「嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか」鈴木忠平

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
2004年から2011年まで中日ドラゴンズの監督を務め4度のリーグ優勝と1度53年ぶりの日本一に導いた落合博満を、当時のスポーツ新聞の担当記者が語る。

全12章のそれぞれの章で、著者である担当記者から見た落合と、落合が監督になったことによって変化を余儀なくされた選手目線で描かれている。

2000年以降プロ野球を見る機会がほとんどなかったため、落合といえば中日の主砲という印象が強い。しかし、本書を読むと非常に観察眼の優れた人間で、その能力によって常識や周囲の意見にブレることなく、その結果打者としても監督としても成功したのだとわかる。

それぞれの章の選手目線の物語はどれも面白い。落合の意見から新たな気づきを得てさらに優れた選手になる者もいれば、生き残りをかけて投げ方や打ち方をを大きく変える者もいる。落合自身は打者なので打者に与える影響が大きいようだ。打者目線から描いた福留孝介、和田一浩の章が面白かった。

この世界に好きとか嫌いを持ち込んだら、損するだけだよ

福留孝介のこの言葉には真のプロフェッショナルを感じる。

それはひとつのスイングを構成する一から十までの手順、すべてを繋げていくような作業だった。落合の言葉を耳にしていると、あの不思議なスイング動作の一つ一つに根拠があることがわかった。

和田一浩の気づきからは、どんな技術も終わりがなく、その道を突き詰めることの面白さを思い出させてくれる。

そんほかにも、日本シリーズでパーフェクト直前でピッチャーを変えたエピソードや、ヤクルトからの移籍後に怪我によって本来の力を発揮できなくなった川崎憲次郎を開幕投手にした際のやりとりなど、スポーツ好きなら間違いなく楽しめるであろう内容が溢れている。

報道が与える印象からは、どちらかというと冷徹な監督という印象があるが、本書を読むと、思っていた以上に感情に左右されて決断してきたことも伝わってくる。そして、改めて、先入観にとらわれず観察することの重要性を再認識させられた。

中日ファンでなくても、野球ファンでなくても、スポーツが好きでなくても、間違いなく気づきを得られるであろう一冊。

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「GIFTED」小野伸二

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
先日引退したサッカー選手、小野伸二が自らの人生について振り返る。

8歳でサッカーチームに入った時から、44歳で引退するまでを振り返っている。18歳でワールドカップに出場した時の話、清水エスパルスと浦和レッズで迷って最終的に浦和レッズを選択した話、フェイエノールトでの出来事など、様々な出来事を順を追って語っている。

まず驚いたのは10人兄弟の5男だということ。大谷翔平の例についても思うことだが、周囲が管理しすぎるより、放っておく方が自ら考えて毎日努力する天才が生まれやすいのかもしれない。

それぞれの章の間に小野伸二と関連深い人のインタビューが挟み込まれている。元日本代表監督の岡田武史氏、妻である小野千恵子氏、浦和レッズなどで同僚だった平川忠亮氏などである。身近な人間から見た等身大の小野伸二が見えてくる。サッカー選手という負けず嫌いな存在の割に、人間関係ではかなり優しい人間であることが伝わってきた。

また、長年小野伸二の代理人を務めた秋山氏のインタビューの次のコメントが印象的だった。

僕が難しいな、と思ったのは、「戦術が雑なチームほど伸二を欲しがる」という点です。理由は簡単で、伸二がいればチームが成立してしまうから。

チームスポーツであるサッカーが、最近より戦術が発展してきて、選手を実現するパーツ化していくなかで、小野のような幅広い技術を持つ人間がチームにフィットしづらくなっているのを感じた。この辺はサッカーに限らず、会社などの組織においても同じことが言えるだろう。

組織、個人、子育てなど、いろいろ考えさせられた。

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「運動脳」アンデュ・ハンセン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
身体を動かすことによる脳への好影響を語る。

運動が脳に与える効果を、さまざまな科学的論拠や実話とともに説明している。すでにタイトルから明らかなので、簡単に結論を言ってしまうと、薬を飲むよりも運動した方が脳には良いということである。具体的に本書で語っているのは、記憶力向上うつを防ぐモチベーションアップ学力向上などである。

