「ノンデザイナーズ・タイプブック」Robin Williams

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
非デザイナー向けのデザイン書籍として有名なノンデザイナーズ・デザインブックのタイプ版である。正直、「ノンデザイナーズ」と謳っているわりには内容はデザイナーでも知らない人が多いのではないかというような内容で、むしろフォントや文字組をしっかり勉強してこなかったデザイナーこそ読むべき内容である。

常日頃書体には興味を持っているので知っている内容も多かったが、初めて知ったこともあった。

Garamondは優れた書体だが、小さい表示にはCaslonやTimesのほうが適していること。

短い行の長さの時に両端揃えを使うのは避けた方がよく、両端揃えにするためには活字サイズのポイント数の2倍の数のパイカ以上にすべきだということ。(つまり12pointの文字なら両端揃えにするために24パイカの行の長さが必要。)

日本語訳とはいえ内容は英語の文字組みに関することなので、日本のデザイナーにとってどこまで役にたつかわからないが、デザイナーとして知っておいて損はないだろう。

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「君と漕ぐ ながとろ高校カヌー部」武田彩乃

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
家庭の都合で埼玉県の田舎に引っ越した舞奈(まいな)が、川でカヌーをしている恵梨香(えりか)に出会い、高校のカヌー部に入部することを決意することから始まるカヌーを題材とした青春物語。

カヌーを題材とした物語というのに今まで触れたことがなかったので興味を持った。僕自身スキューバダイビングやパラグライダーなどの自然を相手にしたスポーツは体験したことがあり、そこにはほかのスポーツにはない魅力を感じる。忙しくなるとなかなかできなくなるが物語としてだけでも体験できるのはありがたい。

話の流れ自体は、マラソンやボクシングなどのスポーツを題材とした、よくある高校生の青春物語と特に大きな変わりはない。つまりスポーツに出会った初心者の主人公が少しずつその世界に入れ込んでいる様子を描いている。本書の魅力は繰り返しになるがそれがカヌーだということである。

物語は、舞奈(まいな)視点と、カヌー部を創設した、2年生の希衣(きい)視点が交互に進んでいく。少しずつカヌーにのめり込んでいく舞奈(まいな)と、地元の期待を背負いながらも少しずつ思うような成績をあげられなくなってきた希衣(きい)と千帆(ちほ)の葛藤を描く。そんな希衣(きい)と千帆(ちほ)の元に、恵梨香(えりか)という大きな才能が現れたことで少しずつながとろカヌー部は動いていくのである。

まだまだ続編がありそうな流れである。大きな学びがあるわけではないが、ときどき触れたい気分がすっきりするような雰囲気の小説である。なんてったってカヌーのような自然を相手にしたスポーツをやりたくさせてくれる。

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「ほったらかしFX」投資家 学くん

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
FXにおけるスワップ収入のメリットを語る。実際著者は半年間のスワップだけで100万円以上の利益を得たというのである。(ただし著者は540万円を投資していたというから、一般の人にとってはそう気軽にまねできる話ではない。)

かれこれFXの投資を始めて3年ほどになるが、今のところ毎年100万以上の利益をだしており、その投資方法が比較的ほったらかしだったため、その投資方法の精度を磨きたいと思って本書にたどりついた。

著者はスワップポイントによる利益がFXの魅力としており、なかでもユーロドル売りとポンドドル売りをスワップポイントの高さゆえに進めている。

残念ながらすぐにスワップポイント表を調べてみたが、どうやら著者が本書を書いた時とはかなりスワップポイントが変わっているようだ。本書をあまりに鵜呑みにしないように気をつけた方がいいだろう。

あまり今までスワップポイントを意識してこなかったが、スワップポイントに目を向けるきっかけになった。今回オンラインでのみ読むことのできる書籍を始めて購入してみたが、予想以上の内容の薄さ、ページ数の薄さに驚いてしまった。

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「オブジェクト指向UIデザイン 使いやすいソフトウェアの原理」ソシオメディア株式会社、上野学、藤井幸多

