「少年と犬」馳星周

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第163回直木賞受賞作品。震災の爪痕が残る東北から九州まで、様々な人が多聞(たもん)という犬と出会う物語。

日本の各地で生活する人たちが、シェパートに似た犬、多聞(たもん)と出会い、生活を共にする。東北を中心に描かれる序盤は、震災後の混乱の様子が伝わってくる。また、多聞(たもん)に出会う人々も、必ずしも日本人をだけでなく、海外から日本に出稼ぎに来ている外国人の目線でも描いている点が印象的である。

そして、それぞれが、多聞(たもん)と行動をともにするうちに、多聞(たもん)が南の方向へ行きたがっていることを悟り、別れの際に南へと送り出していくのである。物語の舞台も少しずつ物語は南へ移動し、やがて、多聞(たもん)の目指していたものが明らかになる。

特に物語展開に驚きはないが、素直な優しい人間と動物の物語である。

【楽天ブックス】「少年と犬」
【amazon】「少年と犬」

「思わずクリックしたくなる バナーデザインのきほん」カトウヒカル

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
バナーデザインの考え方を様々なアイデアとともに例を交えて解説している。

バナーデザインを始めたばかりの人向けの内容ではあるが、デザイナー歴20年以上になる僕も、いくつか気づきを得ることができた。ぜひ今後デザインで迷った際に思い出したいと思ったことは

  • 意図にあった装飾やあしらいを使う
  • 縦書き
  • 車体
  • 作字

である。なかでも漢字を作字するアイデアは、日本のデザインで使える独自性を出すための有効な方法だと思った。

作者は基本的にPhotoshopでバナーを作っているようで、llustratorでバナーを使うことが多い自分とは、出来上がるバナーの傾向に違いがあることを改めて感じた。異なるツールも試してみたいと思った。

例として上がっているバナーに、デザイン的なツッコミが多々思いついたが、意図した説明をするために、良い例と悪い例を試行錯誤しながら作ってくれたことだろう。このように知識を分けてくれるデザイナーの方々には感謝しかない。

【楽天ブックス】「思わずクリックしたくなる バナーデザインのきほん」
【amazon】「思わずクリックしたくなる バナーデザインのきほん」

「くもをさがす」西加奈子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
コロナ禍で移住先のバンクーバーで乳がんが見つかり、その治療の様子を描く。

直木賞受賞作品の「サラバ!」が有名な著者が、エッセイとして自らの乳がんの治療の経緯と、バンクーバーの生活の様子を描く。

乳がんの診断から順を追って描いている。そのなかで、バンクーバー生活の中で著者が気づいた、日本との文化の違い、医療の違いなどが見えてくる。無責任なバンクーバーのスタッフたちに憤慨する一面があるかと思えば、そのほがらかなスタッフたちに勇気をもらう場面もあり、日本とバンクーバーを比較してどちらが良い悪いと単純に言えないことを改めて感じさせられる。

また、乳がんという女性特有の病気を患った人間の視点や生活も伝わってくる。抗がん剤治療や放射線治療のつらさのなかで、多くの友人たちに恵まれて乗り越えている様子が感じられる。

両胸があったところに、2本の赤い線が引かれていた。真っ直ぐ、定規で引いたような線だった。…本当に綺麗な傷跡だった。
書くことを、身体がどうしても拒むほどのいにくい瞬間があったし、書くことを、やはり身体がどうしても許してくれない美しい瞬間もあった。

病気に悩んでいる人が勇気をもらえる内容である。

【楽天ブックス】「くもをさがす」
【amazon】「くもをさがす」

「13階段」高野和明

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
犯行当時の記憶を失った死刑囚の無実を証明するために、刑務官の南郷正二(なんごうしょうじ)は出所したばかりの三上淳一(みかみじゅんいち)とともに調査を始める。

刑務官の南郷正二(なんごうしょうじ)と三上淳一(みかみじゅんいち)が調査をする。その過程で淳一(じゅんいち)の刑務所生活の原因となった2年前の傷害致死事件と、南郷(なんごう)の刑務官になる経緯など、少しずつ二人の過去が明らかになっていく。

興味深いのが南郷(なんごう)の刑務官の葛藤である。南郷(なんごう)は死刑囚の処刑を担当したことから、2人の人間を殺したのに裁かれていないと悩み続けているのである。処刑を担当する刑務官の様子も描かれるが、処刑を担当する刑務官が、自分の罪悪感から逃れるために死刑囚の過去の犯罪を知ろうとするところが興味深い。