少し前に読んだ「脳を鍛えるには運動しかない」と、言っていることは大部分同じではある。すでに体験的にわかっている人にとってどれほど新しい情報かというと疑問だが、「脳を鍛えるには運動しかない」では、ジョギングなどの単純な運動よりも、ダンスや格闘技などの適度に複雑さを伴う運動の方が良いとしていた。しかし、本書では徹底的にジョギングを勧めている。

週7回(ジョギング4回、スカッシュ2回、ダンス1回)の運動をする僕にとって、本書を読んで何か学びがあったかというと、ジョギングした直後に勉強をしたほうが記憶への定着の効果が高いらしい。つまり、現在は朝勉強して、夜ジョギングしている部分のルーティンはさらに最適化でるということである。

上にも語ったように、内容としては「脳を鍛えるには運動しかない」とあまり大差ない。しかし、こういう本は繰り返し読んですでにある運動に対する意識を強める必要があるのだろう。改めて、家族にも運動習慣を強く勧めたくなった

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「風間八宏の戦術バイブル サッカーを「フォーメーションで語るな」」風間八宏

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
川崎フロンターレや名古屋グランパスを監督として率いた著者が、サッカーの戦術について語る。

サッカーについてもっと深く理解したいと思っている中で、著者風間八宏氏のボールを止めることの重要性に出会い、著者の考え方に興味を持った。

序盤ではチームとしてセンターバックを攻撃することの重要性について語っている。そして次の4つの攻撃方法をそれぞれ例を交えて説明している。

  • 裏へ飛び出す
  • センターバックの背中側に立つ
  • センターバックに向かって突っかけ、突然方向を変える
  • 動きすぎない、それでいて背中をとり続ける

フォワードの動きを考えた時に、ボールをもらう動きの重要性を強調しがちだが、無駄に動かないことの重要性を、メッシなどの世界的有名な選手の動きと共に説明しているので説得力があってわかりやすい。

中盤以降は実際の選手の動きや、著者自身の監督経験から選手の性格や改善点などを語る。そのなかで大久保嘉人や小林悠の選手としての性格や進歩についても語っている、実際に成績が伸びていることを知っているからこそその裏のエピソードが面白い

最終章では日本サッカーの育成ための提言を書いている。日本のサッカーは早い段階で才能のある子供たちを一つの場所に集めすぎで、上手な人と一緒にプレーして刺激を受ける機会を大事にしつつも、それぞれのチームでチームの中心である状況を大事にすることも必要だという。実際にスペインのセビージャや昔の清水のサッカーでも似たようなことをやっていたという。この野球に例えると「将来の四番候補」をいろんなチームに分散させると方法は納得できるる部分もあり新鮮な考え方である。

サッカーの見方をまた一段階レベルアップしてくれる内容だった。

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「ユルゲン・クロップ 選手、クラブ、サポーターすべてに愛される名将の哲学」エルマー・ネーヴェリング

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ドイツのマインツ、ドルトムント、イングランドのリヴァプールを率いた名将ユルゲン・クロップについて語る。

クロップについては最近知ったのだが、モウリーニョやグアウディオラとは異なるスタイルでチームを率いながらも、結果を出し、そしてかつクラブに愛されているという点に興味を持った。

序盤はクロップが選手から監督になるまでの経緯を描いている。多くの選手が引退してから監督になるのに対して、クロップの場合は、チームから選手兼監督を打診されたにもかかわらず、選手として限界を感じていたクロップが監督専任という道を選んだという点が他の監督の経歴と大きく異なる点で印象的である。

以降は、マインツ、ボルシア・ドルトムントとそれぞれ7年の監督期間を経てチームを一定の成功と呼べる地位に引き上げるまでの様子が描かれている。7年は、監督の1つのクラブへの在籍期間としては長いという印象である。クラブチームという大きな組織を試合結果だけでなく若手の育成や経営面も含めて改善するためには、経営側も短期の成績に振り回されるのではなく、監督という人間にある程度の期間信頼して委ねることが必要なんだと感じた。