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
オブジェクト指向UIデザインという、世の中のアプリケーションを使いやすくする手法を紹介している。オブジェクト指向に対して、世の中のタスクを中心に設計されたアプリケーションをタスク指向と呼び、業務系アプリケーションに多い、タスク指向のソフトウェアを、オブジェクト指向へ作り変えるための考え方を、多数のワークショップを交えて説明している。

確かに業務系のアプリケーションであればまだまだタスク指向のものも多いのかもしれないが、一般的なUIデザイナーならば自然とオブジェクト指向でアプリを作るのが自然であり、内容自体に特に目新しさは感じなかった。オブジェクト指向UIデザインという新しいデザイン用語を生み出して、読みにくいほど文字量を多くして語っている割には、デザイン初心者向けの内容に違和感に感じ、本書自体のターゲットがしっかり定まっていないか印象を受けた。ただ、「タスク指向」「オブジェクト指向」という言葉でアプリを語りはじめたことは、デザインの言語化において一つの功績と言えるだろう。

中盤はひたすら、世の中のタスク指向アプリケーションをオブジェクト指向へと作り変えるワークショップが並んでおり、内容の薄うさを感じた。もっとページ数も減らせたし面白い内容にできただろう。デザインを語りながら本書のように内容の構成にデザイン力が行かせていない本は残念である。

印象的だったのはオブジェクト指向よりもむしろ最後の最後に触れられていた、モードとモードレスという考え方である。モードがなければアプリは使いやすいとして、一つの例として、パワーポイントの図形ツールと、Keynoteの図形ツールの違いを語っている。モードレスという考え方は今までなんとなくしか持っていなかったので、しっかり意識していきたいと思った。

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「ガッツリ稼いで図太く生き残る!FX」水上紀行

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
1980年代からインターバンク市場の為替ディーラーとして活躍した著者がFXについて語る。序盤こそFXの説明だったが、途中からは為替ディーラー同士の駆け引きや、為替ディーラー時代の思い出などが焦点となってしまった。それはそれで興味深く読ませてもらったが、それがFXの個人投資にどれだけ役立つかというとほとんどないだろう。また、取引に関しては、デイトレードやスキャルピングトレードなど短期のやりとりを中心に書いているので、長期でFXを考えている人にはあまり役に立たないのではないだろうか。

本書で個人のFXトレーダーに役立ちそうに感じたことは、トレンド相場とレンジ相場の違い、レンジ相場の3つのステージでであるが、こちらもデイトレーダー向けの内容である。長期のトレーダーに役立ちそうなことは第3章の「相場シーズンの違いをふまえる」である。シーズンによってある程度傾向があるのだという。

6月末の欧米金融機関の中間決算は、1年の中でも相場に別格の影響を与えるイベントのひとつです
10月15日前後には、ファンドの45日ルールに絡んだ値動きがある

この2つの時期はしっかり頭に叩き込んでおきたいと思った。この時期の前に利益を確定しておく方がいいのだろう。

為替ディーラーの仕事に興味がある人は楽しめると思うが、個人投資家向けのFXの情報としてはかなりの上級者向けの内容となっている。

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「インターフェースデザインのお約束」Will Grant


オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
世の中のインターフェースデザインの良くないところをあげて、より良いUIを提案するシリーズの一冊である。タイトルが「インターフェースデザインの心理学」から「お約束」になったからといって特に構成に大きな違いはない。デザイナーであれば、著者がどのようなUIに憤りを感じるかを、なんとなく知っておくだけでも今後妙なUIを作らないためにも役立つのではないだろうか。

今回印象に残ったもの、知らなかったもの、または普段あまり意識をしていなかったものとしては次の項目である。

まだ先があることは省略記号で表せ

英語ページではlog inではなくsign inを使え

英語ページではregisterよりsign upのほうがしっくり来る

無限スクロールはフィードコンテンツ限定に

「既存ファイルを複製して編集」のフローを用意せよ

UI要素を必須、容易、可能の3種類に分けよ

「まだ先があることは省略記号で表せ」はわかりにくいが、メニューなどの表記の仕方の話で、例えば「保存」というメニューがあった時にそのメニューを選択するとすぐに保存が実行される場合は「保存」として、選択した後に別のウィンドウ(例えば、ファイル名を入力させるウィンドウ)などが表示され保存までに別のステップがある場合は「保存…」と表記することを言っている。これは今回初めて知ったのだが、たしかにMacのメニューにもそのような表記が使われているのである。

