「「自信」が「過信」に変わった日 それを取り戻すための2年間」柏木陽介

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
現在浦和レッズの中心選手として活躍する柏木陽介がサッカーやチームに対する想いを語る。
比較的整った顔立ちであり、ユース時代から名前を知っていたせいか、順調なサッカー人生を歩んでいるような印象を持っていた。しかし、すでに28歳でありサッカー選手としてはベテランの域にさしかかりながらも、海外でプレーするわけでもなく日本代表で活躍する訳でもない。本書を読むとそんな柏木の悩ましい胸の内が見えてくる。
驚いたのは、柏木は非常にネガティブな人間だということだ。本書で本人もそれを繰り返し語っているが、かなり好不調の波が大きいらしい。スポーツ選手というと、中田英寿や中澤佑二のように自らを律してストイックにトレーニングに励む姿を思い浮かべるかもしれない。しかし、本書が与える柏木の印象は、ただひたすらサッカーが好きで練習に明け暮れていた結果プロになったというだけで、心は常に葛藤を繰り返す少年のようである。
また、母子家庭で育った柏木は広島ユース時代から、周囲の多くの人に支えられ叱咤されてここまでたどり着いたということも伝わってくる。多くの幸運な出会いが、人の人生を良い方に変える事も、悪い方にも変えることもあるのだろう。人との出会いの大切さを改めて感じた。
ちなみに、柏木は常に優勝争いをしながら優勝できない浦和レッズを優勝させる事が一つのサッカー人生の区切りと考えているようだ。その後は海外移籍も考えているというが、ぜひ実現させて欲しいと思った。
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「なぜ一流の人はみな「眠り」にこだわるのか?」岩田アリチカ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
なぜか日本では今でも、企業によっては眠らないで働いていることを自慢する人間がいる。その一方で新しい文化を取り入れ常に効率よく働くことを目指す企業や人たちは、眠りの質を高めることを重視し始めている。本書はそんな眠りに対する意識の変化と、眠りの質を向上させる方法について語っている。
僕自身5年ほど前に朝6時までに起きて勉強するという生活を続けている。本書を読む以前から眠りの重要性を理解しているので、眠りの重要性を説いた前半部分で特に参考になるような内容はなかったが、後半に描かれていた眠りの質を高める方法。例えばコーヒーを飲む時間や、腹式呼吸、寝る前の入浴の仕方などは、なかなか取り入れるのは難しいが参考になった。
朝型になると年収が上がる、とか、社長は朝型が多い、とか、キャリアにひもづけて眠りの質野向上の有用性を語っているところが少し残念である。年収やキャリアにそれほどこだわりのないひとにとっても、充実をした人生を送るためには眠りの質を上げることは重要なはずである。。
むしろ、相変わらず寝ないで働く事が偉いと思っている人こそ読むべき本だと思った。
【楽天ブックス】「なぜ一流の人はみな「眠り」にこだわるのか?」

「伝え方が9割」佐々木圭一

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
伝え方を変えるだけで、1割の成功確率のデートの誘いが5割、7割にもなる。そんな自分の望む方向へ人生を変えるための「伝え方」の極意は決して一部の才能ある人だけに与えられた物ではなく、誰しもが意識して言葉を紡ぐ事によってできることなのである。本書はそんな「伝え方」を語る。
本書で語るそんな「伝え方」の秘訣は次の5つに集約される。

サプライズ法
ギャップ法
赤裸々法
リピート法
クライマックス法

である。どれも言われてみれば単純で、たとでばサプライズ法は「!」をつけるだけという簡単なものからいくつか紹介されている。確かに「!」の文字一つあるかないかでずいぶん受ける印象は変わるものだ。
またギャップ法というのはスタート地点を下げて、本当に言いたい事を相対的に強調する方法である。

