「樹海」鈴木光司

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
富士の樹海に絡んだ6つの物語。
印象的だったのは最初の物語である。人生に絶望して樹海で命を断った男性は、死んでからも意識を失う事なく、自らが首を吊った木に憑依し、自らの肉体が月日の流れとともに腐敗し、やがて骨となる様子を見ることとなる。死んだ後の世界が実際どのようなものなのかわからないが、一カ所で何もできずに固定され、意識だけ永遠に持ち続ける以上に苦痛な状態などあるだろうか。そんな今までにない恐怖を味わえるのは鈴木光司らしく、僕が彼の作品が出るたびに読む理由でもある。
本書はそれ以外にも5つの短編が含まれており、それおれが微妙に関連している。世代を超えた不幸の連鎖や希望が感じられるのではないだろうか。
【楽天ブックス】「樹海」

「盲目的な恋と友情」辻村深月

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
東京の大学の管弦楽団に参加する学生達の物語。大学が指揮者として迎えたプロ、茂実(しげみ)とバイオリン奏者として参加していた蘭花(らんか)は恋愛関係になる。
前半は蘭花(らんか)目線で物語が進む。将来を有望視される指揮者の茂実(しげみ)と付き合い始め、茂実(しげみ)の元彼女や、周囲の女性との関係に嫉妬する様子などとともに、同じオケの友人である留利絵(るりえ)や美波(みなみ)との人間関係を描く。美人な蘭花(らんか)の学生生活は少女マンガのようだが、やがて茂実(しげみ)との関係は悪化していく。
後半は蘭花(らんか)の友人である留利絵(るりえ)目線で進む。幼い頃から誰もがうらやむような美人の姉を持ち、自分自身はニキビを気にしてコンプレックスを抱えて生きる。やがて、留利絵(るりえ)は友人である蘭花(らんか)に固執していく。
個人的には前半の蘭花(らんか)の物語よりも、嫉妬やコンプレックスに苦しみながらも自分の存在意義を見いだそうとする留利絵(るりえ)目線の方が印象に残った。若くて未熟な心の動きを描くという意味では辻村深月作品らしいといえるが、いい作品の印象が強いため、少し物足りなさを感じてしまった。
【楽天ブックス】「盲目的な恋と友情」

「世界で一番いのちの短い国」山本敏晴

オススメ度 ★★★☆☆ 4/5
アフリカのシエラレオネで、国境なき医師団の一員として働く著者がその日々の生活の様子を語る。
シエラレオネとはどんな国なのか。日本人にとっては、エジプトと南アフリカ以外のアフリカの国はどこも貧しいというイメージで同じなのかもしれない。しかし、本書によると、そのタイトルにもあるように、平均寿命最短、乳児死亡率最悪、妊産婦死亡率最悪など世界一悪い医療統計記録を多数保持しているという。
そんな貧しい国で、毎日人々を救っていると聞くと、ものすごくかっこいい話のようにも聞こえるが、本書で描かれる著者の日常の様子は本当に命がけである。HIV感染者や多くの伝染病が蔓延しているにも関わらず、手を洗うための水さえ手に入れることが難しいのである。
中途半端な気持ちで、「いつか発展途上国で医者として活躍したい」などと思っている人は、実際に行動を起こす前に本書を読んで観た方がいいかもしれない。
【楽天ブックス】「世界で一番いのちの短い国」

「国をつくるという仕事」西水美恵子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
元世界銀行副総裁である著者が貧困と戦った日々を語る。
僕らは貧困という言葉を聞いたときどのようなイメージを持つだろうか。もちろん貧困がなくなるといいと思うし、ただお金を分け与えるだけではそれは解決しない事も分かっているし、世界から貧困を無くすためには多くの超えなければならない生涯があることも知っているだろう。しかし、僕らが知っているのはそれだけである。多くの人が貧困がなくなればいいとは思いながらも自分の人生に大きな影響を与えるほどの行動はできない。または行動力のある人でも実際に現地に行って数年の支援活動に参加する程度なのであろう。
本書の西水美恵子はそのどちらでもない、その立場多くの国の政策に影響を与える権力者達と貧困解決の方法を探り、時には彼らの態度を叱咤し、大きなレベルで貧困を解決しようとする世界を走り回る一方で、常に現地の人たちと交流しその実情を知ろう努力するのである。
そんな彼女が常に立ち返る思い出がある。