例によって、実装の工数は一切考えずに言いたいことを言っているので、すべてを簡単にできるとは言い難いが、記憶にとどめておいて、改善できるところは改善していきたいと感じた。

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「超一流の雑談力」安田正

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
雑談をあらゆる人間関係の入り口と説明し、その手法を語っている。雑談の始め方、話題の選び方、聞き方などをそれぞれ詳細に説明している。

多くの男性がそうであるように、僕自身はあまり沈黙が苦にならないのだが、一緒にいる相手がときどき気詰まりに感じているような気配は感じたりする。どこかで雑談は人間関係を円滑にするための手段、という話を耳にし、多少なりとも技術を磨いておけたらと感じ、本書にたどり着いた。

印象に残ったのは、聞き方の説明で、本書では

なるほどですね、そうですね、は「話を聞いていない人」の反応

と切り捨てており。理想のあいづちの「さしすせそ」をあげている

さ さすがですね。
し 知らなかったです。
す 素敵ですね
せ センスがいいですね。
そ それはすごいですね。

また、話し手が自然と話し出してしまう質問として、

何か特別なことをされているんですか?

もあげている。

どれも今日から実現できそうなことばかりである。

最後の章では人間のタイプ別の雑談の進め方を説明しており、すでに雑談力に自信のある人はぜひ使いこなしてもらいたい。全体的に非常にわかりやすくまとまっており、今日からやってみたいと思える内容があふれていた。。

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「東の海神 西の滄海」小野不由美

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
十二国記の第4弾、東の(えん)の国の物語。

長い間前王の元で圧政に苦しんだ雁の国に、新しい王として期待されながらも、政務をほったらかしの尚隆(しょうりゅう)とその周囲の人々を描く。そんななか、東の(えん)の国の麒麟である六太(ろくた)が東の(えん)の国の州である元州に誘拐される。元州の反乱を抑え込もうとするなかで、すこしずつ、六太と尚隆(しょうりゅう)が王になるまでが明らかになる。

序盤は状況が見えずに読みにくかったが中盤以降は一気に読むことができた。ファンタジーにも関わらず、日本の歴史とも関連づけられていて、事実に基づいた歴史小説を読んでいるような印象を受けた。

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「劇場化社会 誰もが主役になれる時代で頭角を現す方法」櫻井秀勲

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
80歳を超えて、今もなお複数のオンラインサロンを運営する著者が現代において「舞台に上がる」ことの重要性を語る。

オンラインサロンの運営方法が知りたくて、オンラインサロンの運営者である著者の本書に出会った。

とりとめもなく、著者の思うところを書いているが、いいたいのは「舞台に上がる」、つまり僕の理解したところでは、会社などの後ろ盾を持たずに自分自身で表に出て勝負するということである。100年時代の現代、一つの会社で一生を終えることももはやなくなり、一つの職種だけで生きていくことも難しくなる中で、自分の技術だけでなく、どのようじ自分を売っていくかが重要だと説明している。

たしかに、自分の経験からも感じることだが、技術力だけで年収1000万円を超えるのは、一部の有名企業に所属している人を除いては非常に難しく、持っている技術だけの価値では不十分で、どのようにして人間としての価値をわかってくれる人を増やすかが鍵だと感じる。

オンラインサロンなどのを作ってみたいと感じたし、なによりも80歳を超えてなおエネルギッシュに活動し、このような現代的な考え方ができる著者におどろかされた。

【楽天ブックス】「劇場化社会 誰もが主役になれる時代で頭角を現す方法」

「盤上の向日葵」柚月裕子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
埼玉で発見された男性の遺体は高価な将棋の駒とともに見つかった。かつて奨励会で棋士を目指していた刑事の佐野(さの)は将棋に詳しいが故に、石破(いしば)と組んで、将棋の駒の持ち主をたどることなる。

