オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
県警の広報課に勤める森口泉(もりぐちいずみ)は県警の不祥事の苦情電話に悩まされていた。そんな中、その不祥事をリークしたと問いつめた報道に勤める友人が殺害される。責任を感じた泉(いずみ)は真実を知ろうと動き始める。
不祥事とは、ストーカー被害にあっている女性の被害届を受理せずに社員旅行に行った結果、その女性が殺害されてしまうというもの。それに限らず、後半では有名な宗教団体の事件への関わりが明らかになり、オウム真理教や桶川ストーカー事件など実際の出来事を物語に取り入れているような印象を受ける。
泉(いずみ)は刑事である磯川(いそかわ)とともに真実を知ろうとする。やがて事件は警察内部だけでなく公安などの警察内部の組織上の問題も関わっていることが明らかになって行くのである。
設定として、警察の汚職や公安との縄張り意識を扱った物語は既に多くあるため、あまり新しさは感じられなかった。結末もやや中途半端な印象も受けたが、同じ主人公による続編を期待できる終わり方だったのでその辺を期待したい。
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カテゴリー: 和書
「頂点への道」錦織圭
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2015年世界ランキングを自己最高の4位まであげたプロテニスプレイヤーの錦織圭。彼が綴るブログを中心にその成長の経緯を描く。
基本的には錦織が普段綴っているブログと、その当時の戦績と、記者のコメントを並べているだけなので、読者はそれを読んで何かを感じるしかない。ラケット競技であるスカッシュを10年以上続けている僕にとっては、同じ相手と繰り返し戦い、その度に勝つために相手の弱点を分析して戦い方を変えていくという錦織のいるステージがとても羨ましくかんじた。また、そこまで突き詰めてスカッシュをやってこなかったことに考えが至り、1つの競技というものへの自分の取り組み方を改めて考えさせられた。
ブログの投稿はどれも錦織の生の声で、テニスの技術が優れている事をのぞけばどこにでもいる一人の青年だということが窺い知れる。特に何度も携帯をなくしたり、水没させたりする点にはとても親しみがわく。
錦織の今後の戦いに注目したい。
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「慟哭の谷 北海道三毛別・史上最悪のヒグマ襲撃事件」木村盛岳
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
1915年に北海道で起こった8名の死者を出したヒグマの襲撃事件を描く。
あまりにも残酷な出来事のために、この事件を基にした物語はいくつかあり、僕自身も数年前に「シャトゥーン ヒグマの森」という物語を読んでこの事件を知った。本書は事実をできるかぎり忠実に描こうとしているため、ドラマ仕立ての物語のような感情的な表現がなく、それがむしろ現実の怖さを伝えてくるようだ。
著者は当日のその場に居合わせた人々の台詞まで調べ上げている。そして、当日人々が交わし合ったヒグマに関する冗談などが、その後の惨劇を予感させるようなものであったために、何か人の力の及ばない力の存在を感じさせている点が興味深い。
本書はその他にもヒグマ事件に関する考察や、有名な福岡大学ワンゲル部員の事件や、写真家星野道夫さんの事件など、その他の日本で起こったヒグマによる死傷事件を取り扱っている。動物の恐さを思い出させる内容である。
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「蟻の菜園 アントガーデン」柚木裕子
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
結婚詐欺の容疑で逮捕された女性円藤冬香(えんどうふゆか)は、美人で男に不自由しないように見えた。そこに興味を持ったフリーライターの今林由美(いまばやしゆみ)はその真相を究明して記事にしようとする。
由美(ゆみ)が円藤冬香(えんどうふゆか)のこれまでの足取りを探るうちに、円藤冬香(えんどうふゆか)は施設で育った事を知る。また、あわせて福井の言葉を知っていたらしいという証言を得る。
その一方で本書では並行して父親から虐待を受ける幼い姉妹の話が展開していく。その姉妹は早紀(さき)と冬香(ふゆか)と言い、東尋坊の電話ボックスから救いを求める早紀(さき)は早紀(さき)を救おうとする大人達が目を離したすきに再び行方をくらましてしまう。2つの物語は、由美(ゆみ)が調査を進めるにしたがって次第に重なっていくのである。
残念ながら、読者にとっては比較的あっさり結末が見えてしまうだろう。また、物語のなかに深いテーマのような物が見えなかった点が残念である。
