「ドイツ人はなぜ、年290万円でも生活が「豊か」なのか」熊谷徹

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ドイツ在住29年の著者が、ドイツ人の質素だが幸せな生活について語る。

最近、日本をもっと良い国にするためには何をすべきなのだろう、と考えるようになり、そのヒントがあるのではないかと思い、本書にたどり着いた。

序盤はドイツ人の生活について語る。ドイツ人は年収が少ないが幸せを日本人よりも感じているという。また、質素倹約の意識が強く、世の中のサービスへの期待値もあまり高くないというのである。

決してドイツの人々の生活をすべて肯定しているわけではない。ドイツ人の生活のなかに、日本をもっと良くするためのヒントがあるだろう、という立場で語っている。

印象に残ったのは第2章のタイトルの「みんなが不便を「ちょっとだけ我慢する」社会」という言葉である。つまり、今ほど便利ではなくても人々は今の豊かな生活を送れるのではないか、ということである。具体的に挙げているのは、24時間営業の店や過剰包装である。そのほかにも、ドイツ人の休暇の取得や過ごし方などにも語っている。

確かに、僕自身も常々思っていることだが、24時間営業はなくなったとしても、人々は営業時間内に必要なものを買う習慣をつけるだけで特に問題にはならないだろう。一方で、著者が「おもてなし天国の日本」という言葉で語っているサービスの質の高さは、日本の文化として失いたくない。しかし、本書で語られるように現状が理想系ではない。日本のサービスの高さやこだわりの本質的な部分を維持した上で、サービス提供者と消費者の双方がより豊かな人生を満喫できる社会になるための最良の妥協点を探る努力は今度も必要だろう。

改めて日本の社会について考え直すきっかけとなった。

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