「Yコンビネーター シリコンバレー最強のスタートアップ養成スクール」ランダル・ストロス

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
生まれて間もないスタートアップの創業者たちを支援するベンチャーファンド、Yコンビネーターのその日々の様子を描く。

Yコンビネーターという言葉は、エアビーアンドビーなどこれまでいくつかの企業の成功物語の中で目にしてきたが、実際にどのようなことをやっているのかを知りたくて本書を手に取った。

Yコンビネーターの主な活動は、創業者たちを集めて行う3ヶ月のブートキャンプである。本書はそんなブートキャンプの様子に焦点を当てている。その過程で多くの生まれて間もない企業を紹介している。

スタートアップを始める人というのは、やりたいことや、世の中の改善したいことがあったうえで、それを実現するためにスタートアップを始めるのだと思っていたが、実際に本書において、3ヶ月のブートキャンプの創業者たちの様子を知ると、実際にはただスタートアップを始めたくて始めている人の方が多く、何をやるかはあとから出てくることの方が多いことを知った。そんな創業者たちは、利益を上げそうなことや、自分たちの知識を活かせそうなことは手当たり次第手をつけていく印象を受けた。

最後に印象に残ったのはYコンビネーターの創業者、ポール・グレアムがシリコンバレーについて語る言葉である。

ヨーロッパやその他の場所では、人々が大胆さに欠けるということではなく、手本に欠けていることが問題なのだ。

すでにアメリカではYコンビネーター以外にも、スタートアップを支援する企業が多く立ち上がっているというし、アメリカ以外の国の中にも同じような動きはおきているという。日本にもこのような動きがあってもいいのではないかと感じた。また、同時に、スタートアップを始めたくなった。

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「月の満ち欠け」佐藤正午

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第167回直木賞受賞作品。妻と娘の瑠璃の3人家族で生活していた小山内(おさない)だったが、瑠璃(るり)が7歳になった時、妻の梢か(こずえ)から瑠璃(るり)が教えたこともない言葉や古い歌を歌っていると知らされる。生まれ変わっても人は前世の記憶を持っているのか、そんな小山内(おさない)が遭遇する瑠璃(るり)との物語。

前世からの生まれ変わり、というテーマで描いたミステリーということで、特に素材時代新鮮というわけではないが、瑠璃(るり)という共通の名前を持つ女性たちと、その周囲で不思議な体験をした人を中心に物語を展開する点が新しい。ありきたりな素材でも、調理方法でいくらでも面白くなることの好例と言えるだろう。

物語を読みながら、実際自分がこのような不可思議な体験をしたらどのように行動するだろうか。そんなことを考えてしまうだろう。

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「ジョブ理論」クレイトン・M・クリステンセン

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
成功する企業になる為にはプロダクトではなくユーザーが解決しようとするジョブにフォーカスすべきだとして、その考え方を説明する。

まず、ジョブを見極める方法として次の5つの項目を挙げている

1.その人がなし遂げようとしている進歩は何か。
2.苦心している状況は何か。
3.進歩をなし遂げるのを阻む障害物は何か。
4.不完全な解決策で我慢し、埋め合わせの行動をとっていないか。
5.その人にとって、よりよい解決策をもたらす品質の定義は何か、また、そん解決策のために引き換えにしてもいいと思うものは何か。

そして、未解決なジョブを見つけるための方法として次の5つを挙げている。

1.生活に身近なジョブを探す
2.無消費と競争する
3.間に合わせの対処術
4.できれば避けたいこと
5.意外な使われ方

これから何か新しい製品やサービスを考えようとしている人は参考にするといいだろう。ここまでがジョブの見つけ方や見極め方であるが、本書ではそれに加えて前後の文脈や、感情面へも配慮を怠らないことが大切としている。

また、ジョブについて説明する過程で、ジョブを解決した実例をいくつか紹介している。ウーバーやP&Gなど、すでに知っている企業の例もあれば、アメリカンガールや、マイヨークリニックなど本書を通じて初めて知った企業もあり、どれも興味深かった。アメリカンガールや、マイヨークリニックなどは日本で実現しても同じようにこれまで未解決のジョブを解決し成功を収めるのではないかと感じた。

ジョブを中心に製品を開発し企業も、その多くが一度製品を世の中に送り出すと、ジョブ中心の考え方からプロダクト中心の考え方に陥っていくのだという。後半では、その理由を大きく3つに分けて説明している

1.能動的データと受動的データの誤謬
2.見かけ上の成長の誤謬
3.確証データの誤謬

どれも言葉だけでは伝わりづらいが、能動的データと受動的データの誤謬とは、最初はジョブにフォーカスするという受動的なデータ、つまり今見えているデータをみてそれを解決する為に製品を考え始めたのに、製品を世の中に出すと、売り上げやユーザー数やユーザー属性など、製品を世の中に出したことによって得ることができた能動的なデータを改善することに意識を取られてしまうということである。見かけ上の成長の誤謬とは、既存顧客に製品をもっと売ろうとしてジョブへのフォーカスを失うことである。そして、確証データの誤謬とは、人間は自分がみたいと思うデータ以外を無視する傾向によって発生する事実誤認のことである。

どれも身に覚えのあることだけにしっかり意識して今後製品開発やサービスローンチに携わっていきたいと思った。そのほかにも、セオドア・レビットやピーター・ドラッカーの有名な言葉をたびたび引用している