これは私の勝利ではない、あなたの勝利だ。
嫌いになりたいのに、あなたが好き。

どちらも後半だけでの意味が通じるのだが、前半がある事によって強調されるのがわかるだろう。その他の赤裸裸法、リピート法、クライマックス法などもおそらく想像するのはそれほど難しくないだろうが、慣れるまで若干時間がかかりそうだ。メールだけでなくLINEやFacebookなど、テキストによるコミュニケーションがより広まってきた今だからこそ、言葉の伝え方を見直すときなのかもしれない。
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「海の翼 エルトゥールル号の奇蹟」秋月達郎

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
イランイラク戦争の際、日本人を救出するためにトルコが航空機を飛ばした話は有名である。それは1800年代後半に起きたエルトゥールル号の恩返しであった。

僕自身もトルコを訪れた事があり、トルコ滞在中には日本が本当にトルコに愛されている事を感じてその理由を知ろうとした事もある。だから、エルトゥールル号の物語とイラン・イラク戦争のときのトルコの行動は知識としては知っていたが、それが本書で書かれているような劇的なものだとは思っていなかった。

本書で描かれている、日本人のトルコ人の救出や、また一方で、トルコ人達の日本人の救出は、決して政治的な駆け引きなんかではなく、一般の人々の助け合いの結果なのである。トルコに行った事ある人や、これからトルコに行こうとしている人にはぜひ読んで欲しいと思った。

また、トルコ共和国の初代大統領であるアタチュルクについてもトルコに行ったときに名前だけは知っていたが、日本人から大きな影響を受けていたことは初めて知った。
恩を忘れないトルコ人の姿から僕ら日本人も学ぶ物があるだろう。

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「インデックス」誉田哲也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
姫川玲子シリーズ。
今回は短編集という事で、姫川玲子を中心とした8つの物語が収録されている。このシリーズは「ストロベリーナイト」「ソウルケイジ」など長編が人気があるが、個人的には短編集である「感染遊戯」や本書が好きである。
本書でも中程に収録されている「彼女のいたカフェ」が非常にいい感じである。書店に併設されたカフェの店員目線の物語で、特に理由もなくカフェのスタッフを始めた彼女が、毎日そこで難しそうな本を読む女性に恋するという内容である。もちろん、その女性が姫川玲子であり、やがてカフェに姿を現さなくなる…という物語であるのだが、その数年後に事件を通じて2人の再会を描くのである。
まだ、ほかの章では、ブルーマーダーの事件や、過去に殉職した姫川の部下について描いたりするなど、どうしても一冊ずつ間隔があいてしまうために内容についていくのは難しいが、姫川玲子の捜査に対する信念や部下に対する温かい思いが伝わってくるだろう。
【楽天ブックス】「インデックス」

「たま高社交ダンス部へようこそ」三萩せんや

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
高校入学と同時に、食べ物に釣られて社交ダンス部に入部してしまった雪也(ゆきや)だが、徐々に社交ダンスの魅力にはまっていく。しかしやがて部の存続をかけて競技会に出場する事になる。
社交ダンスのモチベーションを上げるために、社交ダンス関係の本をなんでもいいからと思い、本書に出会った。少しずつダンスの魅力にはまっていく流れは、非常にありがちではあるものの、挿絵も非常に奇麗で、普通に楽しむ事ができた。特に目新しさはないが、ダンスに興味を持っている人、普段楽しんでいる人が少し違った角度から改めてダンスに目を向けようとしたときには本書はちょうどいいかもしれない。
【楽天ブックス】「たま高社交ダンス部へようこそ」

「「タレント」の時代 世界で勝ち続ける企業の人材戦略論」酒井崇男

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
なぜアップルやグーグルやトヨタは成功し、日本の電気・半導体・通信・IT企業は完敗してしまったのか。それは「タレント」の重要性を理解していたか否かなのだ。本書はそんな視点で企業が発展して行くためにどのようにしてタレントと向き合うかを語っている。
今や、材料や労働力はどこでも手に入れる事ができるので、物を作るのは人件費や物価の低いところを選ぶ事ができる。そうなると企業として重要なのは何なのだろう。本書はそれを「設計情報」だと主張する。優れた設計情報」さえできあがれば、あとはそれをひたすら各地で現実に存在する物やサービスに転写するだけなのである。そしてその「設計情報」を作る人こそが「タレント」と呼ばれる人なのである。
「タレント」というとなんとなく「すごい人」という印象しかないが、プロフェッショナルやスペシャリストと比較するとタレントというものが何なのか分かりやすいだろう。