最後はそれまで散りばめられていた伏線が回収されていくが、若干詰め込みすぎな印象もある。南郷(なんごう)を中心に、世間にあまり知られていない刑務官の職務やその葛藤に焦点をあてて、物語自体をもう少し単純にしてもよかったのかもしれない。

【楽天ブックス】「13階段」
【amazon】「13階段」

「言葉にできるは武器になる。」梅田悟司

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
電通のコピーライターである著者が、伝わる言葉の生み出し方を語る。

序盤は、内なる言葉の重要性を語っている。考えることを内なる言葉を発することとしていて、考えてなければ、伝わる言葉は生み出せないというのである。そして「伝わる」にも4つの段階があるとしている。

  • 不理解・誤解
  • 理解
  • 納得
  • 共感・共鳴

中盤からは、考えを深める手法を紹介している。書き出して考えを整理する方法やグルーピングなど一般的に広く知られている手法もあったが、中でも印象的だったのは、「T字型思考法」「真逆を考える」である。

T字型思考法とは「なぜ?」「それで?」「本当に?」を繰り返す手法で、覚えやすく、考えの解像度を上げるために有効だと感じた。

また、真逆を考えるでも真逆にも複数あるという考え方がが新鮮である。

  • 否定としての真逆
  • 意味としての真逆
  • 人称としての真逆

そのほかにも、言葉にプロセスとして5つの方法を紹介している。

  • たとえる(比喩・擬人)
  • 繰り返す(反復)
  • ギャップをつくる(対句)
  • 言いきる(断定)
  • 感じる言葉を使う(呼びかけ)(誇張・擬態)

最後は、より良い言葉を生み出すために著者が心掛けていることを説明している。

  • たった一人に伝わればいい
  • 常套句を排除する
  • 一文字でも減らす
  • きとんと書いて口にする
  • 動詞にこだわる
  • 新しい文脈をつくる
  • 似て非なる言葉を区別する

改めて自分が使っている言葉についてしっかりと考えてみたいと思った。

【楽天ブックス】「言葉にできるは武器になる」
【amazon】「言葉にできるは武器になる」

「スクラム 仕事が4倍速くなる“世界標準”のチーム戦術」ジェフ・サザーランド

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
スクラムの手法を確立した著者がスクラムの生まれた経緯やその仕組みについて語る。

序盤はFBIやCIAなど、これまでのウォーターフォールにプロジェクトの進め方がうまくいかない事例を交えながら、スクラムが誕生するまでを説明している。

第二章ではチームについて解説しており、良いチームを作るための重要なことを説明している。そんななか、改めて強く頭に留めておきたいと感じたのは次の3つである

  • 主体性
  • 機能横断的
  • 非難は無意味

今後、個人批判については、本書の次のフレーズを使いたいと思った。

プレーヤーを憎むな、ゲームを憎め

中盤からは実際の進め方を説明している。著者がデイリースタンドアップでの問いかけを次のようにしている点が印象的だった。デイリースタンドアップがただの報告会になっているなら、チームの妨げを語るのが良いだろう。

  • 1.チームがスプリントを終了するために、昨日何をしたか
  • 2.チームがスプリントを終了するために、今日何をするか
  • 3.チームの妨げになっていることは何か

また、複数の作業を同時にこなそうとするマルチタスキングを完全に否定している。

マルチタスクは失敗の元
得意だからマルチタスキングをするのではありません。注意力が散漫なため同時にあれこれやろうとするのです。他のことに手をつけようとする衝動を制御できないということです。

スクラムの中で各自が幸せであることを重要視している点も印象的だった。本書ではスプリントが終わるごとに次の4つの問いに応えることを勧めている。

  • 1.会社内での自分の役割について、一から五のスケールで表すとどう感じているか。
  • 2.同じスケールで、会社全体についてどう感じているか。
  • 3.なぜそう感じるのか
  • 4.何を一つ変えれば次のスプリントでもっと幸せだと感じられるか。

昨今はどこにいってもプロジェクトをスクラムで進めている組織ばかりだが、より効果的にスクラムを利用するためには、このやり方に至った理由を理解することが重要だと改めて感じた。