カイロ郊外の路地で、ひとりの幼女に出会った。ナディアという名のその子を、看護に疲れきった母親から抱きとったとたん羽毛のような軽さにどきっとした。ナディアは、私に抱かれたまま、静かに息をひきとった…。誰の神様でもいいから、ぶん殴りたかった。天を仰いで、まわりを見回した途端、ナディアを殺した化け物を見た。きらびやかな都会がそこにある。最先端をいく技術と、優秀な才能と、膨大な富が溢れる都会がある。
自然にナディアが仕事の尺度になった。何をしてもナディアに問うのが習慣になった。「生きていたら喜んでくれるかしら。あなたを幸せにできるかしら…」

本書のなかに登場する多くの権力者たちは、西水美恵子の視点によって、また報道などで見聞きするのとは違った印象を与えてくれる。真実には多方面の視点から物事を見つめる事によってのみ近づく事ができる、ということは改めて感じる。
世界をよくするために何ができるか。本書では、そんな理想を、理想として終わらせない生き方が見えてくる。きっと何か行動を起こしたくなるだろう。
【楽天ブックス】「国をつくるという仕事」

「日本でいちばん大切にしたい会社」坂本光司

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
日本の起業で、著者が世の中に必要と思う企業を取り上げる。
著者は多くの企業は被害使者意識に凝り固まっていると言う。そんな企業は5つの言い訳「景気や政策が悪い」「業種・業態が悪い」「規模が小さい」「ロケーションが悪い」「大企業・大型店が悪い」を繰り返して、変わろうとしないのだそうだ。それに対して、いい企業があるべき次のように表現する。

「会社経営」は次の5人に対する「使命と責任を果たすための活動」
1.社員とその家族を幸せにする
2.外注先・下請企業の社員を幸せにする
3.顧客を幸せにする
4.地域社会を幸せにし、活性化させる
5.自然に生まれる株主の幸せ

顧客が3番目に来ている点に多くの人は驚くかもしれない。しかし、今世の中の多くの会社が「経営者」や「顧客」を一番上に持ってきているために、人々の幸せを損なっているように見える。社員が仕合せになることで、顧客や地域にその幸せを共有しようとするのが本来のあるべき流れなのだろう。
中盤以降はそんな著者の目に止まったすばらしい企業を5つ紹介する。紹介される企業は例外なく、顧客よりもまず社員を大切にする点に注目すべきだろう。読者はこんな会社で働いてみたい、と思うのではないだろうか。素敵な会社を作りたいと感じさせてくれる一冊。
【楽天ブックス】「日本でいちばん大切にしたい会社」

「ブータンの笑顔」関健作

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
著者はあるテレビ番組を見てブータンに魅せられた。それから必死で勉強し、青年海外協力隊としてブータンで3年間体育を教えることになった。そんな著者がブータンでの出来事を彼自身が撮った写真を交えて語る。
体育の授業の重要性が認識されていないブータンで、体育の楽しさを教えようとするのだが、多くの困難にぶつかる。例えば、体育着はもちろんないし、生徒によっては運動用の服を買うお金もない。また、低学年はそもそも英語を話せない。そして時間に対する感覚も日本人とは大きく異なるのだ。それでも時間をかけて著者は少しずつ、現地の言葉を学び、体育の楽しさを生徒達に伝えていく。
授業や学校の話だけでなく、著者がブータンで体験した驚きのエピソードもたくさん語っている。しかし、そんなエピソードだけでなく本書の半分ほどを占める写真も素敵である。きっと写真を見ただけでも何か感じ入るものがあるのではないだろうか。
【楽天ブックス】「ブータンの笑顔」