単なるスペシャリストは、知識を活用する「目的」よりも「知識そのもの」にアイデンティティを持っている人が多い。プロフェッショナルも同様である。一方、優れたタレントは、知識にせよ職業にせよ、「目的」を達成するための「手段」だと考えているところに際立った特徴がある。

世の中がただ一言「天才」とか「才能のある人」と読んでいる人の正体が分かった気がする。
また本書は後半でタレントを育む事の成功例としてトヨタの主査制度を挙げている。興味深いのは、トヨタの主査制度は日本よりもアメリカで高く評価されている点だろう。
著者は言う。アメリカは日本ほど新たな文化を創造するのは得意ではないが、いいものを徹底的に分析して取り入れる能力は非常に高く、日本で生まれた主査制度もそうやってアップルなどの企業で成果を上げたのである、と。
アメリカという国の見方が少し変わった。
【楽天ブックス】「「タレント」の時代 世界で勝ち続ける企業の人材戦略論」

「いのちのダンス 〜舞姫の選択〜」吉野ゆりえ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
学生時代からダンスに打ち込んで、海外でも活躍した著者だが、ダンスパートナーでもあった夫と分かれてから、苦難の人生が始まる。
5年生存率わずか7%という難病を患うのである。担当医との確執などを経ながら、再発と手術を繰り返して行きていく様子が描かれて行くが、本書は闘病記ではない。病気と闘いながらブラインドダンスなど目の不自由な人のためにダンスを教える事に尽くし、できる範囲で一生懸命生きることの大切さを教えてくれるのである。
また、同じダンスをする人間として、著者が関わったブラインドダンスというものに興味をかきたてられた。ダンスをしていない人にとっては想像しにくいかもしれないが、社交ダンスに置いて相手の動きを察知する能力というのは非常に大切で、目の不自由な状況こそ、その能力をもっとも伸ばす事ができるに違いない、と思うのだ。
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「ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく」堀江貴文

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
ライブドアの経営者として有名になった後、2年6ヶ月の実刑判決を受けてすべてを失った著者「ホリエモン」がその過去や働く事に対する考え方を語る。
目的を見つけるとひたすらそのために努力をするその姿勢は(本人は「努力」とすら思っていないでひたすら好きな事をやっているつもりだと思うが)、同じ種類の人間である僕にとっては特に新しいものではない。だからといって、普段努力をしない人が読めば良い影響を受けるかというとそんなこともない、そういう人はその感覚が理解できないだろう。
多くの自己啓発本と同様に本書は、挑戦することによって得られるスキルや、充実感などについて語られているので、内容についても新鮮なものはないだろう。
唯一、印象的だったのは、田原総一郎が著者に語ったという言葉

あなたはこの国を牛耳る年寄りたちから嫌われ、怖れられ、ついには逮捕され、実刑判決まで食らってしまった。なぜか?それは堀江さん、あなたがネクタイを締めなかったからだ。ちゃんとネクタイを締めて、年寄りにゴマをすっていれば、球団買収だって成功しただろうに…

大きな目標を達成しようとする目前で、小さな礼儀不足や身だしなみのせいで失敗することがある。信念も大切だが、多少の譲歩もやはり必要なのだ。
【楽天ブックス】「ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく」