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「パレートの誤算」柚木裕子
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ケースワーカーとして市役所に勤める聡美(さとみ)。受給者を訪問するという気が重い作業を行うなか、先輩社員が同じく受給者訪問中に殺されるという事件が起きる。
受給者の訪問をする聡美(さとみ)と同僚の小野寺(おのでら)は生活保護として受給したお金をギャンブルに使う人にいらだちを隠せない。そんななか、そんな受給者達の訪問によって、彼らの支えになろうと、仕事に誇りを持って取り組んでいた先輩社員の山川(やまかわ)が殺害されるのである。真実を知ろうと調査するうちに、聡美(さとみ)自信にも危険が及んでいくのだ。
生活保護という議論の多い領域を扱った物語なので、物語の流れとしてはそれほど予想を超える内容ではなかった。もう一捻りあっても良かったような気がする。個人的に今注目の作家だけにありふれた物語に終わってしまっている点が残念である。
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「幸せの条件」誉田哲也
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
24歳の梢恵(こずえ)は惰性でつとめていた会社から長野に行ってバイオエタノール用の米を作ってくれる農家を探すように命じられた。
渋々行った長野で梢恵(こずえ)はいくつかの農家を訪問した後、その地域の農業の発展に努める「あぐもぐ」という会社を経営する温かい家庭に迎えらる。会社のために農業を学ぶ、という目的で農家の仕事を手伝い始めた梢恵(こずえ)は、そこで農業と農業とともに生活することに魅力を感じていくのである。
単純な話ではあるが、最先端の農業について物語を通じで学べる点が面白い。若い人間は、農業と聞くと、効率の悪い地味な作業のような印象を持っているかもしれないが、本書で描いている最先端の農業は、非常に合理的な物である。物語中で、農業に関連する言葉に対して、質問する梢恵(こずえ)に、社長である茂樹(しげき)が丁寧に答えていく。どれも興味深い話ばかりで、農業という領域に読者の興味を向けてくれるだろう。特に食糧自給率の話は印象に残った。世の中は作為的な数字にだまされているのかもしれない。
また、物語は東北大震災と時期が重なっており、福島の原発の引き起こした出来事がどれほど農家に深刻な影響を与えたかが伝わってくる。
物語の面白さだけでなく、新たな分野に視野を広げてくれたという点でも評価できる一冊。
【楽天ブックス】「幸せの条件」
「統計学入門」盛山和夫
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
統計学の基本的な部分を説明している。
学生時代に習った期待値や最小二乗法などの意味がより深く理解できた気がする。また、検定という考えについてもようやく少し分かってきた。しかし、やはり鉛筆と紙を用いて書かれている内容を繰り返し使用してみないと本当の理解には到達しないというのが身にしみてわかった気がする。読書時間ではなく勉強時間を別に設ける必要があるのだろう。
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「「学力」の経済学」中室牧子
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本の教育のあるべき姿について、データを元に説明していく。
例えば、「本を与えれば成績がよくなる」とか「ゲームをさせると成績が下がる」とか、世の中でよく言われることを科学的に説明しようと試みていく。その過程で、日本の教育がどれほど証拠もなしに、先入観によって構築されているかに気付かされるだろう。
また、著者はそれ以外にも教育システムの向上のために多くの内容に触れているが、なかでも印象的だったのは計る事のできない「非認知能力」つまり「やりぬく力」の重要性である。教育に関心のある多くの人が中学や高校での教育の重要だと思う一方で、本当に人生を変えるほど重要なのは、小学校に入るまでに培われた自らを律する「やりぬく力」だというのである。「自制心」とも呼ばれるこの力は、若い頃のしつけや部活などの活動を通じで培われていくものだそうだ。
目の前の定期試験で数点を上げるために、部活や生徒会、社会貢献活動をやめさせたりすることには身長であるべきかもしれません。学力をわずかに上げるために、長い目でみて子どもたちを助けてくれるであろう「非認知能力」を培う貴重な機会を奪ってしまうことになりかねないからです。
また、後半で著者が語っている、教員免許の弊害についての考え方も新鮮で面白かった。教育に対して新たな考え方をもたらしてくれる一冊である。
【楽天ブックス】「「学力」の経済学」
「JavaScript:The Good Parts」ダグラス・クロフォード