佐野と石破の将棋の駒の行方を追っていく様子と並行して、長野の諏訪湖のほとりで暮らす将棋の愛好家唐沢(からさわ)が、近所に住む少年上条桂介(かみじょうけいすけ)に将棋を教える様子が描かれる。恵まれない家庭に育った、上条桂介(かみじょうけいすけ)が、将棋を学びながら成長していく様子が描かれる。

貴重な将棋の駒が、なぜ遺体とともに発見されたのか、そして、上条桂介(かみじょうけいすけ)がどのように事件と関わっていたのかが、物語が進むにつれ明らかになっていく。

将棋の駒の魅力や、真剣師という生き方が描かれている。誰もが知っている日本の文化である将棋というものに、もう一度目を向けてみたくなる一冊。

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「40代ご無沙汰女子の、残念な婚活」浅見悦子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
40代女性の著者が実際に婚活した経験を語る。

婚活が少しずつ習慣になっていき、最初は男性とデートすることすら億劫だった著者が何度となく繰り返すうちに、「とりあえずデートの練習」という姿勢で積極的に人と会おうとする様子は、今婚活に悩んでいる人々に元気を与えるのではないだろうか。やがて、婚活パーティだけでなく婚活アプリにまで活動を広げていき、それぞれのデートの様子や相手の人の振る舞いを細かく書いている。

婚活する多くの人が経験するであろう態度、つまり、「自分のことを棚に上げて相手の嫌なところばかりに目がいってしまう」は、本書でも同様で、反面教師としていろいろ学ぶ部分はあるだろう。

僕自身婚活経験があり、一般的には几帳面な男である。そんな一人の男性の視点で見ると、著者が婚活で出会う男性たちの振る舞いを知ると、こんなにも世の中の男性は時間を守らなかったり、捨て台詞と吐いたりするのか、と唖然としてしまう。確かに、お金とエネルギーをかけて婚活した結果、こんな男性ばっかりだったら婚活疲れもするだろうなと思った。

婚活しているということをオープンにしてから、様々な誘いが舞い込んできた、という著者の経験談は非常に参考になる。何かをしようと思ったら一人でもくもくとやるよりも、公言することでいろんないい波を呼び込めるのだろう。

著者の理想の結婚像なども触れており、もっと薄っぺらな婚活本を想像していたが、予想以上に深かった。最後に著者が箇条書きでまとめている「婚活をやってわかったこと」だけでもぜひ婚活に悩んでいる人たちに読んでもらいたい。

うまくいかなくても自分を責めない。相手とご縁がなかったと思うこと
いろんな男性とデートをしたり会ったりすると、本当に好みな男性のタイプが明確になる
NGばかり並べちゃダメ。相手のいいところを見つければ、NGを凌駕することもある

結婚している人も、自分には無関係と思わないでほしい。本書の考えが適用できるのは婚活だけではなく、転職や引っ越しなど自分にあった場所や人を見つけるときにすべてに言えることである。

【楽天ブックス】「40代ご無沙汰女子の、残念な婚活」

「盤上に散る」塩田武士

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
なくなった母の持ち物を整理していた明日香(あすか)は母から林鋭生(はやしえいせい)という男に宛てられた手紙と林鋭生(はやしえいせい)に関する新聞記事を見つける。母の手紙をを届けるために林鋭生(はやしえいせい)という男を探すことにし、やがて林鋭生(はやしえいせい)は賭け将棋で生きる真剣師であることを知る。

明日香はやがて、同じく林鋭生(はやしえいせい)を探すリーゼントの男性達也(たつや)と行動を共にすることとなる。いろんな将棋関係者に話を聞きながら、林鋭生(はやしえいせい)に近づいていく。そして、達也を使って鋭生(えいせい)を探す刑事の市松(いちまつ)もまた、鋭生(えいせい)を見つけなければならない深い理由を抱えており、少しずつ真実の明らかになっていく。