【楽天ブックス】「スクラム 仕事が4倍速くなる“世界標準”のチーム戦術」
【amazon】「スクラム 仕事が4倍速くなる“世界標準”のチーム戦術」

「うまくいく人が仕事以外でやっていること99」ステファノ・クセナキス

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
著者が人生を楽しむための考え方を語る。

著者がギリシャ人であることから、ギリシャの生活が見えてくる。そんななか結局、著者が言っていることは基本的には

  • 早起きすること
  • テレビを消すこと
  • 学び続けること
  • 持っているものに感謝すること
  • 分かち合うこと
  • コントロールできるものに集中すること
  • 本を読むこと

である。どれもよく聞く話であるが、異国の情景とともにそれを伝えてくれるので新鮮である。よく聞く話だから意味がないというのではなく、よく聞く話だからやはりこの考え方が大事で、何度も繰り返し言い聞かせる必要があるのだろう。

ミスをなくそうとするのではなく、ミスを恐れないようにする。すると、ミスをすることが少なくなった。

改めて大事なことに気づかせてくれる。

【楽天ブックス】「うまくいく人が仕事以外でやっていること99」
【amazon】「うまくいく人が仕事以外でやっていること99」

「木曜日にはココアを」青山美智子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本とオーストラリアの人々の日常を描く。

前半は東京の人々の日常や悩みを描き、後半はシドニーの人々を描いている。日常を舞台にした優しい物語である。

青山美智子さんの作品を読み続けていると、シドニーやワーキングホリデーを扱ったネタが多く、若干マンネリ気味である。もう少し間を開けて読むのがいいだろう。

【楽天ブックス】「木曜日にはココアを」
【amazon】「木曜日にはココアを」

「NO RULES: 世界一「自由」な会社、NETFLIX」リード・ヘイスティングス、エリン・メイヤー

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
現在AppleやGoogleなどのGAFAと同列に語られるNetflixのカルチャーについて語る。

本書はネットフリックスの創業者であるリード・ヘイスティングスとエリン・メイヤーが交互に語ることで進んでいく。リード・ヘイスティングスは以前の会社で会社の規則を細かく規定して行った結果、多くの優秀な人材やクリエイティブな環境が失われて行ったと感じており、その反省がネットフリックスの文化に反映されているという。

まずネットフリックスは社内の能力密度を上げることを目指している。そんな文化を築くために繰り返し出てくる言葉がが次の2つである。

フリーダム&レスポンシビリティ(自由と責任)
コンテキストによるリーダーシップ

本書では休暇、退職、情報共有、フィードバック、経費の承認などの事例を交えながら、ネットフリックスのカルチャーとそこに至った経緯を説明していく。どれも驚かされながらも、納得のいくものばかりである。そんななか、特に取り入れたいと思ったのは、フィードバックの文化である。フィードバックで意識する要素をネットフリックスでは4Aとして次のように定義している。

  • 1.相手を助けようという気持ちで Aim to Assist
  • 2.行動変化を促す Actionable
  • 3.感謝する Appreciat
  • 4.取捨選択 Accept of Discard

最後には文化の違いなども考慮して5つめの適応させる Adaptを追加している。やはりフィードバックの前に良いところを伝えたり、オブラートに包んだりすることは、相手の育ってきた文化によっては必要なのだろう。

また、イノベーションを生み出すためのイノベーションサイクルも印象的である。

  • 1.「反対意見を募る」あるいはアイデアを「周知する」
  • 2.壮大な計画は、まず試してみる
  • 3.「情報に通じたキャプテン」として賭けに出る
  • 4.成功したら祝杯をあげ、失敗したら公表する。
承認など要らない、判断するのは自分なのだ

どれもさっそくできる範囲で実践してみたいと思った。会社の文化を変えるのは難しくても、自分が行動することは今日からできるはずだと感じた。

【楽天ブックス】「NO RULES: 世界一「自由」な会社、NETFLIX」
【amazon】「NO RULES: 世界一「自由」な会社、NETFLIX」

「アメリカの高校生が学んでいるお金の教室」アンドリュー・O・スミス

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
高校生向けにお金に関わる知識を説明している。

お金の知識を持っていることが重要なのは誰もが認識しつつも、その知識を得る機会は日本にはほとんどない。本書は、貯金や投資だけでなく、就職や保険、老後資金についても語っている。

タイトルにある「アメリカの高校生が学んでいる」というのが真実かどうかは怪しいが、高校生にもわかるように優しく書いてある。とはいえ、順番に語っているので普通に前から読むとかなり退屈だろう。むしろ手元においておいて、ふと気づいたときに読み直すような使い方をすべきなのかもしれない。