後半は、リバプールでチャンピオンズリーグ優勝を勝ち取るまでの物語である。クロップのサッカーのスタイルはゲーゲンプレスと呼ばれており、守備時に強くプレスをかける戦術で、選手には高い走力が求められるのだという。実際本書でもリバプールの監督に就任した際、過酷なプレミアムリーグの日程とその戦術ゆえに多くの選手が肉離れで離脱する様子が描かれている。

その点で、ゲーゲンプレスはまさに若手主体というチームの強みを活かした戦術とも言えるが、リーグの特徴に合わせて戦術を変えなければならない点も監督業の面白いところだろう。また、グァルディオラであればボールポゼッション、というようにチームの色だけでなく監督の色が最近際立ってきた点が面白い。日本のサッカーにもクラブの文化、サポーターの文化、監督の文化が根付きくまではまだ時間がかかるのだろう。

また、サッカーのスタイルだけでなく、長期視点で若手を時間をかけて育てるというクロップの監督のスタイルがどんなクラブに向いているか、という点について語っている点も興味深い。例えばレアル・マドリードは監督交代が頻繁に行われるのでクロップ向きではないが、「ノーマルワン」と一般人であることを主張するクロップは労働者階級にサポーターの基盤があるリヴァプールのようなチーム向きだと説明している。

監督の色、サポーターの色、サッカーのスタイルの色、など様々な要素が絡み合ってプロのチームのサッカーという文化が出来上がるということを改めて感じた。改めてサッカーについての視点を広げてもらった。

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「サッカーシステム大全」岩政大樹

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
元日本代表の岩政大樹がサッカーのシステムについて解説する。

昨今4バックや3バックなど、サッカーの議論のなかでシステムが頻繁に語られるようになったが、それぞれの長所や短所などもあわせて深く理解したくて本書に辿り着いた。

本書は基本的なシステムと共に、どのような長所と短所があるのか、また、最近流行りの可変システムなど、日本だけでなく世界のサッカーでよく見られるシステムを解説しており、まさに知りたかったことに答えてくれる内容である。

4バックでは「5人目の守備をどういれるのか」をチームとして定めなければいけません。もし5人目を下げない場合は、失点のリスクが増えるデメリットを承知の上で、逆にカウンターに出る人数を増やすなど、リスクを上回るメリットが必要になります。

もちろん、システムの長所や短所が試合中に現れるには、長所を活かした、または弱点をついた素早いプレーをチームとして実現できてこそ可能である。つまり個人としてすぐに実践できるわけではないし、少年サッカーやひょっとしたらJ2、J3レベルでもすぐに役立つ知識なのかはわからない。しかし、間違いなくサッカーを見る視点は広がるだろう。

サッカーを見るときに常に手元に持っておきたい一冊である。

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「サッカーの見方は一日で変えられる」木崎伸也

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
スポーツライターである著者がサッカーの見方を語る。

日本代表がアジアカップで惨敗したことをきっかけに、サッカーの戦術をより深く知りたくなって本書にたどり着いた。本書は著者がサッカーを見るための見方をチーム、選手、監督という3つの軸で語っている。どの見方も覚えるだけで今日から適用できるぐらい簡単なものである。いくつかその視点を挙げると次のようなものがある。

攻撃は「水」のように、守備は「氷」のように

いいチーム、悪いチームの見分け方としては次の4点、

  • ボール保持者を追い越す選手がいるか?
  • クロスに対して、ゴール前に3人以上が飛び込んでいるか?
  • 攻撃の布石として、ボールの後ろに素早く戻れているか?
  • 守備のスタートラインが決まっているか?

良い選手、悪い選手の見分け方では次の2点を覚えておきたいと思った。

  • 走っている選手の足元にパスを合わせられるか?
  • 「止める」「運ぶ」「蹴る」がひとつの動作でできるか?