真剣師という生き方や、将棋の駒も作りがすごければ芸術となることを本書を読んで初めて知った。登場人物が多くて途中やや中だるみするが、謎が溶けていく後半は一気に読ませてくれる。真剣師という、プロの世界とはまた違った世界で将棋に命をかける人々を描いた作品。将棋がやりたくなっただけでなく、将棋の駒という芸術に関心を関心を抱かせてくれた。

著者塩田武士は本作品で初めて触れたが、どうやらほかにも将棋を題材とした作品を書いているようだ。ぜひ他の作品も呼んてみたいと思った。

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「淳子のてっぺん」唯川恵

オススメ度 ★★★★☆ 4/5

子供の頃山登りが好きだった少女淳子(じゅんこ)が、やがて大学生、社会人となって思うようにいかない人生に嫌気がさしていたとき、ふたたび山登りに心身ともに救われる。それからというもの登山が生きがいになり、少しずつ登る山も高くなっていく。そんな淳子の挑戦を描く。

どうやら本書の主人公である淳子は、実在する人物田部井淳子をモデルにしているらしい。唯川恵というと、どちらかというと女性向けの恋愛小説というイメージがあったが、今回はそんなイメージを覆すような、実話に基づいた女性のすばらしい生き方をを描いている。

社会人になったあとの淳子は、それまで男性ばかりだった登山という文化の中で、女性だけの登山隊の実現をしようとして、女性だけの登山隊を組んでアンナプルナやエベレストといった世界最高峰へと挑戦していくのである。今更ではあるが、そもそもエベレストのような高い山にどのように挑戦するかを本書を読むまで知らなかった。ただ一直線に頂上を目指して登るのではなく、集団で、途中となんども行き来して荷物や食料をはこびながら少しずつキャンプの位置を上げていくのである。そして、最後の頂上アタックは、そのとき体調のいい人だけが決行する。という流れをとるのである。

海外に行くだけで膨大な費用が必要だった1970年代ゆえに、現地までいきながら頂上へ挑戦できなかった女性たちの憤慨は理解できるし、女性ゆえにその感情を表に出さないわけにはいかず、その結果、集団としては頭頂という目的を達成しながらも、やるせない気持ちで帰国せざるを得ないことは、本書を読まなければわからなかっただろう。

ただ単に、山登りの良い面だけでなく、人間同士の葛藤なども読み取れるのがいいところだろう。決して、命をかけて登山をしたいとは思わないが、エベレストやアンナプルナ、アイガー、マッターホルンといった有名な山々についてもっと知りたくなった。

【楽天ブックス】「淳子のてっぺん」

「この世の春」宮部みゆき

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
宝永7年(1710年)の初夏、各務多紀(かがみたき)と父各務で暮らしている家のもとに、ある晩、御用人となった伊藤成孝(いとうなりたか)の嫡男をかかえた女が駆け込んできた。自分の家が御用人である伊藤成孝(いとうなりたか)とどのようなつながりを持っているのか。そんな疑問を持つた多紀は少しずつ藩内の権力争いの秘密に関わることになる。

北見藩というのは架空の名前で下野内にある架空の藩を舞台としている。江戸時代を描いた多くの物語は、徳川家や江戸を扱ったものばかりのため、このように地方を舞台としたものは珍しく、当時の人々の様子を知ることができる。

やがて父の死を機に、多紀は北見家の別邸である五香苑へと連れられていく。そこには自害したはずの伊藤成孝(いとうなりたか)と元藩主である北見重興(きたみしげおき)が匿われていたのである。北見重興(きたみしげおき)は藩主の座を追われたのは、複数の人格を持っていたためである。多紀たちは重興(しげおき)のその病気の謎を解明を試み、やがて北見家にまつわるおおきな影と向き合うこととなる。

江戸の時代を扱ったものではあるが、人々の悩みや葛藤、立場の違いによる考え方の違いなど宮部みゆきらしい描写力で、現代の人々のようなリアルさを感じる。歴史の物語のなかでしか触れることのないような過去の話でも、人はいつも一生懸命悩みながら生きているのだと伝わってくる。