むしろ付録として書いてある「絶対に覚えておきたいお金のヒント10」が印象的だった。

  • 1.シンプルに
  • 2.質素に暮らす
  • 3.借金をしない
  • 4.ひたすら貯金
  • 5.うまい話は疑う
  • 6.投資の多様化
  • 7.すべてのものには税金がかかる
  • 8.長期で考える
  • 9.自分を知る
  • 10.お金のことを真剣に考える

そのほかにも、「大学生活のヒント」、「新社会人のためのヒント」があり、どれも納得することばかりで、息子が大きくなったら読んでほしいと思った。

【楽天ブックス】「アメリカの高校生が学んでいるお金の教室」
【amazon】「アメリカの高校生が学んでいるお金の教室」

「オードリー・タンが語るデジタル民主主義」大野和基

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
台湾のデジタル担当大臣であるオードリー・タンが民主主義へのデジタルの活用法を語る。

オードリー・タンの政治に興味をもったきっかけや、これまでにプロジェクト、そして台湾の政治の動向などを語る。

印象に残ったのはクアドラティックボーティングという投票手法である。各自99ポイント持っていて1票の投票のためには1ポイント、2票の投票のためには4ポイント、3票の投票のためには9ポイント消化するシステムである。これの良いところはそのシステムの仕組み上必ず複数案に投票せざるを得ないということである。

また、ネット上で表明される意見に対して、返信機能をつけずに賛成と反対のみの意思表示にすることで、挑発などの発生を防ぐことができるというのも新鮮で、さまざまなプラットフォームに導入できる思った。

誰もが選挙などの政治の世界が遅れていて、ITを活用することでもっと改善できると感じていることだろう。それをまさに実現に動いているオードリー・タンの考え方は新鮮である。

台湾は日本よりも人口が少ないからこのようなことが可能なのだと言って、切って捨てることはできる。しかし、オードリー・タンは、東京都などの都道府県なら台湾と同じぐらいの人口なのでできるはずだとと語る。

いろんなことを考えるきっかけとなった。日本の政治にももう少し目を向けたいと感じた。

【楽天ブックス】「オードリー・タンが語るデジタル民主主義」
【amazon】「オードリー・タンが語るデジタル民主主義」

「濁り水 Fire’s Out」日明恩

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
台風で水かさが上がり、各地で警戒が強まるなか、大山雄大(おおやまたけひろ)を含む消防隊員たちの活躍を描く。

鎮火報 Fire’s Out」に始まる消防士大山雄大(おおやまたけひろ)の日常を描く物語の第4弾である。

火災ではなく台風で物語が始まる点がシリーズの過去の作品と異なるところである。そんななか、台風で増えた水かさに溺れた女性の救助が間に合わず悔やむ隊員たちのなかで雄大(たけひろ)は、友人守(まもる)と裕二(ゆうじ)の言葉から、不審な点があることに気づくのだ。

他の日明恩(たちもりめぐみ)作品と同じように、単純に善と悪に分けられない出来事のなかで、深く考えさせられる。大山雄大(おおやまたけひろ)のやる気がないような態度をとりながらも、根底には正義感がある点もいつもの流れであるがどこか憎めない。

全体的には、消防士の事情の説明が多く、物語のスピード感が損なわれてしまっている印象である。シリーズ第1弾ならともかく、すでにシリーズ4作品目なので、もう少し説明を省いて物語の展開を優先してもよかったのではないだろうか。

【楽天ブックス】「濁り水 Fire’s Out」
【amazon】「濁り水 Fire’s Out」

「優しい水」日明恩

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
石塚洋(いしづかひろし)は近所の川で不思議な水を見つけ、その水の性質を調査し実験を始める。

石塚洋(いしづかひろし)は、見つけた水を人に飲ませると、その人は大人しくなるということに気づく。そんな悪戯心からの行動がやがて、大きな事件へと繋がっていく。

世の中にはさまざまな種類の病気や細菌があることが伝わってくる。また、少しずつ広まっていく不思議な水の調査をする警察や研究者たちが、オンラインゲーム上でコミュニケーションをとっている点が面白い。

日明恩の作品といえば「鎮火報」や「それでも、警官は微笑う」が印象的であるが、本作品は今までの作品とはまったくことなり、別の人物が書いているかのようである。日明恩にとっても、新たな試みを込めた作品なのだろう。つまらないとは言わないが、これまでの日明恩のような、深さのある問いかけを期待して読み始めると、裏切られた気になるかもしれない。