僕自身サッカー経験あるのでそれなりに目は肥えているつもりでいたが、新たな視点を得ることができた。テレビではなくサッカー場でサッカーを観戦したくなった。

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「黙ってられるか」川淵三郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
Jリーグの創設し日本のサッカーのレベルを大きく向上させた著者がその考え方を語る。

先日読んだ「独裁力」に続いて引き続きもっと深く著者のリーダーシップの考え方を知りたいと思い読み始めた。

独裁力」と重なる話も多かったが、本書ではJリーグ時代のエピソードがより多く描かれている。ただのリーダーシップについてだけでなく、どのように政治家と繋がりを持ち、そのなかでJリーグを大きくするという目的の前の障害を乗り越えていったのかなどを語っている。

そんななか、興味深いのはマスコミの力を前向きに捉えている点である。必ずしもマスコミに評価されることではなく、マスコミにたたかれることすら、大きな視点ではやりたいことの達成を後押ししたというのである。改めて、何かを達成するためには、実行だけでなく周知の動きが大事なのだと感じた。

また、巻末に巨人軍オーナーの渡邊恒雄氏との対談の様子が描かれている。正直、渡邊氏については、野球のことになったときにだけ登場するえらそうな老人、という否定的な印象しかなかった。しかし、本書を読むと、渡邊恒雄氏も今ではJリーグや著者川淵三郎氏の功績を認めていて、自らの間違いを認め成長できる人なんだと感じ、渡邊恒雄氏の見方が少し変わった。

川淵三郎氏はすでに80歳を超えているという。改めて、仕事に一生を通じて全力投球することの清々しさを感じた。

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「日本のスポーツビジネスが世界に通用しない本当の理由」葦原一正

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
スポーツビジネスコンサルタントの著者が日本のスポーツビジネスを成功させるための考えを語る。

サッカーなどのスポーツを眼にする機会が多い中で、スポーツという、人間の生存に必要不可欠とはいえない分野をビジネスにするのは想像以上に難しいだろう。そこにビジネスを軌道に乗せるヒントがあるのではないかと思って手に取った。

本書ではスポーツビジネスに必要なものを次の5つに分けて解説している。

  • Governance
  • Professional
  • Arena
  • Global
  • Engagement

である。

興味深いのはGovernanceの章である。Governanceとはつまり意思決定のプロセスのことで、それを明確にすることが重要性を説いている。そして、スポーツなだけに強いチームを作ることに捉われがちだが、著者は「勝利と経営は別物」と語る。

動員数は大事な要素の1つではあるが、それがすべてではなく、もっと大事なものが存在する。

次のProfessionalの章ではプロの定義や著者が出会ってきたプロとしてのお手本のような振る舞いを挙げている。プロリーグの定義という基本的なことすら自分がわかってないことに気づかされた。

Arenaの章ではチームの専用のアリーナやスタジアムを保有することのメリットを語っている。スタジアムもそのスポーツ専用のスタジアムと、維持費の回収を考えて、他の用途にも使えるようにしたスタジアムでは、ビジネスとしてスポーツを展開する上ではいろいろ異なることがあることがわかった。スタジアムやアリーナの構造や席の配置も、何を目的に応じて考え抜かれたデザインであることを感じた。

全体的に著者はバスケットボールリーグに大きく関わってきたが、Jリーグやプロ野球など、より認知されている例を交えて解説している点がありがたい。その過程で、必ずしもJリーグのように昇降格がある開放型モデルが必ずしも良いとはいえないことも知った。開放型は年俸の高騰化を招き経営に負担を与える。つまりプロ野球のような閉鎖型モデルにもリーグ運営目線で考えるとメリットがあるのである。

普段、なにげなく見ているスポーツの裏に、多くの知らない事情が溢れていることに気づかされた。そんななか特に印象的だったのは、Jリーグの創設だけでなくBリーグにも関わった川淵三郎の言葉である。

リーダーは時に独裁者でいい。自らが率いる組織を正しく発展させるための理念を持ち、そのための手段が私利私欲によるものでなければ、独裁的に権限を発動させてもいい。

これは僕自身、スポーツに限らず、組織などを見て感じる悩みに見事に答えている。合意ばかりを重視してスピードが遅くなったり当たり障りのない決断しかできない組織は決して大きなことを成し遂げることはできない。独裁的な権限を与えることも考えてみるべきだろう。

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「スタンフォード式疲れない体」山田知生

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
スタンフォード大学のトレーナーである著者が疲れない体づくりを語る。

