「スマートフォンのためのUIデザイン」池田拓司

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2013年に発行された本という事でiOS7のフラットデザインの流れは反映されてはいないがiOSアプリとAndroidアプリの基本的な違いや、アプリの様々な名称や呼び方の違いなどが網羅されている。特に新しい知識を与えてくれるわけではないが、UIについていくつかの気付きを与えてくれる。
本書だけでUIの十分な知識を得るということはないが、助けにはなるだろう。
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「ドッグテールズ」樋口明雄

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
犬を扱った5つの物語。
著者の犬に対する優しさが伝わってくる。どれも面白かったが、3番目の物語である「疾風(はやて)」と最後の「向かい風」が特に印象的だった。「疾風(はやて)」は熊の出没によって熊退治が必要になったある山村の物語。弥太郎(やたろう)と猟犬疾風(はやて)が協力して熊に立ち向かうなかで、人間と動物の信頼関係が見えてくる。また「向かい風」は災害救助犬のハンドラー、高津弥生(たかつやよい)と救助犬エマの物語。中国の震災の祭の悲劇によって心に傷を負った弥生とエマだったが、行方不明となった幼い姉妹を探すために再び動き出すのである。
本書を読むと、犬の誠実さが伝わってくる。考えてみれば人間の多くが、お金や地位や嫉妬に囲まれて生きている。しかし、動物にはそれがなくただ生存のために生きている。もししっかりとした信頼を気付く事ができれば、動物、特に人間と共存する犬ほど、その信頼できる存在はないのではないかと感じさせてくれる。

人間が犬を見る何倍も、犬は人間を見ている、ということだけは間違いありません。

今注目の著者。他の作品もすべて読んでみたいと思った。
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「本日は大安なり」辻村深月

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
大安のその日、とある結婚式場では4組のカップルが結婚式を挙げようとしていた。それぞれの式がそれぞれの問題を抱えたまま行われようとしている。
4組のなかでもっとも印象的なのは、双子の姉妹の妹である妃美佳(きみか)の結婚式である。双子として生まれ、常に姉の鞠香(まりか)と比較されて育ってきたからこそとも思える想いが詰まっている。妃美佳(きみか)は同じ顔をした鞠香(まりか)に花嫁を変わってもらって、夫が本当に2人の違いに気付くかを試そうとするのである。
その他のカップルも、いろんな事情を抱えて結婚式にこぎつけているので、そこにはいろいろなドラマが溢れている。それでも最後は人間の温かさを感じられるだろう。辻村深月の作品のなかでははかなり爽やかな物語である
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「統計学が最強の学問である」西内啓

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
現代の統計学の重要性を説く。
実際には19世紀の中程にはその重要性を認識されていたにも関わらず、それを実現するためのツールが整ったのは最近である。コンピューターやインターネットが発展したことによって、多くのデータの収集や分析が個人レベルでも可能になった今、統計学はもっとも先見性のある分野と言えるだろう。
一般的な数学教育を受けた人ならば、序盤の平均や中央値を利用してデータを解説する部分には特に新しさを感じないだろう。基本的な統計に関する考え方から入っているが、むしろ本書の興味深い点は、統計学をどうやって実際の方針の決定に使用するか、という統計学の応用のためのヒントが書かれている点だろう。
著者は言う。取得したデータの結果によって何をするかを決めないと、取得するべきデータの粒度が決まらないのだと。どんなデータもサンプル数を多くする事によって精度をあげることはできるが、その先の行動を決めなければ、どれほど高い精度のデータが必要なのかを決めることができずに、無駄に情報集めや分析の時間を消費する事になるのである。現在多くの企業がそうやって無駄にデータ分析にコストをかけているのだという。
本書で述べられているように、データ分析を行動を決めるための指針と考えると、「標準誤差」という考え方の重要性がわかってくる。残念ながら、本書に書かれているその計算式だけではその背後にある考え方を理解できなかったが、その重要性は十分に伝わってくる。
後半はかなり素人の僕には難しくなってしまったし、実際には紙と鉛筆で実際に計算しながらでないと理解できない物なのだろう。本書中で出てきた「回帰分析」「t検定」「標準誤差」などの新しい言葉はしっかり理解したいと思った。
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「自覚 隠蔽捜査5.5」今野敏