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ここ数年で一気に需要が高まっているJavaScript。しかしそれは多くのプログラマーを悩ませる仕様が詰まっている。JavaScriptの性質を知り尽くした著者が、JavaScriptで「良いパーツ」を作るための方法をまとめている。
若干僕のJavaScriptの知識レベルには早すぎたという印象もあり、理解できない箇所も多々あったが、いいJavaScriptを書くためにやったほうがいいことと、やらないほうがいいことはいくつか知る事ができたし、なによりも本書によって癖のあるJavaScriptという言語に魅力を感じてしまった。
おそらく本書によってJavaScriptという言語の不完全さを知って嫌いになる人もいるだろうが、僕のように逆にその深さに魅了されてしまう人もいるだろう。本書には、もう少し知識を貯えてきてからまた戻ってきたいと思った。
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「満願」米澤穂信
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第27回(2014年)山本周五郎賞受賞、2015年このミステリーがすごい!国内編第1位作品。
6つの物語を集めた短編集。短編集とはいえどれも非常に質の高い物語が集まっている。最初の物語の「夜警」は殉職した警察官の話。彼はあまり警察官に向いていなかったが、その日、酔った犯人に発砲すると同時にその犯人に刺されて亡くなったのである。しかし、彼の性格やその日の様子を詳細に振り返ってみるとその裏に隠された意図が見えてくるのである。
3番目の「万灯」の物語も印象的である。プロジェクトでバングラディシュに派遣された男性は、そこでのプロジェクトの完遂のために、ある村に拠点を築く必要がある。しかしその村の権力者達は、それに反対する一人の権力者を殺すことを条件にそれを受け入れる提案をするのである。彼は仕事のためにそれを受け入れるのだが、それはやがてさらなる問題を生むことになるのである。
上記の2つ意外もどれもずっしりと印象に残る物語ばかり。著者米澤穂信は軽いミステリーを描くという印象を持っていたが、ここ最近の作品からは、雰囲気作りなど非常に優れた小説家になってきたということに驚かされる。
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「破門」黒川博行
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第151回直木賞受賞作品。
小さな建設コンサルタントを営む二宮(にのみや)は知り合いの暴力団の桑原(くわばら)によって暴力団同士の詐欺に巻き込まれていく。
二宮(にのみや)と桑原(くわばら)を中心に、関西圏を中心とした多くの暴力団と喧嘩、駆け引きを繰り返しながら、物事をなんとか丸く収めようと奔走する様子が描かれている。面白いのは二宮(にのみや)の微妙な立ち位置である。堅気でありながらもお金欲しさに桑原(くわばら)と関わり、諍いの渦中にどんどん引き込まれていくのだが、暴力に怯えながらもお金は欲しいため桑原(くわばら)にお金を要求していくのである。
二宮(にのみや)が飼っているインコや、従姉妹の悠紀(ゆうき)の存在が物語に彩りを添えている。
物語の全体の流れが特別印象的というわけではないが、二宮(にのみや)と(くわばら)の会話の独特のテンポが印象的だった。
【楽天ブックス】「破門」
「ドッグ・ラン」樋口明雄
オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
横浜の探偵の鯉沼(こいぬま)と鷹羽(たかば)はある日目を覚ますと首に爆弾ば巻かれていた。自らの命と引き換えに銀行強盗をするように要求されるのである。
こんなコミカルなドタバタ劇は久しぶりである。世の中は最近小説さえも現実の多くの新しい情報が詰まっているせいで、このような物語はむしろ時代の古ささえ感じる。
著者、樋口明雄は動物、特に犬を描いた作品で最近注目していたので、本作品もそのタイトルからそのような内容を期待したのだが、犬はペットとして登場するものの、期待した内容とはほど遠かった。まだ、著者自身が書く小説のスタンスに試行錯誤しているのかもしれない。
本作品自体は、時間つぶしに役立てられる程度のものだろう。本書から学べるものはほとんどない。
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「天空の犬」樋口明雄
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
警察官の夏実(なつみ)は救助犬のメイとともに南アルプス山岳救助隊に参加することとなる。夏実(なつみ)とメイが仲間達と一緒に、人命救助に奔走する様子を描く。