スタンフォード大学は学業で有名な印象があったが、本書によるとスポーツでも長年目覚ましい成績をあげているという。本書はそんなスタンフォード大学で実践されている疲れの予防法について語っており、僕自身最近マッサージやストレッチなどコンディションづくりや体のケアに対して関心が高まっており、本書にたどり着いた。

まず、自らのコンディションを知ることの重要性を説いている。脈拍を定期的に測ることに「疲れ」を具体的な数値として計測できるようになるというのである。

そして、本書でもっとも印象的だったのはIAP呼吸法である。それはIntra Abdominal Pressureの略で「腹圧呼吸」とも書いており、簡単に言うと

息を吸うときも吐くときも、お腹の中の圧力を高めてお腹周りを固くする呼吸法

である。つまり、腹式呼吸とも異なり、これによって体幹が安定し正しい姿勢になり、無駄な動きがなくなるというのである。どちらかというと腹式呼吸が理想の呼吸という印象を持っていたためIAP呼吸法の考え方は新鮮だった。

ダメージ療法として「アイス・ヒート」メソッドも紹介している。簡単にいうと怪我をして24時間までは冷やし、24時間以降は温めるという方法で、注意しなければならないのは、怪我をした翌日だろうと24時間経つまでは冷やすということである。

終盤d根は睡眠と食事の重要性について語っている。睡眠は最低でも7時間、週末も平日も同じ時間に寝ることを勧めている。食事については、他の書籍でも触れていることと特に大きな違いはなく、日本人は炭水化物を摂りすぎなので、タンパク質の割合を増やすことを意識しなければならないという。ただ、本書でも言っているように、食事は厳しくしすぎると続かないので、できる範囲で徐々に習慣づけていきたい。

呼吸法、脈拍の定期的な測定、アイス・ヒートメソッドは早速取り入れていきたいと思った。

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「最高のランニングのための科学 ケガしない走り方、歩き方」マーク・ククゼラ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
人生におけるランニングの重要性を説く著者が、長くランニングを続けるために必要なことを語る。

最近、改めて走るという行為を再確認しており、ランニング関連の書籍を読み漁るなか本書に出会った。

本書はマラソンのための本ではなく、ランニングのための本である。したがって、マラソンに役にたつことはあるが、マラソンのトレーニングに焦点を書いている本ではない。むしろ、人生において運動をすることの重要性を説いておりそのもっとも簡単な運動として、歩くこと、走ることを勧めているだけである。

なにより、昨今座ったまま仕事をすることが多くなったせいで、人間は体を動かすことが少なくなり、人間はかつてないほど老いていると主張する。言い換えるなら、平均寿命は伸びていても平均活動寿命は短くなっているのだというのである。そして、そんな平均活動時妙を伸ばすためにランニングを進めているのである。

長くランニングを続けるために、怪我の予防や回復など、さまざまな面で語っているが、なかでももっとも印象的だったのは食事についてだろう。砂糖が健康に良くない話はよく聞くはなしであるが、本書では炭水化物(精製炭水化物と呼んでいる)も糖尿病への発生につながるとして、炭水化物耐性、インスリン感受性の高い体づくりを推奨している。

本書を呼んで、長く健康な人生を楽しむためには食事を見直していかないとならないと感じた。若い時に大丈夫だったとはいえ、年齢を重ねるごとに大丈夫ではなくなっていくのである。

また、足本来の機能を活かして走ることを推奨しており、ベアフットラニンニングやミニマリストシューズに触れている。このあたりは「Born to Run」にも書かれていたことで、少しずつ考えてみたいと思った。

ランニングを中心として、運動や食事について新たな視点をもたらしてくれる一冊である

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「一流のランナーは必ずやっている!最高のランニングケア」佐藤基之

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
さまざまなストレッチや筋トレの方法を、ランニングで痛みが発生しやすい場所に応じて書いている。

僕自身も長く膝の外側の痛みに悩まされてランニングできない期間があったので、同じことを繰り返さないようにと、体のケアに関心が高まっており、そんななか本書に出会った。

なにより故障の発生しやすい場所別にストレッチや筋トレ方法を紹介している点がありがたい。早速、膝の痛みの解決策として紹介されているストレッチを取り入れたいと思った。