【楽天ブックス】「この世の春(上)」「この世の春(中)」「この世の春(下)」

「蜜蜂と遠雷」恩田陸

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第156回直木三十五賞、2017年本屋大賞受賞作品。

ピアノコンクールに集まったピアニストたちの様子を描いている。

マラソン大会だけを描いて1冊を終える「夜のピクニック」も驚きだったが、本作品も、数日間にわたって行われるピアノコンクールのみを扱っており、その前後の物語はほとんどない。参加者の視点、審査員の視点、参加者の妻や友達の視点に切り替わりながら、文庫本にして2冊の量を読者を飽きさせずに読ませ続ける。それぐらいピアノコンクールという多くの人にとって未知なイベントを、ドラマチックに仕上げているのである。

物語は、ピアノに情熱を注ぐ4人の人を中心に描いている。かつては天才少女として活躍したにもかかわらずピアノをやめていた栄伝亜夜(えいでんあや)20歳、サラリーマンの高島明石(たかしまあかし)28歳、優勝候補のマサル19歳、自宅にピアノを持っていないという異色の環境の風間塵(かざまじん)16歳である。

1次予選、2次予選、3次予選とコンクールは進み、少しずつ調子をあげていく人もいれば、緊張で実力を発揮できない人もいる。間違いなくシビアな世界で、多くの人が報われずに終わるとわかっていても、そんな舞台に出て戦うことを選んだ人生を羨ましくも感じてしまう。

音楽を奏でるということをやってこなかった読者にも、音楽を奏でることの魅力が十分に伝わってくる。きっと多くの人が本書を読んだ後に、その音楽を聴こうとYouTubeを彷徨うだろう。直木賞、本屋大賞のダブル受賞も納得の一冊。

【楽天ブックス】「蜜蜂と遠雷(上)」「蜜蜂と遠雷(下)」

「みかづき」森絵都

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
昭和36年、小学校の用務員室で勉強についていけない子供達に勉強を教えていた大島吾郎(おおしまごろう)の元へ、生徒の母、赤坂千明(あかさかちあき)がやってくる。学習塾を一緒に作るためであった。戦後から平成まで、千葉で始まった学習塾の物語である。

物語は、大島吾郎(おおしまごろう)が赤坂千明(あかさかちあき)立ち上げた八千代塾が、時代の波に乗って大きくなる様子。そして、大島家の
家族の様子が描かれている。教え方や、補習塾と進学塾の方針の争い、学習塾の生き残りをかけたいやがらせ工作や合併など、今まで漠然としか知らなかった塾業界の様子がよくわかるだろう。

今でこそ学習塾の存在は当たり前で、むしろ塾に行ってない人のほうが珍しい時代だが、昭和30年代40年代は、塾に行っている生徒は白い目で見られたという、それが少しずつ変化し、平成に入ると塾に通ってない生徒の方が珍しい存在となっていく。また一方で、企業としての塾と、行政としての教育委員会の関係も少しずつ変化していくのである。

本書では、教育は常にどこかが足りないと感じながらも、それを補おうと努力するぐらいがちょうどいいと言っている。

欠けている自覚があればこそ、人は満ちよう、満ちようと研鑽を積むものかもしれない

描かれている時代も長く、登場人物も多く読み応えがある。教育に関心がある人にはぜひ読んでほしい一冊である。

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「風の海 迷宮の岸」小野不由美

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
十二国記の戴(たい)の国の麒麟として生まれながらも、天変地異に巻き込まれ、日本で普通の男の子として生活していた泰麒(たいき)が、十二国に帰還し、すこしずつ麒麟としての生活に慣れ、力を発揮していく様子を描いている。

ここまで「魔性の子」「月の影 影の海」を読んでいる中で、少しずつ見えてきた十二国の仕組みが、今回は、麒麟という種族の目線で明らかになっていく。十二国における麒麟の役割とは、それぞれの国の王を選ぶことである。泰麒(たいき)は戴の国の麒麟なので戴王を決めることがその役割である。自らの能力に疑問を持ちながらも、王を選ぶという大きな役割の前に葛藤する様子が描かれる。