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
しがらみや上下の階級意識の強い警察組織において、合理的に物事を解決しようとする大森署署長の竜崎伸也(りゅうざきしんや)の物語。
「隠蔽捜査5.5」という副題が小数点をつけているのは、本書が短編集という意味である。同じ警察組織の中の、竜崎(りゅうざき)の周辺の人々が、日々起きる事件や問題を対処していく様子を描く。一歩判断を間違えれば大きな問題になりかねない状況を、竜崎(りゅうざき)が解決していく様子が爽快である。
本書ではシリーズ全体を通じてたびたび登場する戸高(とだか)の活躍もいくつか見られる。彼は優れた捜査官でありながらその勤務態度ゆえに問題視されているのであるが、仲間からの信頼は厚い。竜崎(りゅうざき)と戸高(とだか)の不思議な信頼関係は本シリーズの魅力の一つでもある。
このシリーズを読むといつも思う事であるが、自分自身も人間として竜崎(りゅうざき)のように、常に冷静で、平等かつ合理的に行動したいと思わせてくれる。
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「盗まれた顔」羽田圭介

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人の多い町に出て、記憶した顔と一致する顔がないかを探し続ける見当たり捜査員である、白戸(しらと)は同僚の安藤(あんどう)、谷(たに)とともに毎日犯罪者の顔を探す事を仕事とする。
テレビ番組などで聞いたことのある見当たり捜査であるが、このように小説となってその捜査を見るとその厳しさに驚くだろう。通常でも1ヶ月に1人か2人の犯罪者を見つけられる程度なのだと言う。つまり1ヶ月のうちの大部分は、ただ町に出てなんの成果も挙げられない日々なのである。
実際、本書では白戸(しらと)の同僚の谷(たに)が何ヶ月も成果を挙げられずに憔悴する様子が描かれている。また、逆に白戸(しらと)の、すでに逮捕した犯罪者の顔が忘れられずに苦しむ様子も興味深い。実際の見当たり捜査員にしかわからないであろう悩みや葛藤が描かれている点が面白い。
さて、ある日の捜査の際に、白戸(しらと)が既に死んだと思っていた男の顔を見かけてから物語は大きく動き出す。白戸(しらと)は大きな陰謀に挑んでいく事となるのである。
警察物語としては、組織内の陰謀などはもはや新しくもないが、やはり見当たり捜査員という、見ることのできない人生を見せてくれるという点で興味深い。本書を書くために多くの調査をしたと思われる著者羽田圭介(はだけいすけ)という著者にも好感が持てたので、別の作品も読んでみたいと思った。
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「光る牙」吉村龍一

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
北海道日高山脈で熊によって一人のカメラマンが犠牲となった。森林保護官を勤める樋口孝也(ひぐちたかや)は上司の山崎(やまざき)とともに熊を追う。
本書では、樋口孝也(ひぐちたかや)とその上司の山崎(やまざき)が冬眠できずに人の味を覚えたヒグマを退治するために奔走するのだが、その過程で見えてくるのはヒグマの恐ろしさだけでなく、それが利己的な人間によって生じた事であり、自然界の復讐のように描かれている点が印象的である。
さて、そんな凶暴な熊を追うなかで、樋口孝也(ひぐちたかや)は自らの不甲斐なさと向き合い、また、尊敬する上司である山崎(やまざき)に少しでも近づくために成長していく。物語の展開としてはそれほど新しくはないが、それをどう描くか、という部分がこのような物語では重要なのだろう。ただ単に動物によってパニックに陥るだけでなく、何かを読者に訴えかける物語であった欲しいものだ。
動物による人間への復讐をテーマにした物語としては「シャトゥーン ヒグマの森」や「約束の地」などが思い浮かぶ。比較して読んでみるのも面白いかもしれない。
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「衛星を使い、私に」結城充孝