また、現在は特に痛みがなくても、長くマラソンを続けるとこんな痛みが発生する可能性がある、ということを知るきっかけにもなった。膝以外に痛みが出た際には改めて本書に戻ってきたいと思った。

【楽天ブックス】「一流ランナーは必ずやっている!最高のランニングケア 悩み別予防ストレッチ&トレーニング」

「1日10分も走れなかった私がフルマラソンで3時間切るためにしたこと」鈴木莉紗

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
マラソンで3時間を切るための練習メニューを説明している。

様々なマラソン練習関連の本を読んでいる中で本書に出会った。 著者の練習メニューは、距離走、ミドル走、ペース走、インターバル走の4つのポイント練習を軸としており、距離走は長くゆっくり走るLSDではなく、レースペースに対してキロ15秒から30秒遅いペースとしている。

LSDについては人によって意見が分かれるところであるが、本書ではフォームが崩れてしまうという懸念から、ゆっくり過ぎるペースで走る練習は推奨していない。 参考までにサブ3.5を狙う人向けのそれぞれのメニューは次のようになっている。

  • 距離走(20km〜30km) 5分13秒〜28秒/km 月1〜2回
  • ミドル走(15km〜20km) 5分03秒〜21秒/km 週1回
  • ペース走(5kmまたは10km) 4分20秒〜23秒/km 3週間に1回
  • インターバル走 1000m×3〜5本 4分15秒以内 2週間に1回

部分的にでも取り入れてみたいと思った。 ランニングメニューの他にも、スポーツ未経験から社会人になってからマラソンを始めた著者ならではのエピソードや、女性向けのマラソンの悩みに答えたりなど、他のマラソン系の本にはない内容も含まれている。練習メニューは早速参考にしてみたいと思った。

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「30キロ過ぎで一番速く走るマラソン サブ4・サブ3を達成する練習法」小出義雄

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
高橋尚子の指導者として有名な著者がその練習法を語る。

最近膝の調子が良く、また定期的にジョギングができるようになったので、そのジョギングの時間の密度を向上したく思い、マラソン関係の本を漁る中で本書にたどりついた。

本書は大きくサブ4向けとサブ3向けの練習メニューや考え方が書かれている。なかでも特徴的なのがすべての練習において後半にペースを上げることを重視している点である。サブ4は足づくりだけで達成できて、「心肺の強化」は必要ないとしている。練習はジョギング 、ビルドアップ、タイムトライアル、長く走るの4つの練習を繰り返し、基本的な考えは次の内容になる。

1.一週間に3日、足や心肺に負荷をかける練習日をつくる。残り4日のうち2日はジョギングで、2日は休み。
2.平日の練習時間はだいたい60分で。うち1日はポイント練習日にする。
3.土日はともにポイント練習日。うち1日は長い距離を走る。
4.3ヶ月のうち、最初の10週を通常練習、最後の3週を調整練習の期間とする。
5.通常練習の10週間は2週ごとに強度を強め、逆に調整練習の3週間は1週ごとに強度を弱める。

一方でサブ3を目標とした場合、インターバル走やペース走を含めた構成としてしており、次のような考え方で練習メニューを組むのを進めている。

1.一週間に3日、足や心肺に負荷をかける練習日をつくる。残り4日のうち3日はジョギングで、1日は休み。
2.平日でも、場合によっては練習時間が2時間ぐらいかかる日がある。
3.土日はともにポイント練習日。うち1日は長い距離を走る。
4.3ヶ月のうち、最初の10週を通常練習、最後の3週を調整練習の期間とする。
5.通常練習の10週間は2週ごとに強度を強め、逆に調整練習の3週間は1週ごとに強度を弱める。

最近いろんなところで議論が起きるLSDについては、著者はLSDという言葉は使っているが、単に長く走ることを指しており、一般的に言われるLSDのようにゆっくり走ることは意図していないようである。

具体的な練習メニューのほかに、オリンピックメダリストの有森裕子や高橋尚子とのエピソード、それ以外にも小出道場の練習生のレース完走記を紹介している点が面白い

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「BORN TO RUN 走るために生まれた ウルトラランナー vs 人類最強の“走る民族”」クリストファー・マクドゥーガル