「いつも「時間がない」あなたに」センディル・ムッライナタン/エルダー・シャフィール

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「時間がない」というのは僕自信つねに感じていること。世の中の多くの能力は、お金よりも時間によって獲得できる事が多い。そんな時間の必要性を常に感じている僕にとってなにかしらヒントになる内容が含まれていればいいと思い本書を手に取った。
残念ながら本書が扱っているのは「時間がない」人向けとは少々異なる。
序盤は欠乏が生み出すメリットとデメリットについて語る。メリットは恐らく誰しも身に覚えがあるだろう。本書で「集中ボーナス」と呼ばれる物である。人は時間が少なければ残された時間を最大限に使おうとするし、貧乏であれば買うものすべての高い安いを常に意識しながら買い物をするのである。その一方で欠乏にはデメリットもある。本書で「トンネリング」と読んでいるもので、目の前のもの以外に注意が向かなくなる視野狭窄のことである。
著者はこの欠乏が生み出す「集中ボーナス」と「トンネリング」によって世の中の多くのことを説明して行く。ローン地獄から抜け出せない貧しい人々の話がもっともわかりやすい例だろう。
そして、後半は、欠乏のデメリットに対処するための「スラック」の重要性である。「スラック」とは「余裕」というような言葉で表現されるもの。わかりやすい説明として、オフィスで1日の大部分をネットサーフィンを過ごしているアシスタントを挙げている。ここでよくやりがちな間違いは、その人物が1日忙しく働くように業務を割り振る事である。それによって、今までであれば周囲の人間はいざという時にその人物に仕事をふることができたのに、そのような突発的な業務を受け入れる先(つまりスラック)がなくなってしまったため、すべての人の業務が悪循環に陥っていくのである。

人がスラックをつくらないのは、いまやらなくてはならないことに集中し、将来起こりうるあらゆることを十分に考えないからだ。いま現在ははっきりと間近に迫っているが、将来の不足の事態は緊急度が低く、想像するのが難しい。漠然とした将来を目の前にある現在と突き合わせると、スラックはぜいたくに感じられる。

同じくスラックの考えを利用した事例として、30の手術室がフル稼働する病院を例にあげている。30の手術室は常に手術の予定でいっぱいなのだが、急患を受け入れなければならない。しかしそれを受け入れる事によってすべての手術の予定が崩れ、医師たちは深夜まで働く事を余儀なくされるのである。この問題を解決した手法は1つ手術室を常に開けておくこと、つまりスラックを作る事である。
本書を読むと、いつもひまそうにしている会社の事務員も、組織に必要なんだと思えてくる。
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「内村航平 心が折れそうなとき自分を支える言葉」児玉光雄

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
ロンドンオリンピックで金メダルをとった内村航平のこれまでのコメントや家庭環境などから、その考え方を描く。
金メダルを取ってさえ満足しない内村の生き方は、ひたすら自らの理想の演技と求め続けているゆえである。本書では、そんな彼の生き方は普段の仕事にも応用できる、という姿勢で語っている。日々漫然と仕事をこなしている人に何か新たな気付きを与えてくれるかもしれない。
しかし、内村航平の生き方や考え方は好きだが、それを利用してこのような薄い内容の本でお金を稼ごうとする著者は好きになれない。読み終わって気付いたのだが数年前にも「イチロー式集中力 どんな時でも結果が出せる!」という同著者の本を読んでいて、そのときにも同じ事を感じたのだ。著者が実際に、内村浩平やイチローに話を聞いたような記述は一切ないのも残念である。
【楽天ブックス】「内村航平 心が折れそうなとき自分を支える言葉」