【楽天ブックス】「優しい水」
【amazon】「優しい水」

「ジェフ・ベゾス 発明と急成長をくりかえすAmazonをいかに生み育てたのか」ブラッド・ストーン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
アマゾンの創業者でありCEOのジェフ・ベゾスを中心に彼の関わってきた事業や私生活を描く。

面白いのはアマゾンの物語ではなく、ジェフ・ベゾスの本であるということだ。そして、事業やサービスをベースにそこで起こった出来事を描いている点が興味深い、それゆえに、ジェフベゾスとトランプ大統領とのやりとりや、ジェフ・ベゾスが所有する他の会社、ワシントンポストやブルーオリジンについても知ることができた。

もちろんアマゾンの事業の過程やそこで起きる困難についても同じように興味深く読むことができた。アマゾン内広告、マーケットプレイスの話からは、アマゾンも常にフェイスブック、グーグルの影響を受けながら事業を展開していることが伝わってきたし、また中国やインドなど国によって文化が異なるため、それぞれマーケットを広げるためには特有の難しさがあることが改めて伝わってきた。

個人的にはブルーオリジンとスペースXの話が面白かった。今後もアマゾンの動向に注意していきたいと思った。

【楽天ブックス】「ジェフ・ベゾス 発明と急成長をくりかえすAmazonをいかに生み育てたのか」
【amazon】「ジェフ・ベゾス 発明と急成長をくりかえすAmazonをいかに生み育てたのか」

「絶叫」葉真中顕

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
マンションで飼い猫に食べられて身元不明となった遺体が見つかった。国分寺警察署の奥貫綾乃(おくぬきあやの)は自殺か事件かを解明していくなかで不思議な事実に気づく。

捜査する警察の側と、一方でマンションの持ち主でおそらく遺体の身元であろう鈴木陽子(すずきようこ)側を交互に描きながら、少しずつ核心へと近づいていく。そこでは、母から愛されなかった一人の女性の不幸な人生が浮かび上がっていく。

また、捜査の過程で、少しずつ綾乃(あやの)自身の過去の失敗した結婚生活も描かれている。世の中をうまく生きることができない、鈴木陽子(すずきようこ)に綾乃(あやの)は、共感に近いものを感じていくのである。

誉田哲也の「ストロベリー・ナイト」シリーズや宮部みゆきの「火車」連想させる世界観である。つまらなくもなかったが特に新鮮さも感じなかった。過去の名作をうまく寄せ集めて書き上げたという印象である。もう少し綾乃(あやの)の生き方を深く描いて人間味を出したほうが良かったのかもしれない。

【楽天ブックス】「絶叫」
【amazon】「絶叫」

「フェイスブックの失墜」シーラ・フレンケル/セシリア・カン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
マーク・ザッカーバーグとシェリル・サンドバーグを中心に困難の時代のフェイスブックを描いている。

これまであった多くのフェイスブックの起業を描いた成功物語とは異なり、タイトルにあるように企業として大きくなった上の困難の時代を描いている。

序盤はマーク・ザッカーバーグとシェリル・サンドバーグの出会いやシェリル・サンドバーグのそれまでの経歴を描いる。シェリル・サンドバーグ個人がフェイスブック参加後に向き合ってきたフェイスブックの男尊女卑文化や縄張り争いについても触れている。広告部門にリソースを割けないことに苛立つサンドバーグの立場も容易に想像できる。マーケット部門とエンジニア部門が敵対する感じも容易に理解できる。

後半は、フェイスブックが通ってきた多くの歴史的な出来事と、それに対するフェイスブックの対応、主にザッカーバーグとサンドバーグの振る舞いを中心に描いている。その経緯やフェイスブック内部の議論や不和を知る中で改めて大企業の社会的責任の大きさを再認識させられる。

人と人をつなげることをミッションに掲げながら、人がつながることで起こる悲劇に会社としてどのような対応をすべきなのだろう。他者を貶めるヘイトスピーチやフェイクニュースなど、間違った情報だからといって削除できないのは納得できる。しかし、それでもその結果大きなマイナスの動きになってしまう要因は、人と人との繋がりを容易にしているフェイスブックにあり、企業としてどのように対応すべきなのだろうか。自分が彼らの立場だったらどんな答えを出しただろうと考えさせられた。