「ダライ・ラマ自伝」ダライ・ラマ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
5歳のときにダライ・ラマとして即位しその後中国の侵略によってインドに亡命しながらも祖国チベットの平和のために尽くすダライ・ラマ14世がこれまでの生涯を語る。
インドに亡命してから、多くの国の著名人達と出会って、祖国の平和のために尽くすダライ・ラマの姿からは、僕ら日本人が普段意識しない何か大切なものの存在を感じられるのではないだろうか。本書を読もうと思ったきっかけは、チベットを扱った映画「セブン・イヤーズ・イン・チベット」のなかの、神の化身ように人々から扱われているダライ・ラマと、最近メディアで見かける人のいいおじさんのようなダライ・ラマの間の隔たりに興味を持ったからである。本書を読んでその隔たりがすべて埋まったわけではないが、ダライ・ラマが仏教やチベットの伝統を変えてまでそこくに尽くそうとした結果なのだろう。僕らは、仏教に限らず、宗教における地位の高い人の人柄を想像するとき、考え方の偏った人間を想像してしまうが、少なくともダライ・ラマ14世に関しては、新しい考え方を偏見なく受け入れようという姿勢を持っているように見える。
また本書では繰り返し、中国のチベットに対する行いの非道な行いについて触れられている。近隣の国で起こったことにも関わらず、あまり自分が知らなかった事にも驚かされた。
そして、ダライ・ラマのこんな言葉に未来への希望を感じた。

わたしは、消費そのものを目的とする消費者優先主義が、われわれ人間は地球の資源を保護しなくてはならないという正しい判断に道を譲りつつあることに勇気づけられるのだ。これは非常に大切なことである。

あまりページを先へ先へとめくりたくなるような文章ではなく、多少読み進めるのに根気がいるが、ダライ・ラマという人間を知るのには大いに役立つだろう。
【楽天ブックス】「ダライ・ラマ自伝」

「あなたの中のリーダーへ」西水美恵子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
世界銀行副総裁として途上国の貧困と闘う著者が、これまでの経験を語る。
著者の人生を変えた瞬間を語った冒頭の章がもっとも印象的である。パキスタンの離村にホームステイに行った時の経験だそうだ。

「くる日もくる日も、同じことの繰り返し。気が狂ってしまうかと思う時さえある。

これは人間が営む生活ではない。動物のように、ただ体を動かしているだけ……

夢はただひとつ。

子供達が教育を受けて、こんな生活を繰り返さないように。けれど、それさえかなわない。

自分が病気になったら皆飢え死にする。

それが恐ろしい……」



あのとき、本気にスイッチが入ったのだと思う。自分という洋服を、それまで裏返しに着ていたようなあの感触は、今でも体に残っている。

人の人生を変えるきっかけはいろんな世界を見る努力を続けなていないと訪れないのだと改めて思った。その他にも、日本という枠にとらわれることなく活動する著者の視点からの新鮮な言葉や経験で溢れている。また、本書では何度もブータンについて触れられており、著者自身ブータンという国に非常に魅力を感じているのが伝わってくる。