「荒神」宮部みゆき

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
東北の山村に怪物が現れ、村を一夜にして壊滅状態する。命からがら逃げ延びた蓑吉(みのきち)は敵対する永津野藩の人々によって助けられる。永津野(ながつの)藩、香山(こうやま)藩という過去の因縁によって敵対しながらも、それぞれが怪物退治に動き始める。
過去には何度も超能力者を扱った物語を書いている宮部みゆきだが、本書の怪物ほど非現実的な描写をしたものは記憶にない。だからこそ、そんな非現実的な存在を取り入れてまで訴えたい何かがあるのだろう、と思いながら読んだ。
物語は永津野(ながつの)藩、香山(こうやま)藩という2つの憎しみあう藩の間で起こる。永津野(ながつの)の曽谷弾正(そやだんじょう)は技術を盗むためにさまざまな口実を設けて香山(こうやま)の人をさらうために、香山(こうやま)の人々から憎まれ、恐れられていたのだ。
曽谷弾正(そやだんじょう)の妹である朱音(あかね)によって、怪物から逃げ延びた蓑吉(みのきち)が救われることから始まる。兄のやり方を嫌って朱音(あかね)は蓑吉(みのきち)を秘密裏に保護し、怪物の存在を知るのである。
また一方で、小日向直弥(こびなたなおや)は香山(こうやま)の政治に巻き込まれ、化け物の正体を見極めるために山を登るのである。永津野(ながつの)藩、香山(こうやま)藩のそれぞれの方向から、怪物に迫るうちに、2つの藩の過去の歴史が明らかになって行く。
物語はもちろんフィクションであるが、関ヶ原の戦いによって憎み合うようになった2つの藩の歴史を読むと、実際の日本にも、歴史の表にはほとんど出てこないような土地に生きた人々は、多くの葛藤や細かいいざこざのなかを生きてきたのだと理解できるかもしれない。教科書からはわからない、過去の日本の一部が見えるような気がする。全体的には最後まで飽きる事なく楽しむ事ができたが、宮部みゆきというだけで最近は期待値が非常に高いので、その期待に応えてくれたとは言い難い。
【楽天ブックス】「荒神」

「インターフェースデザインの心理学 ウェブやアプリに新たな視点をもたらす100の指針」スーザン・ワインチェンク

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
後半はアプリにあまり関係ないような心理的な話も多かったが、それをどう応用するかはデザイナー次第なのだろう。
クリック数はあまり重要ではないということは本書で初めて知った。これからのUIデザインにおいては、「ユーザーを悩ませないこと」こそ優先し、むしろ選択肢を減らして決断しやすくして、選択の回数を増やす(つまりクリック数を増やす)という方向へ進むのが正しいと思った。
「データより物語」とか「目標に近づくほどやる気が出る」とか、いろんな書籍で触れられているような内容や、以前に聞いたことがあるような内容ばかりではあったし、必ずしもインターフェースデザインに関係がなく、むしろ心理学に近いような内容も多く含まれていたが、新鮮でなくても同じ考えに繰り返し注意を向けるという意味では、本書は悪くないと感じた。
【楽天ブックス】「インターフェースデザインの心理学 ウェブやアプリに新たな視点をもたらす100の指針」

「遠い太鼓」村上春樹

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
1986年から1987年までギリシャ、イタリアで過ごした村上春樹がその日々を語る。
3年の間、村上春樹はスペッツェス島、ミコノス、イタリアのシシリー、ローマと住む場所を変え、その場所で生活をしながら執筆活動を行った。そんななか書き続けた日々の記録が本書である。特に何か目的があって書いていたわけではないだろうが、ただの旅行者としてではなく、それぞれの国で生活していたからこそわかる、その国の事情が伝わってくる。
面白かったのは駐車場が作れない構造ゆえに解消しないローマの車事情や、選挙の旅に生まれた土地に戻らなければならないギリシアの選挙事情などである。また本書を通じで、村上春樹はイタリア人の仕事に対する熱意のなさを嘆いている。公務員がしっかり働かないから、イタリア市民は税金を納めないのか、それとも税金が回収できないから給料が安くてみんな働かないのか、最後までわからなかったが、日本のシステムは非常に微妙なバランスの上に成り立っているのだと感じた。
村上春樹はこの3年の間に「ノルウェーの森」「ダンス・ダンス・ダンス」を書き上げている。海外での生活が小説にどのように影響を与えたのか、あまり好きな作家ではないが、本書を読んだことで、ぜひその2作品を読んでみたいと思った。
【楽天ブックス】「遠い太鼓」