全体的に、マーク・ザッカーバーグとシェリル・サンドバーグの苦悩ばかりが見えてくる内容だった。また、並行して、多くの大きな事件を知ることができた。たとえば、トランプ大統領の大統領選の裏にあったフェイスブックの重要性は噂程度にしか知らなかったし、その後の国会議事堂襲撃事件や、ミャンマーのロヒンギャ族の件は本書を読んで初めて知った。やはり国内のニュースに触れているだけではわからないことが多すぎると改めて気づいた。

【楽天ブックス】「フェイスブックの失墜」
【amazon】「フェイスブックの失墜」

「経営者のためのウェブブランディングの教科書」佐野彰彦


オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
経営者向けに、ウェブブランディングを説明する。

本書ではウェブブランディングに3S6G法というプロセスを用いて取り組んでいる。

  • 1.ターゲットの心理を先読みする
  • 2.与えるべき結論を設定する
  • 3.1と2をつなぎ合わせるアイデアや演出方法を考える
  • コンセプト
  • ラインナップ
  • 特徴
  • 実例・実証
  • 温度感
  • ニュース性

どれも自分の考えと特に違和感なく重なった。タイトルの通り経営者にとってわかりにういウェブの使い道をしっかり指南している。なんといっても体系化して説明している点がわかりやすいだろう。

【楽天ブックス】「経営者のためのウェブブランディングの教科書」
【amazon】「経営者のためのウェブブランディングの教科書」

「食堂かたつむり」小川糸

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
失恋して故郷に帰った倫子(りんこ)はレストランを開くことにする。

「ツバキ文具店」の小川糸のデビュー作品である。

倫子(りんこ)失恋して声を失い、母親の元に帰る。空いている物置小屋を見て、そこを利用してレストランを開くことを決意し、少しずつその料理の腕前から人を幸せにする道を見出していく様子を描く。

そして、故郷でそこの人々や、母ともう一度向き合うことにより、いろんなものに気づいていくのである。

故郷や田舎の暖かさを感じさせる物語である。悪くはないが、最近このような物語が比較的多く、あまり新鮮さを感じなかった。

【楽天ブックス】「食堂かたつむり」
【amazon】「食堂かたつむり」

「エクストリームプログラミング」Kent Beck/Cynthia Andres

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
エクストリームプログラミング(以下XP)について説明する。

XPでは次の5つの価値を重視している。

  • コミュニケーション
  • シンプリシティ
  • フィードバック
  • 勇気
  • リスペクト

良いことを書いているような感じはするのだが、正直読みづらい。スクラムや基本的なアジャイルの考えと何が異なるのかというと、ペアプログラミングや自動テストによって品質を担保しようとしている点だろう。

正直、本書を読んだだけだとなかなか理解できた気がしないので、他の人の解釈なども聞いてみたいと思った。

【楽天ブックス】「エクストリームプログラミング」

「ローマ人の物語 終わりの始まり」塩野七生

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
紀元160年から210年頃のローマ帝国の様子を描く、ハドリアヌスの後、アントニヌス・ピウスからマルクス・アウレリウスに始まり、セヴェルスまでの時代である。

今回は「終わりの始まり」ということで、すでにローマ帝国の滅亡を知っている著者の立場から、それを予感させる動きに目を向けさせている。

マルクスの死の誤報に、皇帝を名乗って謀反を起こしたアヴィディウス・カシウスの言葉が特に印象的である。

哀れなローマ帝国よ。すでに持っている資産の保持しか頭にない者どもと、新たに資産家になることしか考えない者どもに苦しまされているのだ。哀れなマルクスよ。偉大なる徳の持ち主ではあるが、寛容な指導者という評判を欲するあまりに、貪欲な者どもが闊歩するのを許している。

指導者は常に寛容さと厳しさの間で揺れ動き、どの立場を取っても非難されることになるのだろう。

マルクス・アウレリウスにだけでなく、セヴェルスも含めて、皇帝たちの苦悩を見る中で、改めて国とは大きな組織でしかないことを認識させられる。つまり、会社やチームなどの運営のあらゆる面にも同じ問題が起こる可能性があり、彼らの苦悩の中に現代に活かせることはたくさんなるのだ。

時に指導者は、市民や後継者に理解されない政略でも、未来を考えて遂行しなければならないのである。そしてそのためには、その有効性を確信していなければならない。

どの皇帝の行動も理解できる部分があり、改めて大きな人を束ねることの難しさを感じた。

【楽天ブックス】「ローマ人の物語 終わりの始まり(上)」「ローマ人の物語 終わりの始まり(中)」「ローマ人の物語 終わりの始まり(下)」