★★★★☆ 4/5
怪我に悩まされてきた著者が、メキシコの奥地に住む走る民族タラウマラ族を探しの旅に出たことをきっかけに、改めて走ることに魅了され歴史的なレースに巻き込まれていく様子を描く。

タラウマラ族という走ることを得意としながらも人前に出ることを嫌った民族の話。人間は走ることに向いているのかそれとも向いていないのか、ランニングシューズは人間の走る能力を向上させているのかそれともダメにしているのか、など、走ることに関連した様々なテーマを取り上げて説明していく。

そして同時に著者は、カバーヨ・ブランコという名の男に出会ったことで、若くて勢いに乗っている女性ランナーや、過去の伝説的なランナーなど、様々なランナーたちと出会い、やがて一つの歴史的なレースへと巻き込まれていくのである。

序盤は話が行ったり来たりして最初は本書の焦点がどこにあるのかわかりにくく、翻訳せいもあってお世辞にも読みやすくはない。しかし、流れがつかめてくると、本書が伝えようとしている、人間の進化と走ることの深い関わり合いや、走ることの魅力に魅了されるだろう。本書を読み終えたらきっとみんな広い大地を思いっきり走りたくなるに違いない。

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「I AM ZLATAN ズラタン・イブラヒモビッチ自伝」ズラタン・イブラヒモビッチ/ダビド・ラーゲルクランツ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
スウェーデン代表のサッカー選手ズラタン・イブラヒモビッチがそのサッカー人生を語る。

アヤックス、ユベントス、インテル、バルセロナ、ミランなどの強豪チームで活躍し、母国スウェーデンでは英雄といえるほどの地位に上り詰めた著者のこれまでのサッカー人生を描いている。どちらかというと熱い選手なので、嫌いなサッカーファンも多いのではないだろうか。僕自身もどちらかというと冷静にプレーする選手に魅力を感じるほうで、試合中に熱くなりレッドカードをもらうような選手は好きではない。そんな見方もあって、今回こういうタイプの選手はどのように選手人生を歩んでいるんだろう、と興味を持った。

さて、本書ではサッカー選手として頭角を表すまでと、その後いくつかの有名サッカーチームで活躍する様子を描いている。なんといっても興味深いのは、どちらかというと著者にとっては失敗と言える移籍と言えるスペインのFCバルセロナ時代についての話である。監督グアルディオラとは著者をベンチに置いたまま使おうとしないで、しかおその理由を説明しようともしない。そんなグアルディオラに苛立ち、やがてクラブを去るという決断をするまでを著者目線で説明している。

FCバルセロナのしかもグアルディオラの時代はまさに黄金時代だったので、さぞかし選手の心を掴むのがうまい監督なんだと思っていたのだが、1選手からはここまで無能な監督として捕らえられている点が面白かった。

そのほかにもサッカー選手としてだけでなく、妻との出会いなどの人生の大きなイベントについている書いている。全体を通して読んでみると、世の中が思っているほど傲慢で独りよがりな人間ではなく、様々なプレッシャーや葛藤を力に変えて成功した人物だと言うことがわかる。

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「脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方」ジョン J. レイティ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
運動がどれだけより良い人生を送るために重要か、実験などの結果を交えながら説明する。

スポーツを日常的にしている人は感覚的にスポーツが心にも良いことはわかっているだろう。本書はそんななんとなくな良さをさまざまな研究結果を交えてわかりやすく解説している。

簡単に言うと運動は健康だけでなく、成績の向上、不安やストレスの解消、うつや加齢による認知症棟にも効果があるのだと言う。きになるのはどれぐらいの運動をするのがいいのかということだが、本書によると、心拍数が最大心拍数(220から年齢を引いた数が理論上の最大心拍数)の60%から70%を保ってを30分程度運動を行うのが良いとしている。それを週に5日というのが最低ラインということである。

どちらかというと、体育の授業などのこれまでの運動の機会にのなかで、自分は運動神経が鈍いと認識して運動を習慣化しなかった人こそ読むべきなのだろう。運動が得意不得意に関係なく、運動をするということは人生を豊かにするのである。