「黒い羽」誉田哲也

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
幼い頃から右肩に瑕(きず)のある君島典子(きみじまのりこ)は遺伝子治療を受けることを決意し、軽井沢にある研究施設に向かう。しかしその途中で車が横転し、生き残った4人の患者とスタッフで施設にたどり着くが、そこではさらなる悲劇が待っていた。
瀕死の状態でたどり着いた研究施設では、多くのスタッフ達がすでに惨殺されており、そんななか恐怖と向き合いながら4人で生きようとするという物語。
遺伝子治療という考えも特に新しい概念ではなく、それであれば皮膚の病気に悩む人々の心情描写をリアルに行っているというわけでもなく、全体的にあまり深みを感じられる部分がなく、誉田哲也の最近の本なのが信じられないほどである。
いい作品を書くことができる著者であるだけに、お金儲けのためだけに小説を書くというような著者にはなって欲しくないと思った。
【楽天ブックス】「黒い羽」

「フォルトゥナの瞳」百田尚樹

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
自動車塗装工として働く木山慎一郎(きやましんいちろう)はある日人の体が透けて見えることに気付く。それはその人が近いうちに死ぬ事を示すものだった。人の死が見えることで慎一郎(しんいちろう)の生活は変わって行く。
形こそ、近いうちに死ぬ人がわかる、というものだが、慎一郎(しんいちろう)の苦しみは、世の中に数多くあるタイムトラベルを用いた物語と共通している。未来が見えるゆえに近いうちに死ぬ人がわかり、その人を救いたいのだが、どのように説明すればいいかわからない、というものである。そういう意味では慎一郎(しんいちろう)のその能力ゆえの葛藤は、普段SF物語に触れている人には見慣れたものなのかもしれない。
一方で、家族を幼い頃になくし、天涯孤独で生きていながらも、目の前の仕事に誠実に取り組み、やがて恋に落ちる慎一郎(しんいちろう)の普通の人間としての生き方は尊敬できる。
物語は終盤に向かうにつれて、慎一郎(しんいちろう)は多くの人の死を知り、自らの行動を決断することとなる。
多少は形を変えているものの、よくあるSF物語の焼き直しという印象で、全体的には大きく予想を裏切ることも超える事もなかった。肩の力を抜いて読むにはいいかもしれない。
【楽天ブックス】「フォルトゥナの瞳」

「組織戦略の考え方 企業経営の健全性のために」沼上幹

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
組織というのは大きくなるに従って昨日しなくなって行く。無駄なミーティングに費やす時間が多くなり、忙殺される人がいる一方で、暇な人もいる。本書は組織が陥りがちなこととその改善方法や予防を著者の経験から説明する。
「組織戦略」という言葉からは、むしろ企業などの組織を競合とどのように渡り合って行くか、を描いたような印象を受けたが、本書で描かれているのは、むしろ組織内部が機能するための方法である。
まずは組織を単純なヒエラルキーと捕らえる事から説明する。組織とは、業務をプログラム化し、そのプログラムで対応できない状況のみを管理者・経営者が判断するという形を基本としているのだ。この状況が機能しなくなるのは、例外処理が増えすぎて管理者・経営者が忙殺されてしまうことから起こるのだそうだ。本書はこんな状況に対して5つの解決策を挙げて説明している。

(1)現場従業員の知的能力アップ
(2)情報技術の装備
(3)スタッフの創設
(4)事業部制
(5)水平関係の創設

中盤では、事業部制、職能性、マトリクス組織という3つの代表的な組織構造についてメリットとデメリットを説明している。

事業部制
各事業部の独立性を高めていくのならば、なにもひとつの企業としてまとまっている必要などないはずである。短期的な市場への適応には都合が良いのだが、効率性が低下してしまうといった問題が出て来やすい。

また、マズローの欲求階層説を挙げて、日本の多くの企業が「自己実現欲求」を過信していると語る。

マズローの欲求階層説
(1)生理欲求
(2)安全・安定性欲求
(3)所属・愛情欲求
(4)承認・尊厳欲求
(5)自己実現欲求
何かと言えば自己実現という言葉に酔いしれている会社は、承認・尊厳欲求について深く考える思考を止めてしまっている。承認・尊厳欲求を充足するためには、ポストとカネ以外にも多様な方法があることを考えなくなっていく。

