっとも若いファーストレディだったという、この事実を聞いただけで僕自身が生まれる前のできごとであるにもかかわらず当時の熱狂が想像出来る。
さて、そんな若いファーストレディだったからには、結構稚拙なこともしたのではないかと思っていたのだが、本書を読み進めてみると、ずっと芯を持った人間だったということが伝わって来る。まずそれを感じさせたのはホワイトハウスに住み始めてからホワイトハウスのなかの公開されている部屋の改修に動いた行動力である。
そしてもっとも印象的だったのは、隣で夫を暗殺された直後に、地に染まったスーツを着ているケネディ夫人に着替えを促した著者に対しての言葉である。
自立した女性がお手本にしたくなる理由がしっかり伝わってきた。本書の大部分はケネディ暗殺までの3年間を描いているが、その後のケネディ夫人の人生の選択についてももっと知りたいと思った。
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「一流の育て方 ビジネスでも勉強でもズバ抜けて活躍できる子を育てる」ムーギー・キム/ミセス・パンプキン
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
子育てに関する書籍の多くが、研究結果や著者の体験談を語っているのに対して、本書は実際にいい人生を送っていると思われる子供たちにその親の育て方をアンケートして、その回答をもとに良い育て方はこうあるべきだ、と語っている。
多くの大人になった子供たちの、自分の親の子育てに関する感想を読むと、子育ての大切さと難しさを改めて感じるが、同時に子育てのヒントとなりそうな多く考え方に出会うことができた。なかでも印象的だったのが
「人に迷惑をかけるな」より「役に立て」
である。確かに「人に迷惑をかけるな」と考えると、人に全く迷惑をかけないで生きるというのはできないので、すべての行動が消極的になってしまう。それに対して「役に立て」と考えると、迷惑をかけてもそれ以上に役に立っていれば認められるという考えが育めるのだろう。
もう一つ、頭に常においておきたいと思った考え方は
子どもは親の真似をする
である。
これは多くの親には耳の痛い話なのかもしれない。勉強しろと言いながら自分が勉強しない親や、本を読めといいながら、自分が本を読まない親など世の中にたくさんいることだろう。幸運なことに、僕自身は勉強も運動も毎日継続して行うことが好きなので、そういう姿を見せてあげたいと思った。
これまでにも子育てや教育に関する本をいくつか読んでみたが本書が一番印象的だった。子育ての中でもっとも難しそうに感じるのは、自由のなかにどれだけ的確な情報と選択肢を提供するかということ。また単純に学問や運動の能力の向上だけでなく、自ら考えそれを実行する計画力や意志の強さをどのように育むかということである。
大人になった子供たちの感想に、「もっと選択肢を見せて欲しかった」とか「もっと厳しく接して欲しかった」という含まれているという点である。大人が思っているほど子供は、優しいだけを求めているのではないということに気づく。本書で出会った考え方をしっかりと取り入れて今後も試行錯誤していきたいと思った。
「ずば抜けて活躍できる」かどうかはわからないが、本書が目指しているのは、単純に学歴などの表面的な幸せではなく、子供自身が大人になっても幸せを感じる育て方だと感じた。これから子供を育てるという人にはぜひ読んでほしいと思った一冊。
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「サラリ-マンでも勝てる!年利400%「スイングトレ-ド」術」大橋幸司
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
スイングトレードで年利400%を稼ぐ著者が、その手法を語る。
ここ数年の目標は、給料以外の収入を少しずつ増やしていくことである。そのうちの一つが株式投資を含む資産運用で、その手法の一つとして本書を手に取った。
序盤はスイングトレードを、デイトレード等と比較してどのようなメリットがあるのかを説明し、同様にテクニカル分析とファンダメンタル分析を比較してそれぞれのメリットデメリットを語っている。もちろんタイトルが示すように本書はテクニカル分析のスイングトレードを推しており、序盤は、すでにスイングトレードをメインに行っている人にとってはそれほど新しい情報はないかもしれない。
むしろ著者の手法について触れている中盤にいくつか自分の取引にも取り入れたいと思える内容があった。それは本書の中で「Uターン注文」として書かれている注文方である。すでに10年以上前に書かれた書籍なので、おそらく「Uターン注文」と同様の機能は現在多くの証券会社で取り入れているのではないだろうか。