何をすべきかではなく、すべきことをどう捉えるか。この違いが、組織を動かし、社会を変え、人の命さえをも救う……

自分の使命をしっかり意識してそれに向かって生きる姿が羨ましい。引き続き著者西水美恵子氏の他の本も読んでみたいと思った。

読みたくなった本

・「日本でいちばん大切にしたい会社」

【楽天ブックス】「あなたの中のリーダーへ」

「強いチームはオフィスを捨てる」ジェイソン・フリード/デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
インターネット上に様々なツールが出そろった今、僕らが働いているオフィスは本当に必要だろうか。確かに、実際に顔を合わせた方がインターネットを利用してチャットやビデオ会議をするよりもいいことはあるだろう、しかしそのメリットは、毎日満員電車に揺られて同じ場所に来るという労力に見合うものだろうか。また、僕らは同じ場所で働くことのデメリットをしっかり認識しているだろうか。リモートワークを実現するアメリカの企業、37シグナルズがその働き方を語る。
リモートワークの良さを語るだけではなく、現状のオフィスで働くことのデメリットを多く挙げている点が面白い。確かに、僕らは集中して仕事をしたいとき、平日のオフィスで仕事をしたりなんかしない。わざと人のいなくなった残業時間や休日を選んだりしているのが実情だ。なぜならオフィスではいろんな人が重要だろうと重要でなかろうと話しかけてくるため、長い間集中して作業する事ができないのだ。
オフィスワークの支持者達は、きっと見ていないと社員が働かなくなることを恐れているのだろう。そしてそれは、リモートワークが普及しない大きな理由の一つなのだ。しかし、本書ではそれを、「そもそも監視していなければ働かない社員を雇うな」と一蹴する。オフィスでもFacebookやYoutubeを見ている人はたくさんいるのだ。本書で書かれていることは誰もが経験からうなずける事ばかり、考えれば考えるほどいまのオフィスワークがばからしく見えてくる。
リモートワークを利用して、国境をまたいだオフィスを必要としない企業を作りたいと思わせてくれる。また、本書で紹介されているインターネットツールも参考になる。今後の働き方を考えるうえで抑えておきたい。
【楽天ブックス】「強いチームはオフィスを捨てる」

「学習する組織 システム思考で未来を創造する」ピーター・M・センゲ

オススメ度 ★★★★★ 5/5
社員の誰もが学習し、組織全体としても学習して発展していくというのは企業としての理想の姿であるが、多くの企業がそれを目ざしながらもできないでいる。本書はそんな学習する組織を作るために必要な考え方や、陥りがちな問題を丁寧に解説する。
印象的に残った話はいくつかあるが、そのうちの一つが「探求と主張のバランス」である。

最も生産的な学習は、通常、主張と探求のスキルが融合された場合に起こる。別の言い方をすれば「相互探求」である。つまり、全員が自分の考えを明らかにし、公の検証の場にさらすのだ。それによって、防御的な行動に走ることなく、弱みをさらけ出せる雰囲気が生まれる。誰も自分の意見の裏にある証拠や推論を隠しだてしない、つまり誰もが綿密な検証を受けるのを避けようとせずに意見を言う状態だ。

企業はどうしても大きくなるにつれ、生産性のない会議の数が増えていく。不要な会議を減らし、必要な会議はより充実したものにするためにあるべき姿はまさに「探求と主張のバランス」なのだろう。
また、「意識の変容」という章のなかで説明されている内容も面白い。多くの人は物事を線形に捉えようとするが、実際には環状であり、世の中にある多くの問題が、物事を環状に捉えられないゆえに解決されていないのだという。本書ではその例を「コップに水を満たす」という行為で説明している。

私たちが日常的な会話で「コップに水を満たしている」と言うとき、一方の因果関係「蛇口に載せた手が、コップに入る水の流量を調節している」を意味している。しかし「コップの推移が私の手を調節している」という説明も同じように真実であろう。

その他にも組織に関わる人に知って欲しいおおくの内容で溢れている。

企業にとって利益を上げることは、人間にとっての酸素のようなものである。十分な利益がなければ脱落する」。利益を目的とする企業は、「人生の目的は息をすること」と考える人のようなものだ。こうした企業は、大切な何かを失いつつある。

とてもすべてを理解したとは言えないが、組織のなかでの行動に大きく影響を与えるであろう内容がたくさん詰まっている。ぜひ、もう一度読んでみたい。やや英語の翻訳にわかりずらい点があるのでひょっとしたら英語で読んだ方が内容の理解はしやすいかもしれない。
【楽天ブックス】「学習する組織 システム思考で未来を創造する」