本書の多くは僕自身が過去企業に属していて感じた事を再確認させてくれた。今後組織作りに携わる事が会ったら繰り返し読み直したいと思えるほど内容の濃さを感じた。
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「何を話せばいいのかわからない人のための雑談のルール」松橋良紀

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
雑談が苦手な人というのは意外にも多いようで、本書はそんな人のために雑談を巧くこなすための方法を語っている。
僕自身もどちらかというと合理的な生き方をしている人間なので、「会話は「情報交換」」という意識が強い。そのせいか、共通の趣味を持っている人には聞きたい事が山ほど溢れてくるのだが、初対面の相手には「あまりプライバシーに踏み込んでは失礼」という思いも手伝って、すぐに話す事が尽きる。そんな僕みたいな人間にとって、本書は耳の痛くなるような内容のオンパレードである。

雑談を好まないという方は、人との関わりを避けているとも言えます。というのも、雑談をしないということには、あるメッセージを相手に与えている可能性があります。
「あなたとは深く付き合いたくない。損得だけの関係にしたいんです。」
目的や目標など、雑談には必要ありません。あるとすれば、相手と親密さを深めるということだけなのです。

後半は、よく言われるオープンクエスチョンや、話し相手を4つのタイプ(視覚タイプ、聴覚タイプ、体感覚タイプ、理論タイプ)に分類して会話を組み立てる方法など、実践してみたいと思う内容がいくつか含まれていた。話を掘り下げるチャンクダウンや漠然とした方向へ展開するチャンクアップなども、意識して会話に臨んでみると面白いかもしれない。
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「まっすぐ進め」石持浅海

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
川端直幸(かわばたなおゆき)が書店で遭遇した美しい女性は腕にふたつの腕時計をしていた。
本書は、直幸(なおゆき)が書店で出会った女性の謎を解く事から始まる。腕時計を2つしていたその女性、高野秋(たかのあき)は過去の辛い出来事ゆえにそのような行動をとっていたのである。そんな過去の重荷を背負った高野秋(たかのあき)はその複雑な心に気付いた直幸(なおゆき)とともに人生を歩もうと考え始める。
共に行動することが多くなった直幸(なおゆき)と高野秋(たかのあき)であるが、物語は終盤に進むにつれ、秋(あき)に起こった悲しい出来事の真実が明らかになって行く。心を開き始めた秋(あき)とそれに答えようとする直幸(なおゆき)の関係が温かい。
日常的なことのなかに、登場人物たちが推理を繰り返す石持浅海の世界観が今回も全快である。どちらかというと殺人絡みなのだが、本書は直幸(なおゆき)と秋(あき)の恋愛を中心に展開される点が新鮮である。
小さな謎と深い推理を楽しみ、読後は温かい気持ちに慣れるのではないだろうか。
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「ウツボカズラの甘い息」柚木裕子

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2人の小学生の子供を持つ文絵(ふみえ)はお洒落に気を使う事もなくなっていた。しかしある日中学生時代の同級生加奈子(かなこ)に出会い、化粧品販売の仕事をすることになる。
また、鎌倉の別荘で起きた殺人事件を解決するため、神奈川県警の秦(はた)は若い女性刑事菜月(なつき)とコンビを組んで捜査をする。女性とコンビを組むことに対する秦(はた)の懸念や未だ男性社会である警察組織の描き方が興味深い。菜月(なつき)が能力の高い刑事として描かれているので、このコンビはむしろ別の物語で見てみたいと思った。
殺人現場で目撃されたサングラスの女は、文絵(ふみえ)に化粧品販売の仕事を持ちかけた加奈子(かなこ)と見られ、この女性の足取りを追う事が捜査の方針となる。
最後は予想を裏切る部分はあったものの、それでも全体的には、読み終わったら数日で記憶から消えてしまうようなよくある警察小説の1つに終わってしまっている点が残念である。
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