この一冊でスイングトレードがうまくいくとは思わないが、スイングトレードを勉強している人が読む本の中の一冊として含めておいても損にはならないだろう。
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「世界を変えた100日 写真がとらえた歴史の瞬間」日経ナショナルジオグラフィク社
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
歴史を変えた瞬間の写真をその背景の説明とあわせて紹介している。「歴史を変えた100日」というからには著者が思う、写真が発明されてからの歴史の変わった瞬間ベスト100といってもいいようなものなのだが、僕の知らなかった出来事が多く含まれていたことが驚きだった。
初期の写真は、出来事をそのまま撮ったのではなく、人々に意図した印象を与えるために、遺体を並べ直したりするなど当然のようにされていたというのが印象に残った。今それをやれば教団されそうだが、考えてみればそれほど不思議ではないことなのかもしれない。
本書で取り上げられていた事件、例えば「インディアン大虐殺」や「キューバ危機」、「アルメニアの大虐殺」などは、機会があればもっと知識を深めていきたいと思った。また「真珠湾攻撃」は日本人として生きていると気付かないが、世界から見ても大きな出来事だったということは今回初めて知ることができた。確かに、日本の真珠湾攻撃が、アメリカがどちらの側につくかを決定付けたと考えれば大きな歴史の転換点だと言えるのだろう。
過去の出来事に対して新たな視点をもたらしてくるとともに、探究心を掻き立ててくれる一冊。
1890年12月29日、サウスダコタ州ウーンデッド・ニーで、ミネコンジュー他のスー族インディアンのバンドに対して、米軍の第7騎兵隊が行った民族浄化。(Wikipedia「ウンデット・ニーの虐殺」)
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「誰のためのデザイン?認知科学者のためのデザイン原論」D.A.ノーマン
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
デザインの名著。世の中のデザインのあるべき姿について認知科学者である著者が語る。
初版の発行は1988年ということですでに30年近く前の本である。それでもデザインの名著としてなんども改変を繰り返し今でもしばしば触れられる書籍なので、デザインに関わる仕事をしている僕としてはいつか読まなければならない本として常に頭の中に存在していおり、今回ようやくその重い腰をあげるに至った。
さて、本書が伝えようとしていることは端的に言うと、「人が道具の使い方を間違ったり、わからなかったりするとき、その人を責めるのではなく、その道具のデザインが適切であるかを考えてみるべきである。」ということだろう。周囲の人を見ればそんな状況に気がつくことはたくさんなるだろう。例えば僕の母はまさに道具を使いこなすのが苦手な人であるが、母1人とっても、ビデオの録画の仕方、コンビニのおにぎりの海苔の巻き方、インターネットのつなぎ方、などデザインの課題がたくさん思い浮かぶ。
本書が出てすでに30年も経過しているにもかかわらず、世の中には今でもたくさんの人が、道具を使いこなせない時に、それを自らの落ち度とみなす人が多いのが残念である。もしそのように、道具を使いこなせない時、自分を責めて終わるのではなく、デザインの改善策を考える文化が根付いていたら、世の中はもっとよくなるのに、と思うのだ。
それでも、著者が30年前に考えたことのいくつかが、現在、スマートフォンなどの形で実現していることが嬉しい。世界は悲しいほどゆっくりだが、それでも確実に進歩しているのである。
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「傍若無人なアメリカ経済 アメリカの中央銀行・FRBの正体」中島精成
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
経済にあまり詳しいわけではないが、やはり株価の動きや為替の動きを毎日眺めるうちに、もう少し深く知りたいと思い本書を手に取った。
リーマンショック、バブルの崩壊、プラザ合意、変動相場制、住専ん問題、山一証券など、それぞれの出来事やそれぞれの言葉の意味はなんとなく理解しているつもりでいたが、本書は、それらを大きな流れの中で説明しているため、経済に疎い僕にとっても面白く飽きずに読むことができた。