少しずつ十二国のドラマが本編に入っていく感じを受けるが、まだまだ、「十二国記」全体の感想を語るには早すぎるようだ。続けて読み進めていきたい。

【楽天ブックス】「風の海 迷宮の岸」

「簡単だけど、すごく良くなる77のルール デザイン力の基本」ウジトモコ

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5

デザイナーの著者がいいデザインをするためのルールを説明する。

僕自身も20年以上デザイナーとして生きている人間なので、本書に書いてあることの多くが、毎日取り組んでいる考え方ばかりである。しあし、それでも改めて「この考え方は重要だ」と再認識したことや、今まで考えてもいなかったこと、無意識に実践していたことを言語化した表現に出会うことができた。

「良い」「悪い」≠「好き」「嫌い」
共感するから心が動く

デザイナー向けというよりも、いいプレゼン資料を作りたいビジネスマンや、デザイナーと関わる非デザイナーのための本であるが、デザイナーが読んでも、新たな気づきがあるだろう。

【楽天ブックス】「簡単だけど、すごく良くなる77のルール デザイン力の基本」

「サードドア 精神的資産の増やし方」アレックス・バナヤン

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ビル・ゲイツやスピルバーグ、レディ・ガガはどのようにしてその偉大なるキャリアの最初の一歩を踏み出したのか、そんな成功者の最初の一歩を本としてまとめることを思い立った著者は行動を始める。そんな著者の悪戦苦闘しながらインタビューを繰り返す様子を描いている。

ウォーレンバフェットやビル・ゲイツに話を聞くためになんども断られながらも少しずつ、著名人の間で人脈を築いていく様子が描かれており、何事もくじけずに分析し戦略を練って行えば少しずつ実現できるのだと伝わってくる。その過程で、ビル・ゲイツやレディ・ガガ、ジェシカ・アルバやウォーレン・バフェットなどの人柄も見えてくる点も面白い。

なかなか本書のどこが役に立つとは言えないが、諦めずにしつこくメールを送り続けて失敗した話もあるので、よく言われがちな「なにごとも諦めなければ達成できる」という形ではない。人脈をつくるために戦略を練ることも重要だし、一つの方法に固執することもなく考え付く限り多くの場所に種をまき、芽が出たところを攻めるという方法も効果的だということがわかる。

企業や組織だと「広報」という仕事があるが、個人で人脈を広げることに今まで意識をしてこなかったので、これを機会にできることをやってみたいと思った。

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「人は見た目が9割「超」実践編」竹内一郎

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
「人は見た目が9割」の著者が、「人は見た目が9割」に書けなかったことなどをまとめている。

実はあの有名な「人は見た目が9割」を読んだことがなく、ふとした機械から読んでみようと思い立って探したところ、同じ著者の本書にたどり着いた。

「人は中身の方がずっと大切でしょう?」という反論をさせるための若干挑戦的なタイトルではあるが、多くの人は見た目の重要性を知っていることだろう。美しい人に魅力を感じたり、第一印象で人を判断しているからだ。したがって、本書の内容もそのような見た目の重要性を語る内容だと予想していたのだが、実際はそこからさらにもう一歩深い内容だった。

とりとめもなく著者が考えていることを小さな章に分けて書いているので、読みやすくはないかもしれないが、印象的だったのは

「整形手術と痛々しい中年」「共働きと子供の表情」の章である。

「整形手術と痛々しい中年」では、若いころに美人だったりイケメンだったがゆえに、中年になってもそんな表面的な美しさにしがみついている人々を嘆き、むしろ生き方や表情、立ち振る舞いといった見た目を人生をかけて磨いていくべきだと説いている。

私は自分の“見た目”を30年かけて磨こうではないか、といいたいのである。

「共働きと子供の表情」では、共働きで母親も仕事に忙しくなり、子供にたくさんの表情を見せる機会が少なくなることで、少しずつ子供の表情も失われているのだと、警告している。

「子供によい表情を見せる」という心がけは、つまるところ“余裕”のなせる業である。

ぜひ、今後常に意識していきたいと思った。

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