僕自身も現在はスカッシュや競技ダンス(社交ダンスの本気版)をできている。しかし、この先怪我や機会の喪失などでそれらのスポーツが習慣的にできなくなったときに、最低限良い人生を維持するために、本書で書いてあったことを考えて再び習慣にする運動を選びたいと思った。

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「君と漕ぐ ながとろ高校カヌー部」武田彩乃

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
家庭の都合で埼玉県の田舎に引っ越した舞奈(まいな)が、川でカヌーをしている恵梨香(えりか)に出会い、高校のカヌー部に入部することを決意することから始まるカヌーを題材とした青春物語。

カヌーを題材とした物語というのに今まで触れたことがなかったので興味を持った。僕自身スキューバダイビングやパラグライダーなどの自然を相手にしたスポーツは体験したことがあり、そこにはほかのスポーツにはない魅力を感じる。忙しくなるとなかなかできなくなるが物語としてだけでも体験できるのはありがたい。

話の流れ自体は、マラソンやボクシングなどのスポーツを題材とした、よくある高校生の青春物語と特に大きな変わりはない。つまりスポーツに出会った初心者の主人公が少しずつその世界に入れ込んでいる様子を描いている。本書の魅力は繰り返しになるがそれがカヌーだということである。

物語は、舞奈(まいな)視点と、カヌー部を創設した、2年生の希衣(きい)視点が交互に進んでいく。少しずつカヌーにのめり込んでいく舞奈(まいな)と、地元の期待を背負いながらも少しずつ思うような成績をあげられなくなってきた希衣(きい)と千帆(ちほ)の葛藤を描く。そんな希衣(きい)と千帆(ちほ)の元に、恵梨香(えりか)という大きな才能が現れたことで少しずつながとろカヌー部は動いていくのである。

まだまだ続編がありそうな流れである。大きな学びがあるわけではないが、ときどき触れたい気分がすっきりするような雰囲気の小説である。なんてったってカヌーのような自然を相手にしたスポーツをやりたくさせてくれる。

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「スティーヴン・ジェラード自伝 君はひとりじゃない」 スティーヴン・ジェラード

ジェラード

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
元イングランドの代表選手で、プレミアリーグのリバプールで1998年から2015年までの17年間中心選手として活躍したジェラードが、自身のサッカー選手としてのこれまでの出来事や思いを語る。

本書ではジェラードが、クラブチームやイングランド代表での出来事を気持ちの向くままに語っている。重要な試合での出来事の描写はサッカー好きでなければあまり楽しめないかもしれないが、ジェラードが、チーム内の若手選手や、移籍に悩む選手の相談相手になる場面は、だれにとっても学べる点があるだろう。

本書で語られるいくつかの試合の重要な場面は、どれもすぐにYouTubeで検索することができ、第三者として試合を見ていたいままでと違った楽しみ方ができる。

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「クリスティアーノ・ロナウド 生きる神話、知られざる素顔」竹澤哲

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
現在メッシと並んで世界最高の選手と言われるクリスティアーノ・ロナウドについて書いている。

偉業を成し遂げたチームの監督やサッカー選手などの話は、挑戦の連続で、どんな話も非常に刺激的で自分自身の人生のヒントとなる部分が多い。今回もそんな刺激を求めて本書を手に取った。

現在、メッシと並んで最高の選手と評価されるクリスティアーノ・ロナウドだが、一般的にはメッシは努力家、ロナウドは才能によって現在の地位に上り詰めたように受け取られているのではないだろうか。僕自身もそれに近い感覚を持っていた。しかし、本書を読むと、ロナウドも練習を怠らない努力家だとわかる。

前半はロナウドの幼少期からマンチェスター・ユナイテッドに入団するまでを描いており、家族の物語として読めるが、後半はチャンピオンズリーグやワールドカップなどの話が多く、サッカーに詳しくない人にはわかりずらいかもしれない。ロナウド自身についてだけでなく、ポルトガルという小さな国の歴史と、小さな国であるがゆえのサッカーにかける国民の思いなども教えてくれるので、2016年のポルトガルのユーロ優勝がどれほど国民が待ち望んだことだったのか知って驚くだろう。

今度はメッシの本も読んで見たいと思った。

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