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
自動車警邏隊の女性警官クロハの日々を描く短編集。
本書は「プラ・バロック」「エコイック・メモリ」に続く第3弾であるが、時間としてはそれ以前ということで、クロハがまだ未熟な時代を描いている。短編集という事で6つの物語に別れているが、どれも読み応えがあり、また根底には一つの共通した問題があり、全体として一つの物語としても捉える事ができる。
さて、このシリーズでいつも印象的なのは、著者が現代のIT技術をうまく物語に組み込む点である。本書でも撮影された画像の位置情報や、交通事故のシミュレーションが捜査に大きく影響を与えるため、新しい知識も得る事ができる。
個人的には第二編の「二つからなる銃弾」が印象的である。射撃の優れた腕を持つクロハが射撃競技に出場する様子を描く。あまり見る機会のない射撃という競技の様子を感じる事ができるだろう。
引き続き本シリーズの続編を楽しみにしたい。
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「スイッチ!「変われない」を変える方法」チップ・ハース&ダン・ハース

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
人間は正論をぶつけても動かない。なぜなら人間は「感情」で動く人間だから。そんな視点から組織や人を変えるための方法を語る。
冒頭で本書は述べている。人や組織が変われないのは、私たちのなかで「像(感情)」と『像使い(理性)」が戦っているからだと。怠け者で気まぐれな「像」と計画的な「象使い」が協力し合う事で初めて人間は変化を起こすことができるのだ。
例えば、やせたい人間に、「運動をしろ、食事を減らせ」というのは簡単だし、そんなことができればやせる事は本人にもわかっている。でも理性ではわかっていてもできないのが、「感情」を持つ人間なのである。それでは像(感情)に訴える方法とはどんなものなのだろうか。本書はそんな、像(感情)に訴えて成功した例をいくつも挙げている。どの例も興味深く、次第に像(感情)に訴える方法がわかってくるだろう。
そのうちの一つは、「1から始めなければならない」と思う場合と、「すでに途中まで達成している」と感じる場合とでは人の行動は異なるというもの。例えばすべてのスタンプ押したら特典が得られるポイントカードで、10個のうち2個すでに押してあるカードを渡された客と、1個もスタンプの押されていない8個で満杯のポイントカードを渡された客とでは、貯めなければならないスタンプの数は同じ8個でも達成する可能性は大きく異なるという。また、普段の仕事で多くのカロリーを消費していると教えられた家政婦とそうでない家政婦とではその後の体重の増減に明らかな違いがあるという。
職場の部下や子供の教育、会社のポリシーへの影響、ビジネスにおけるユーザーへの対応など、さまざまな場所に応用できそうな内容で詰まっている。
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「なぜこの店で買ってしまうのか新版 ショッピングの科学」パコ・アンダーヒル

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
さまざまな店舗において、客がどのように行動するかを分析した著者がその経験から学んだ事を語る。
例えば、人間は鏡がある場所で歩く速度を落とす、女性は男連れだと買い物時間が短くなる、など、言われてみれば納得のいくものもあれば、今まで考えてもみなかったようなことが買い物に大きく影響を与えていることもある。
試用や試着をしてから物を買おうとする女性と、試着したがらず、試着したら買わなければならないと思う男性というように、男女の違いの大きさも面白い。しかし、物を売る側にとって常に意識しなければならないのは、買い物の時間を減らすこと、買い物客の持てる荷物の量を考慮する事だろう。
本書は実店舗の話を主に扱っているが、これがインターネット上での買い物にどの程度提供されるかという点は非常に興味がある。本書は「新版」としており、インターネットについても触れているが、実店舗の分析に比べるとまだまだ内容が薄い。しかし、全体的には店舗という空間に新たな視点をもたらせてくらる一冊である。
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「ダイヤモンドより平和がほしい 子ども兵士・ムリアの告白」後藤健二