「セブンイヤーズ・イン・チベット チベットの7年」ハインリヒ・ハラー

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
オーストラリア人の登山家がチベットにたどり着く。そこでの生活からチベットの魅力に取り憑かれていく。
ブラッドピット主演で映画になった「セブンイヤーズ・イン・チベット」の原作である。冒頭で著者自身も「わたしには文才がない」と述べているように、映画のように面白く読者を飽きさせないような展開や描写ではなく、むしろ著者自身の体験をひたすら単調に綴った形になっている。そのため、冒険物語を期待して本書を手に取った人にとってはやや期待はずれかもしれないが、それでも著者の体験を通じてチベットという土地の魅力は伝わってくるだろう。
本書を読んで改めて興味を持ったのが、ダライ・ラマ14世の生き方である。最近ではテレビ出演までしているのダライ・ラマは、著者がチベットを訪れた1940年代には、チベットの人はダライ・ラマを直接見ることさえしなかったのである。チベットの平和や世界の平和を守るためにダライ・ラマが伝統よりも重要なこと、として決断した結果なのだろうか。
また、ダライ・ラマ14世の誕生の話を知ると、世の中には本当に「輪廻」というものはあるのかもしれない、と感じる。チベットや、ダライ・ラマについてもっと知りたいと思わせてくれる一冊である。
【楽天ブックス】「セブンイヤーズ・イン・チベット チベットの7年」

「たのしいインフォグラフィック入門」櫻田潤

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
スマートフォンが一般普及して誰もがその場でインターネットに接続でき、調べる事ができるということになった。つまりそれは情報を記憶していることは重要ではなくなってきているということ、むしろ重要なのは情報をどのように伝えるか、効果的な情報の伝達方法である。そのような理由から、今後ますます情報の効果的な伝達手段であるインフォグラフィックは注目されていくだろう。
本書はそんな情報の視覚化をピクトグラムとインフォグラフィックで分けて説明している。前半部分は特に印象的な説明はなかったが、後半になると覚えておきたい考え方がいくつか出てきた。特に12の図解タイプ(サテライト型、ベン図、蜂の巣型、ツリー型、マトリクス型、2軸マップ型、テーブル型、チャート型、プロセス型、サイクル型、ピラミッド型、ドーナツ型)は図表を作るときには常に意識できるようにしておきたい。
また終盤では実際に著者がインフォグラフィックを制作する過程が描かれており、どのような考え方を経てすぐれたインフォグラフィックが作られるのかがよくわかるだろう。本書では良いインフォグラフィックの条件として次の5つを挙げている。

1.意味のある視覚要素を用いること
2.簡潔で、親しみやすく、わかりやすいこと
3.インパクトを与え、目を惹くこと
4.内容に価値があり、資料として保存しておきたいこと
5.見た人に考えるきっかけを与えること

こちらもぜひ覚えておきたい。さらに、グラフィックツールを使わずにインフォグラフィックを制作できるサイトなども紹介している。1つの制作手法として覚えておきたい。

参考サイト
Piktochart
easel.ly

【楽天ブックス】「たのしいインフォグラフィック入門」

「ランウェイ・ビート 」maha

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
青々山学園高校に転校してきた背の低い生徒ビート。おしゃれが好きでかっこいい服を作ってクラス全体を巻き込んでいく。
高校を舞台とした青春物語、コンピューターオタクだったワンダやモデルをしていたミキなど、次々とビートの力に巻き込まれていくなか、やがて一つのブランドを立ち上げようとする。ちなみに、著者はmahaとなっているが、美術を題材とした小説でも有名な原田マハである。しかし、残念ながらほかの原田マハ作品にあるように、美術に関する深い知識のようなものを感じさせてくれる内容ではない。
一気読みしてすっきりしたい人向けの物語。
【楽天ブックス】「ランウェイ・ビート 」

「小さなチーム、大きな仕事完全版 37シグナルズ成功の法則」ジェイソン・フリード/デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン

「小さなチーム、大きな仕事完全版 37シグナルズ成功の法則」ジェイソン・フリード/デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
小さなチームで大きな成果を上げる方法や利点について解説する。
インターネットが普及し、便利なインターネットツールが広まった今、それを利用すればもっと効率よく働けるはずなのに、多くの企業は同じ場所に集まって朝から晩まで仕事をすることを続けている。会社にいる時間が長いことが、会社に貢献している、とみなされる。そんな考え方に違和感を感じている人にとっては本書はぴったりだろう。
いくつか今の職場の人に聞かせたい内容もあったので印象的な言葉をあげると、