例えば、アメリカの双子の赤字(貿易赤字、財政赤字が並存すること)を発端とし、プラザ合意、ルーブル合意からドイツ、日本ともに内需を拡大することを求められ、その圧力ゆえに金融引き締め政策が遅れバブルへと突き進んでいく、という流れや、アメリカのITバブルの崩壊後の金融緩和がサブプライムローン問題、リーマンショックへと進んで行く流れである。
実際に著者が言いたかったのはタイトルにもあるように、どれほど世界がアメリカの経済に振り回されているか、ということなのだろうが、自分にとっては今まで点としてしか理解できていなかった経済の大きな出来事が線として繋がって見えてきた点の方が印象的だった。
なかなかすべて理解できたとは言えないが、非常に読みやすく経済に詳しくない人でも興味を持って読み進めることができるのではないだろうか。同じ著者の書いた経済の本をもっと読んでみたいと思った。
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「入門クラウドファンディング スタートアップ、新規プロジェクト実現のための資金調達方法」山本純子
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
KickstarterやCampfireなど、クラウドファンディングという言葉が世に広まってすでに5年ほど経つが、僕自身クラウドファンディングによって資金を調達したことも、投資したこともない。何か大きなことをやろうと思って資金が足りないとなったときに、クラウドファンディングというものをどのように利用できるのか知りたくて今回本書にたどり着いた。
序盤は、クラウドファンディングというものがオンラインを通じてできるようになり、その資金調達の額が次第に大きくなっていく様子を、いくつかの事例を交えて説明している。すでにクラウドファンディングという手段が特殊なものではないということがわかるだろう。
面白かったのは中盤で描かれている、参加者の心理である。「なぜクラウドファンディングで資金調達に協力するのか?」。きっと世の中にはその心理がまったく理解できない人もいるのではないだろうか。もちろんクラウドファンディングには資金調達が成功した暁には「リワード」として、完成した製品や記念品などを資金提供者に送るというのは一般的なので、そのリワードを求めて資金を提供してくれる人も多いが、もう一つの要素を忘れてしまうと、そのクラウドファンディングは失敗に終わることが多いという。それは「仲間になりたい」という心理である。したがって、クラウドファンディングによって資金を調達する側は、常にプロジェクトの進行具合を報告し、参加者とのコミュニケーションを重視する必要がるのだ。
だからこそ、本書の最後を締めくくっているこの言葉が響いた。
ただでお金が手にはいる、というのは非常に便利に聞こえるが、そのために費やさなければいけない誠意、態度などは、中途半端な覚悟でできることではないのだろう。
【楽天ブックス】「入門クラウドファンディング スタートアップ、新規プロジェクト実現のための資金調達方法」」
「デザインのデザイン」原研哉
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
日本デザインセンター代表の著者がデザインについて語る。
個人的には第2章の「リ・デザイン」が面白かった。著者は、2000年に身近なもののデザインを考え直す「リデザイン」というプロジェクトを主催し、日本のクリエイターに日常にあるものの再デザインを依頼したのだという。そのデザインの結果として上がってきたものが紹介されているが、もっとも印象に残ったのは、丸ではなく四角くしたトイレットペーパーの芯である。四角いことでトイレットペーペーを使う際に引っかかりができて使う量が少なくなるというエコ効果があるうえに、トイレットペーパーが巻かれても四角さは維持されるから収納しやすいという意図である。このような日常品のリデザインがほかにも幾つか紹介されている。
後半には著者が関わったいくつかのプロジェクトが紹介されている。田中一光から引き継いだ無印良品のプロジェクトはそのコンセプトの成り立ちから現在の問題点までとても興味深い。コンセプトがしっかりしているからこそ西友のコーポレートブランドが世界的なブランドにまで成長したのだろう。
2003年という今から15年も前に書かれた本にもかかわらず、世の中のデザインという舞台に現在起こっていることを語っていることに驚いた。著者は当時からすでにデザインの本質に目を向けていたか、将来のデザインの流れが見えていたのだと感じた。
19世紀イギリス・ヴィクトリア時代を代表する評論家・美術評論家である。(Wikipedia「ジョン・ラスキン」)
ダダイズム
1910年代半ばに起こった芸術思想・芸術運動のことである。ダダイズム、あるいは単にダダとも呼ばれる。第一次世界大戦に対する抵抗やそれによってもたらされた虚無を根底に持っており、既成の秩序や常識に対する、否定、攻撃、破壊といった思想を大きな特徴とする。(Wikipedia「ダダイズム」)