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
ダイヤモンドの産地として有名なシエラレオネ。著者はそこで少年兵士をしていた青年ムリアと出会う。
ムリアは父と母を殺され、そのまま誘拐されて少年兵として訓練され、多くの人を殺したのだという。被害者である彼は、多くの人を殺したがゆえに、多くの憎しみも向けられ、罪悪感を抱えながらも、現在多くの事を学んで国の平和に貢献使用している。
あまり馴染みのないシエラレオネという国の現状、未だ平和がほど遠い国があるということなど、改めて感じるのではないだろうか。
タイトルに惹かれて読んだのだが、思った以上に子供向けの内容で中身が薄かったのが残念である。ちなみに著者は先日シリアで犠牲になった後藤さんだということです。
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「手足のないチアリーダー」佐野有美

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
生まれつき手足のなかった著者、そんな著者が高校を卒業するまでを語る。
手足のない子供が生まれてきた時の両親の驚きや、障害を持った人の周囲で生きる人間の戸惑いが見えてくる。
印象的だったのは著者が小学校高学年だったときの話、障害にも関わらずその明るい性格から人気者になり、やがてそれが傲慢に変わってしまうという話。障害者とはいえ、友人の気持ちを考えずに行動すれば、結果として友人から孤立してしまうのである。僕らは障害者がイジメを受ける、と聞くとその障害が原因かと思うが、本書の場合は、むしろその障害が明るくクラスの人気者にして、それが結果として傲慢な態度を生み、その結果孤立したというのだから驚きである。
また、周囲の人々の温かさも本書を通じて感じることができる。障害を持った人に取っては、哀れみを受けるよりも、普通の人間として厳しく、優しく接してもらえる事が何よりも嬉しいのだということを改めて知る事が出来た。
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「成功する練習の法則 最高の成果を引き出す42のルール」ダグ・レモフ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
どんな分野でも能力を伸ばすためには、しっかりと考えた「練習」が必要である。本書はそんな効果的な練習方法について説明している。
本書で書かれているのははむしろ「練習方法」というよりも、「練習の指導方法」といった印象を受けた。具体的には次のような内容である。

批評ではなく、正しい方法を指示する。
漠然とではなく具体的に。
フィードバックをすぐに与える。
成功を計測する。

漠然とした言葉から、具体的な言葉にすることによって周囲の人間の能力が大きく変わるということは、僕らはもっと言葉や振る舞いに気をつけなければならないという事である。しかし、どれほどの人がその指導する言葉の重要性を理解しているのだろうか。「頑張れ」「気合い入れろ」などのような漠然とした指示がどれほど意味がないのかをもっと意識すればより効果的な指導ができるようになるだろう。同じようにほめる時も「よくやった」とか「がんばった」ではなく、何が良かったのかをはっきり示すべきなのだそうだ。
本書で例としてとりあげる練習が、教師の指導方法についてであることが多いので、仕事にも応用できそうな状況が多く描かれていた。本書の内容を常に意識する事によって、組織を高いパフォーマンスの集団に変えることができるかもしれない。
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「ウィキペディア・レボリューション 世界最大の百科事典はいかにして生まれたか」アンドリュー・リー

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
何かを調べるときにはすでに欠かせない存在となったウィキペディア。そんなウィキペディアの創世から、多くの問題点について語る。
ウィキペディアについて語るとき、誰もが自由に編集できるというアイデアゆえに安定して大きくなってきたと思うかもしれないが、ここまで大きくなるまでに多くの障害を乗り越えてきたのである、そしてまた、現在も多くの問題を抱えている。
僕自身はウィキペディアには何でも載せていいものと思っていたから、本書で「削除主義者」という言葉に初めて出会って驚いた。「削除主義者」とはウィキペディアには特筆性のある記事だけを掲載すべきという考えで、それに対して、ネットという媒体故に物理的制限がないのだから何でも掲載してしまえという考え方の人を「包摂(ほうせつ)主義者」というのだそうだ。確かに、本当にどうでもいい記事まで好き勝手に誰でもつくっていたらウィキペディアの百科事典としての使いやすさは損なわれてしまうかもしれない。
また、日本語版しか利用しない僕らがあまり陥る事のない、言語の問題も面白い。本書ではポテトチップスの項目を例に挙げて説明している。アメリカでは「potate chip」だがイギリスでは「crisp」というのだそうだ。名前については冒頭で「potate chipまたはcrispは…」とだきょうしたが、記事のなかで「風味」を意味する単語を「flavored」とアメリカ英語にするか「flavoured」とイギリス英語にするかでもめたあげく、結局どちらでも共通のスペルで同じ意味を持つ「seasoned」という単語で決着したという。
その他にも興味深い内容であふれている。誰もが知っているウィキペディアなだけに話題としても知っているとおおいに役に立つ。また、善意によるコンテンツの発展の難しさも思い知るだろう。
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「ぼくはお金を使わずに生きることにした」マーク・ボイル