仕事依存症はバカげている
無用な人は雇わない
履歴書はばかばかしい
従業員はガキではない

などである。
僕自身も先日面接に行った企業には履歴書を持っていってしまったので、意味のない習慣にとらわれてしまっているのかもしれない。また、人数が多いほど優良企業という考えに縛られて、むやみに人を増やし、人がいるからしなくてもいい仕事を増やす、という悪循環も非常に思い当たることが多い。人を増やすより減らす方が大変だから、ベストな人数を常に意識すべき、と本書は語る。
いつかそんな会社を作ってみたい、と思わせてくれる。
【楽天ブックス】「小さなチーム、大きな仕事完全版 37シグナルズ成功の法則」

「あるロマ家族の遍歴 生まれながらのさすらい人」ミショ・ニコリッチ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ロマとして生きるミショ・ニコリッチがその人生を語る。
人生のあり方について考えるうちに、イタリア旅行に行った際のジプリーの姿が蘇った。通常の文明社会からは距離をとりながら、移動を繰り返し生活するジプシーの生き方とはどんなものなのだろうか。何に価値を見いだしてそのような生き方をするのだろうか、と。
本書はそんなジプシーとして生きる一人の男性によって書かれたものである。父親と母親との出会いから、著者自身が大人になって多くの人間と関係を築き、また戦争という大きな動きのなかで生き抜いていく様子が描かれている。ジプシーに限らずこの時代は誰にとっても困難なものだっただろうから、ジプシーとそれ以外の人の生活の違い、というのは見えにくい。むしろ、家に住んだり、車に乗ったりと、予想以上に通常の生活をしていることに驚かされた。
本書で描かれる程通常の生活を彼らがするのであれば、疑問はむしろ、なぜ彼らは差別を受けるのだろうか、ということであるが、本書ではそのようなことには触れられていない。それでも動乱の時代を生きた一人の人間の物語としては楽しめるだろう。
【楽天ブックス】「あるロマ家族の遍歴 生まれながらのさすらい人」

「傷ついた日本人へ」ダライ・ラマ14世

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
東日本大震災によって傷ついた日本人に向けて、ダライ・ラマが語る。
ダライ・ラマの考え方はほかのダライ・ラマ書籍と同じように、心の持ち方が人を幸せにする、ということを語っているのだと思うが、難しい言葉が多く、ややとっつきにくい印象を受けた。「般若心境」や「因果応報」、「ビッグバン」などにも話がおよび、残念ながらストレートなメッセージが伝わってこなかった。先日読んだ「心の育て方」のほうがはるかに分かりやすかった。
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「シメオネ超効果 リーダーの言葉で今あるチームは強くなる」ディエゴ・シメオネ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
それまでFCバルセロナやレアル・マドリートの影に甘んじていたアトレティコマドリートを強豪チームに作り替えたシメオネ。その考え方を語る。
最近サッカーから離れていために、あまり意識していなかったのだが、確かに最近のアトレティコ・マドリートの飛躍は驚くほどである。以前は数あるチームのなかの一つに過ぎなかったのが、昨年にはヨーロッパチャンピオンズリーグの決勝まで進んでいたのである。残念ながら選手としてのシメオネは、アルゼンチンの代表ではありながらも、特に僕にとって目立った印象を残すほどではなかったが、このような現在の成功を考えると、見えない部分でチームの重要な役割を担っていたのだろう。
本書ではシメオネがチームを導く際に、常に意識している信念などについて語る。その内容の多くは、ほかの成功物語やリーダーシップについて語られた本と共通する部分もあるが、ところどころでシメオネという人間の個性が見えてくる。

発言と行動が違ったら決して許してもらえない
強制されたことは必ず悪い結果に繋がる
名選手とは、長所を伸ばし短所を隠せる者
ボールではなくサッカーをプレーする選手を支持する