序盤は少しずつ夏実(なつみ)が南アルプスの救助に慣れていく様子や、仲間と打ち解けていく様子が描かれる。興味深いのは、夏実(なつみ)が共感覚の持ち主ということ。つまり、夏実(なつみ)は人の感情を色としてみることができるのである。その能力によって夏実(なつみ)は救助犬メイと心を通わせることができるが、一方で、友人や同僚にはその能力を隠しているために生きづらさを感じるのだ。
同じ救助隊のメンバーも個性的な人で構成されている。同じ女性隊員で完璧主義者の静奈(せいな)は夏実(なつみ)の存在を好意的に受け入れようとしない、また、深町(ふかまち)は過去の出来事によってすでに辞める事を決めている。それでも全員で協力していくうちに人命救助を繰り返していくのである。そして、物語後半はある有名な政治家が山に登ることからいろいろな人を巻き込んだ大きな出来事へと発展していく。
「ドッグテールズ」という短編集が期待以上に良かったため、こちらの長編はもっと期待してしまった。期待値が高すぎたせいでややがっかりした部分もあるが、信頼し合った動物と人間の感動的な物語である。
【楽天ブックス】「天空の犬」
「スマートフォンのためのUIデザイン」池田拓司
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2013年に発行された本という事でiOS7のフラットデザインの流れは反映されてはいないがiOSアプリとAndroidアプリの基本的な違いや、アプリの様々な名称や呼び方の違いなどが網羅されている。特に新しい知識を与えてくれるわけではないが、UIについていくつかの気付きを与えてくれる。
本書だけでUIの十分な知識を得るということはないが、助けにはなるだろう。
【楽天ブックス】「スマートフォンのためのUIデザイン」
「ドッグテールズ」樋口明雄
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
犬を扱った5つの物語。
著者の犬に対する優しさが伝わってくる。どれも面白かったが、3番目の物語である「疾風(はやて)」と最後の「向かい風」が特に印象的だった。「疾風(はやて)」は熊の出没によって熊退治が必要になったある山村の物語。弥太郎(やたろう)と猟犬疾風(はやて)が協力して熊に立ち向かうなかで、人間と動物の信頼関係が見えてくる。また「向かい風」は災害救助犬のハンドラー、高津弥生(たかつやよい)と救助犬エマの物語。中国の震災の祭の悲劇によって心に傷を負った弥生とエマだったが、行方不明となった幼い姉妹を探すために再び動き出すのである。
本書を読むと、犬の誠実さが伝わってくる。考えてみれば人間の多くが、お金や地位や嫉妬に囲まれて生きている。しかし、動物にはそれがなくただ生存のために生きている。もししっかりとした信頼を気付く事ができれば、動物、特に人間と共存する犬ほど、その信頼できる存在はないのではないかと感じさせてくれる。
今注目の著者。他の作品もすべて読んでみたいと思った。
【楽天ブックス】「ドッグテールズ」
「本日は大安なり」辻村深月
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
大安のその日、とある結婚式場では4組のカップルが結婚式を挙げようとしていた。それぞれの式がそれぞれの問題を抱えたまま行われようとしている。
4組のなかでもっとも印象的なのは、双子の姉妹の妹である妃美佳(きみか)の結婚式である。双子として生まれ、常に姉の鞠香(まりか)と比較されて育ってきたからこそとも思える想いが詰まっている。妃美佳(きみか)は同じ顔をした鞠香(まりか)に花嫁を変わってもらって、夫が本当に2人の違いに気付くかを試そうとするのである。
その他のカップルも、いろんな事情を抱えて結婚式にこぎつけているので、そこにはいろいろなドラマが溢れている。それでも最後は人間の温かさを感じられるだろう。辻村深月の作品のなかでははかなり爽やかな物語である
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「統計学が最強の学問である」西内啓
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
現代の統計学の重要性を説く。
実際には19世紀の中程にはその重要性を認識されていたにも関わらず、それを実現するためのツールが整ったのは最近である。コンピューターやインターネットが発展したことによって、多くのデータの収集や分析が個人レベルでも可能になった今、統計学はもっとも先見性のある分野と言えるだろう。
一般的な数学教育を受けた人ならば、序盤の平均や中央値を利用してデータを解説する部分には特に新しさを感じないだろう。基本的な統計に関する考え方から入っているが、むしろ本書の興味深い点は、統計学をどうやって実際の方針の決定に使用するか、という統計学の応用のためのヒントが書かれている点だろう。