ウィーン分離派
1897年にウィーンで画家グスタフ・クリムトを中心に結成された芸術家のグループ。セセッション、ゼツェッシオンともいう。(Wikipedia「ウィーン分離派)
未来派
過去の芸術の徹底破壊と、機械化によって実現された近代社会の速さを称えるもので、20世紀初頭にイタリアを中心として起こった前衛芸術運動。この運動は文学、美術、建築、音楽と広範な分野で展開されたが、1920年代からは、イタリア・ファシズムに受け入れられ[1]、戦争を「世の中を衛生的にする唯一の方法」として賛美した。(Wikipedia「未来派」)
【楽天ブックス】「デザインのデザイン」」
「デザインの次に来るもの」八重樫文
オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
イタリアでデザインをしていた著者が、グローバルな視点からこれからのデザインを語る。
前半では、「デザイン」という言葉について触れている。日本に限らず世界では「デザイン」という言葉は視覚的な「スタイリング」を指して使われることが多く、一握りの最先端の企業だけが、プロセスや戦略に「デザイン」という言葉を用いているのだという。本書はそんな「デザイン」の捉え方の違いを「大きなデザイン」「小さなデザイン」と呼んでいる。そして、これからの時代の変化に対応するために「プロセス」や「戦略」にまでデザインの考え方を適用するためにすべきことを事例を交えて語っている。
基本的に自分が今世の中に憂いている点と重なる部分が多かった。本書を読んで思ったのは、今、世の中には多くのデザイナーが存在し、その多くはスタイリングだけを考える「小さなデザイナー」であり、自分自身が「大きなデザイナー」であることを示すためには「デザイナー」という肩書きはあまり適切でないのではないかということ。本書では「クリエイティブディレクター」という言葉を例に挙げているが、肩書き自体を考え直すきっかけになった。
正直読み易い書き方がされているとは言いがたく、言いたいことも漠然としか伝わってこなかった。とはいえ、いくつかのことを考え直すきっかけにはなったがあまり人に勧められる本ではない。
【楽天ブックス】「デザインの次に来るもの」」
「日本のデザイン 美意識がつくる未来」原研哉
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本らしいこれからのデザインについて著者が見解を語っている。
「繊細」「丁寧」「緻密」「簡潔」という日本独自の価値観と、ミニマリズムという世の中の流れを重ね合わせて考えている点が興味深い。
そして、持論を語るだけでなく、多くのデザイン事例を引き合いにだしており、どれもすぐれたデザイナーのものの見方を知ることができるだろう。デザイナーとして長く生きた著者だからこそ、かっこいいデザインではなく、世の中をよくするデザインに目を向けている点が、自分の考えと重なる部分があり興味深く読むことができた。
印象的だったのは、いいデザインは万国共通ではなく、その場所や文化を生かしたものであるという点である。言って見ればあたりまえなのかもしれないが、日本にいながらアメリカやヨーロッパのデザインを何も考えずに真似してしまうのは、ついやってしまうことである。
【楽天ブックス】「日本のデザイン 美意識がつくる未来」」
「氣の威力」藤平光一
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
長く続けられる新しい趣味をと思って合気道を始めることにした。本書は入会の際にいただいたものである。
「氣」とは、本当に存在するものなのだろうか。漫画などではよく出てくる言葉ではありながらも、それを実感することなく今まで生きてきた。ということは「氣」とは誰かの作り出した幻想なのか。それにしても誰かの作り出した幻想であれば、今も昔も「氣」という言葉で語られているのは出来過ぎな氣がする。そんな「氣」についてまさに本書は語ってくれる。
前半は、そんな「氣」についての説明と、「氣」をうまく使うことで成功した人や、「氣」にまつわるエピソードを紹介している。王貞治や、西武ライオンズの黄金時代も登場するから面白い。
そして、後半は著者自身が、病気がちな幼少期から強い人間へと変わっていく様子を語っている。ただ単に一人の物語とみても、戦時中に生きた著者のさまざまなエピソードは面白い。
残念ながら、本書を読んでも結局「氣」の使い方はわからないだろうが、「氣」というのもの存在を信じ、それをうまく使うことが人生にどれほど役立つかは伝わってくるだろう。
毎日の歩き方や姿勢や気持ちの持ち方を変えてくれる一冊。
【楽天ブックス】「氣の威力」」