本書だけでなく、多国籍のチームを一つにまとめあげる監督の物語は、人を率いる立場の多くの人に読んで欲しい。
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「さようならオレンジ」岩城けい

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第29回太宰治賞受賞作品。
アフリカから日本に移り住んだサリマとその同じような境遇の外国人が、学び、働き、子供を育てながら新しい文化に溶け込もうとする様子を描く。
後半まで、物語の舞台がどこだかわからなかったが、最終的には日本なのだろうという結論に至った。というのも本書では何度もサリマや、その友人のハリネズミが英語を学んでいる様子が描かれるのである。英語を学んでいるのだからそこはアメリカなどの英語圏なのだろう、と思ってしまったのだ。本書はこの点について、つまりなぜ日本語ではなく英語を学んでいるのかという点には触れていないが、僕自身がこのような境遇の人々の生活の苦しさを普段意識していない事に気付かせてくれた。
言語の問題だけでなく、サリマたちは子供を育てるために劣悪な環境で働くことになる。それでも少しずつそんな生活に適応していくのだ。最初は自分を受け入れてくれない周囲の人々に不満を抱いていたサリマが、少しずつ勉強や仕事に生き甲斐を見いだして、周囲の人々の親切や温かさにも触れていく。そんな様子は心を和ませてくれるだろう。
今まで以上に異文化に目を向けようと思わせる温かい一冊。
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「日本人のここがカッコイイ!」加藤恭子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
日本に滞在する36人の外国人に日本が日本について語る。
日本が賞賛されるようになったのはいつからだろう。本書では日本の文化や人や教育について日本に長く済む外国人が語る。日本の個性として僕らが簡単に思いつくものもあれば、考えもしなかったものまで外国人目線ゆえの驚きを与えてくれる。世界の常識を知るのにも、日本の文化を知るのにも役立つことだろう。
本書を通じて多くの外国人が語っているのが東日本大震災の後の日本人の様子である。混乱のなか暴動や略奪を起こす事もなく列を作って秩序を持って行動するところが外国の人にとっては驚きなのだという。また、日本人のおもてなしの心や物事に対するこだわりを賞賛する人も多い。
一方で、働き過ぎや、家族で過ごす時間の少なさ、妻が財布のひもを握っている点についての違和感についても語っており、生き方や家族との触れ合いかたを考え直すきっかけになるのではないだろうか。
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「IMF(国際通貨基金)使命と誤算」大田英明

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
IMFについて語る。
誰もが一度は耳にしたことがあるであろうIMFという組織。ところが実際その目的は何でどのような活動をしているかというとほとんどの人は知らないのではないだろうか。本書ではその発足の経緯と役割や実例について示している。簡単に書かれているとはされているが、僕も含めて外交や経済のある程度の知識がないとすべてを理解するのは難しいだろう。
個人的にはIMFや国際機関の役割の重要性を漠然と理解させてくれるとともに、経済的分野においてもっと知識を深めたいという良い刺激を与えてくれた。

外貨準備
中央銀行あるいは中央政府等の金融当局が外貨を保持すること。保持している外貨の量を外貨準備高(がいかじゅんびだか)という。(Wikipedia「外貨準備」
金融自由化
金融業において、金利、業務分野、金融商品、店舗などの、それまで政府によって制限されていた事柄の制限が廃止されて自由になることをいう。(Wikipedia「金融自由化」
資本自由化
国際資本取引に対する制限を緩和,撤廃することで,広義には資本の流入,流出の両面についての自由化をいうが,狭義には外国資本の流入,特に外国企業の進出を自由に認めることをいう。(コトバンク「資本自由化」
世界銀行
各国の中央政府または同政府から債務保証を受けた機関に対し融資を行う国際機関。当初は国際復興開発銀行を指したが、1960年に設立された国際開発協会とあわせて世界銀行と呼ぶ。(Wikipedia「世界銀行」

【楽天ブックス】「IMF(国際通貨基金)使命と誤算」