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
お金の存在の矛盾と世の中に存在する物の大切さを感じ、著者は1年間、お金を使わずに過ごす事を決意する。
無料でトレーラーハウスを手に入れ、住む場所も確保した著者だが、1年を通じていろいろな困難に出会う。何より大変なのが移動である。自転車のパンクに悩まされたり、ヒッチハイクを繰り返して長い時間をかけて移動する様子から、現代の交通の便利さを思い知ると同時に、それを無意識に受け入れていることに疑問を感じるだろう。
著者は現代社会の問題点をこのように指摘する。お金を使う事によって欲しい物は手に入る。それはとても便利で現代の生活には欠かせないシステムではあるが、物を作っている生活者やそれを育む自然からどんどん僕らを遠ざけているのだと。
本書の多くはお金を使わないことを自らに課した著者が四苦八苦する様子であるが、その合間に綴られている現代の社会の問題点はどれも心に響くものばかりだ。
また、無償で他人に親切するからこそ、自分も困ったときに誰かに親切にしてもらえるということを、自らの行動で示し、人と人との繋がりの重要性も語っている。
本書を読み終わってから、スーパーでレジ袋をもらうのを躊躇(ためら)ったり、お弁当屋さんで割り箸を付けてもらうかを一瞬悩むようになったのだから、著者の行動は人々に少なからず影響を与えているのだろう。生き方や社会のあり方について考えさせてくれる一冊。
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「クリエイティブ・シンキング入門」マイケル・マルハコ

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
物事をクリエイティブに考える方法について語っている。
物事の見方や、考え方を変えれば今までとは異なったアイデアが生まれるという例を多く載せている。僕にとっては、正直あまり印象に残らなかったが、あまりアイデアを出すのが得意ではないと思っている人が読んだら、ひょっとしたら何か刺激になる内容があるかもしれない。
個人的には、本書のなかにいくつか出てきた絵が印象的だった。誰もが知っている有名な、見方によっておばあさんに見えたり、若い女性の後ろ顔に見えたりする絵や、ウサギに見えたり鳥に見えたりする絵。また、「Good」と「Evil」という相反する意味を同時に含んでいる絵など、本の内容よりも個人的には印象的だった。
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「デザイン思考が世界を変える」ティム・ブラウン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
デザインファームIDEOのCEOである著者がデザイン思考について語る。
デザイン思考という考えは最近いろんな場所で語られ、その重要性はこれからの時代においてますます強まっていくことだろう。本書では著者が自らの経験からデザインについて語る。
まず、デザインとは3つの制約を受け入れることだと言う。それは「技術的実現性(フィーザビリティ)」「経済的実現性(ヴァイアビリティ)」「有用性(デザイアビリティ)」であり、任天堂のWiiなどそれを実現した事による成功例をいくつかあげている。
そしてデザイン思考を、「収束的思考」と「発散的思考」に分けて考えている点も興味深い。判断を下す場合には「収束的思考」は重要だが、可能性を広げるためには「発散的思考」が必要だという。だからこを著者は、多くの会社がデザイナーなどの発散的思考の持ち主を組織の下部にしか配置していないことを嘆いているのだ、なぜなら組織の下部に降りてくる頃にはすでに会社の方針は決定しており、「収束的」に物事を進めなければならないからである。
考えてみれば当たり前のことなのかもしれないが、それでも刺激になる考え方にたくさん出会う事ができた。ぜひ時間を空けてもう一度読んでみたい。
【楽天ブックス】「デザイン思考が世界を変える」