著者は言う。取得したデータの結果によって何をするかを決めないと、取得するべきデータの粒度が決まらないのだと。どんなデータもサンプル数を多くする事によって精度をあげることはできるが、その先の行動を決めなければ、どれほど高い精度のデータが必要なのかを決めることができずに、無駄に情報集めや分析の時間を消費する事になるのである。現在多くの企業がそうやって無駄にデータ分析にコストをかけているのだという。
本書で述べられているように、データ分析を行動を決めるための指針と考えると、「標準誤差」という考え方の重要性がわかってくる。残念ながら、本書に書かれているその計算式だけではその背後にある考え方を理解できなかったが、その重要性は十分に伝わってくる。
後半はかなり素人の僕には難しくなってしまったし、実際には紙と鉛筆で実際に計算しながらでないと理解できない物なのだろう。本書中で出てきた「回帰分析」「t検定」「標準誤差」などの新しい言葉はしっかり理解したいと思った。
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「自覚 隠蔽捜査5.5」今野敏
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
しがらみや上下の階級意識の強い警察組織において、合理的に物事を解決しようとする大森署署長の竜崎伸也(りゅうざきしんや)の物語。
「隠蔽捜査5.5」という副題が小数点をつけているのは、本書が短編集という意味である。同じ警察組織の中の、竜崎(りゅうざき)の周辺の人々が、日々起きる事件や問題を対処していく様子を描く。一歩判断を間違えれば大きな問題になりかねない状況を、竜崎(りゅうざき)が解決していく様子が爽快である。
本書ではシリーズ全体を通じてたびたび登場する戸高(とだか)の活躍もいくつか見られる。彼は優れた捜査官でありながらその勤務態度ゆえに問題視されているのであるが、仲間からの信頼は厚い。竜崎(りゅうざき)と戸高(とだか)の不思議な信頼関係は本シリーズの魅力の一つでもある。
このシリーズを読むといつも思う事であるが、自分自身も人間として竜崎(りゅうざき)のように、常に冷静で、平等かつ合理的に行動したいと思わせてくれる。
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「盗まれた顔」羽田圭介
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人の多い町に出て、記憶した顔と一致する顔がないかを探し続ける見当たり捜査員である、白戸(しらと)は同僚の安藤(あんどう)、谷(たに)とともに毎日犯罪者の顔を探す事を仕事とする。
テレビ番組などで聞いたことのある見当たり捜査であるが、このように小説となってその捜査を見るとその厳しさに驚くだろう。通常でも1ヶ月に1人か2人の犯罪者を見つけられる程度なのだと言う。つまり1ヶ月のうちの大部分は、ただ町に出てなんの成果も挙げられない日々なのである。
実際、本書では白戸(しらと)の同僚の谷(たに)が何ヶ月も成果を挙げられずに憔悴する様子が描かれている。また、逆に白戸(しらと)の、すでに逮捕した犯罪者の顔が忘れられずに苦しむ様子も興味深い。実際の見当たり捜査員にしかわからないであろう悩みや葛藤が描かれている点が面白い。
さて、ある日の捜査の際に、白戸(しらと)が既に死んだと思っていた男の顔を見かけてから物語は大きく動き出す。白戸(しらと)は大きな陰謀に挑んでいく事となるのである。
警察物語としては、組織内の陰謀などはもはや新しくもないが、やはり見当たり捜査員という、見ることのできない人生を見せてくれるという点で興味深い。本書を書くために多くの調査をしたと思われる著者羽田圭介(はだけいすけ)という著者にも好感が持てたので、別の作品も読んでみたいと思った。
【楽天ブックス】「盗まれた顔」
「光る牙」吉村龍一
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
北海道日高山脈で熊によって一人のカメラマンが犠牲となった。森林保護官を勤める樋口孝也(ひぐちたかや)は上司の山崎(やまざき)とともに熊を追う。
本書では、樋口孝也(ひぐちたかや)とその上司の山崎(やまざき)が冬眠できずに人の味を覚えたヒグマを退治するために奔走するのだが、その過程で見えてくるのはヒグマの恐ろしさだけでなく、それが利己的な人間によって生じた事であり、自然界の復讐のように描かれている点が印象的である。
さて、そんな凶暴な熊を追うなかで、樋口孝也(ひぐちたかや)は自らの不甲斐なさと向き合い、また、尊敬する上司である山崎(やまざき)に少しでも近づくために成長していく。物語の展開としてはそれほど新しくはないが、それをどう描くか、という部分がこのような物語では重要なのだろう。ただ単に動物によってパニックに陥るだけでなく、何かを読者に訴えかける物語であった欲しいものだ。
動物による人間への復讐をテーマにした物語としては「シャトゥーン ヒグマの森」や「約束の地」などが思い浮かぶ。比較して読んでみるのも面白いかもしれない。
【楽天ブックス】「光る牙」