「ちょっと今から仕事やめてくる」北川恵海

オススメ度 ★★★★☆ 3/5
ブラック企業で働き疲弊した隆(たかし)だったが、あるとき小学校時代の友人「ヤマモト」と出会って変わっていく。
昨今の「ブラック企業」という言葉の認知度や、働き過ぎと言われる日本の現状を考えると他人事とは思えない。本書で、隆(たかし)と「ヤマモト」の生き方を見る中で、人生のおいて本当に大切なものは何なのかを改めて考えさせれくれるだろう。終盤で隆(たかし)が、働きすぎに疲れて自殺してしまった人間の母親と放すシーンが印象的である。

私が一番悔やんでいるのはね、大切なことを、教えてあげられなかったこと。
逃げ方を教えてあげていなかったの。私はそれに気付いていなかった。あの子は小さい頃から真面目で、頑張り屋さんで…。

この本を読んで欲しい人をたくさん知っている。放り出してもいい。逃げてもいい。もっと簡単にそう言えるようになって欲しいと思った。
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「決断の法則 人はどのようにして意思決定するのか?」ゲーリー・クライン

オススメ度 ★★★★☆ 3/5
優れた意思決定に関して調べ、その内容をまとめている。
本書では著者とその仲間達が多くの意思決定の現場に実際に行ってその場を観察するとともに、すぐれた意思決定者からも意見を求め、意思決定の法則をまとめている。
救急や戦場で行われた優れた意思決定は、その意思決定者さえも「直感」として、その決定の理由を説明できないことが多い。本書ではそんな直感によってされた意思決定がどのようにして導き出されたのかを探っていく、そんなエピソードはどれも興味深いと同時に、短時間で行われた本当にすぐれた意思決定のための技術は、経験によってしか得られない、と思わせる。
後半は意思決定を分析する話が多くて若干退屈だったが、困難にぶつかったときに、どのように考えればいいか、という参考にはなるだろう
【楽天ブックス】「決断の法則 人はどのようにして意思決定するのか?」

「非才」マシュー・サイド

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
この世には遺伝的に決まる「才能」なんてものはなく、すべては努力によって身につけられる。世の中にはびこる「才能神話」を否定しながら、効果的な努力の方法を説明する。
卓球のチャンピオンとなった著者が、自らの経験を振り返ってその理由を探るとともに、技術を習得するための方法を語る。同じように努力や効果的な練習方法に着いて語った「天才!成功する人々の法則」「Talent Code」などと同じような内容を含む部分もあるが、本書では自らの経験談として語られている点が大きく異なる。
著者は自分が卓球のチャンピオンになった理由を、才能のおかげなどと言ったりはしない。卓球台を買ってくれた両親と、同じように卓球にのめり込んで常に練習相手となってくれた兄の存在があったからだと言うのだ。つまり、たまたま効果的な練習を何時間もできる環境に育ったということである。
同じように、タイガーウッズやチェスのチャンピオンなど多くの偉大な「才能を持っている」と呼ばれる人たちの努力を説明していく。本書の努力の説明とは、つまり才能の否定である。面白いのは著者が、プロテニス選手のサーブレシーブに挑戦する場面だろう、高速のサーブを打ち返すことのできる人間はそれに見合う反射神経という才能を持っているから、と言われるが、では同じように反射神経を持っていると言われる卓球チャンピオンは、テニスのサーブに反応できるのか。
また、後半では、大舞台で起きた「あがる」という現象について説明する。トッププレイヤーは並外れた練習量によってスポーツに必要な動作を「自動化」する。しかしわずかな狂いによって「直そう」と意識してしまうことで、ますます悪化していくのである。
毎日の努力に磨きをかけたくなる一冊。
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