人は刃の直径が4分の1のドリルが欲しいのではない。4分の1の穴が欲しいのだ。
企業が売れると思ったものを顧客が購入することはめったにない。

また、最後でジョブを嗜好やほかのものと混在しないように指摘をしている。

同種のプロダクトでしか解決できないのならそれはジョブではない。

「理論」というだけあって、様々な状況に適用できるように考えて構成していることがわかる。本書に書かれている内容をしっかり理解して、実戦で活かせるように身につけておきたいと思った。

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「コンビニ人間」村田沙耶香

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第155回芥川賞受賞作品。コンビニの開店から18年間務める古倉(ふるくら)はコンビニで働くことが生き甲斐であり、そのほかの仕事は一切できない。家族に心配されながらも今日もそのコンビニ人生は始まる。

コンビニで18年働いてきただけあってコンビニの様子が細かく描かれている。一度は普通に就職しようとした古倉(ふるくら)だが、今は諦めてコンビニ生活を送っており、コンビニで働くために体調を整えることまでやっている。親や妹に心配されながらもコンビニ店員として生きていく古倉(ふるくら)だが白羽(しらは)という世の中を卑下する社会人がアルバイトに入ったことから少しずつ人生は変わり始める。

世の中は、普通に働いて普通に結婚しないと奇異の目でみられる。そんな思いをなんども経験した古倉(ふるくら)だが、コンビニのアルバイトという人間関係の中でさえも、適応できない人間ははじき出されることを目にする。社会の縮図としてコンビニを描いているようだ。

芥川賞受賞作品ということで、そこまで作家の技術や、内容の濃さは感じないが、それなりに楽しくよませてもらった。なによりもコンパクトにまとまっている点がいい。

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「愛なき世界」三浦しをん

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
大学近くの定食屋で働く藤丸(ふじまる)は、配達を始めたことで大学の研究者たちと仲良くなっていく。そこには植物に情熱を注ぐ研究者たちの世界があった。

研究室へのランチの宅配を繰り返すうちに、藤丸(藤丸)はそこでの研究内容と、それをやさしく説明する女性研究員本村(もとむら)に恋心を抱いていく。最初こそ、定食屋の藤丸(藤丸)目線で描かれるが、中盤以降は物語の目線はT大研究者達、特にシロイヌナズナを研究する女性本村(もとむら)を中心に進んでいくのである。本村(もとむら)のほかにも、サボテンを愛する加藤や隣の研究室の先生である諸岡(もろおか)や、机の上が汚くて今にも崩れそうな松田先生など、個性豊かな研究員達がたくさん登場する。物語だから個性豊かなわけではなくて、実際植物の研究にハマる人というのはこんな人たちなのだろう。

本村(もとむら)のシロイヌナズナの研究内容が詳細に書かれていて、それについては正直ほとんど理解できなかった。しかし、植物の研究に没頭する人たちが何に楽しみを見出し、どんな悩みを抱いているかが伝わってきた。植物研究者という、あまり普段光の当たることのない世界を垣間見ることができた。

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「騙し絵の牙」塩田武士

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
雑誌「トリニティ」の編集長である速水(はやみ)が電子化の流れで雑誌の廃刊が相次ぐ中、同じチームのメンバーや作家と協力して雑誌を守り抜こうとする様子を描く。

編集者というと、ただの出版の担当者という印象を持っていたが、本書を読むと、作家の資料集めの手助けもするし、作家のモチベーションを上げるためにいろんな助言を与えたりすることもわかり、思っていた以上に本を出版するにあたって重要な仕事をしていることがわかった。

本書では雑誌「トリニティ」の編集長である速水(はやみ)は、会社で各雑誌が相次いで廃刊が進む中、上司から廃刊を免れるための厳しい目標を課せられる。様々な人で構成されたチームを編集長として率いていく。電子化は止められないいという書籍の現実の中で、編集者という仕事に向き合っていく姿が印象的である。

特に大きな山場などないにもかかわらず、編集長としての仕事の大変さや、面白さを見せてくれる点が面白い。なんか続編もできそうな印象である。

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「自分のことは話すな」吉原珠央

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
イメージコンサルタントを職業とする著者が人との会話の仕方について語る。

昨今雑談力の本をよく目にするようになった。それだけ雑談というのは良好な人間関係を構築する上で重要だとみなされるようになったのだろう。しかし、著者はそんなただ単に沈黙を埋めるためだけの雑談をまっこうから否定している。著者は次の3つを不必要な雑談として切り捨てている。

  • 相手から求められていない話
  • 〇〇であろう話
  • 得のないムダ話

結局、どんなに会話を繰り返しても、相手の求めているもの、相手の欲することを考えずに話続けても信頼は築けないということなのだろう。このような本にありがちな、著者が思うことをひたすら書き綴るスタイルなので、全体に特に流れがなく読みにくいが、それでもいくつか、今後意識したいな思える内容に出会うことができた。

「質問に答えるだけの人」になるな

これはもはや説明するまでもないことだが、無口な人はムダな雑談もない代わりに、このように最小限の答えで終わりがちである。僕自身も含め男性陣はむしろここに気をつけるべきだろう。

「会って10秒・3ステップ挨拶セット」を実行せよ

ここで言う3ステップとは1.相手より先に相手の名前を呼ぶ。2.相手より先にポジティブなことを言う。3.相手より先に相手を気にかけていることがわかることを言う。である。これぐらいならば今日から実行できそうなのでぜひやってみたい。

たかが会話かもしれないが、たかが会話で信頼を築けるなら安いもの。そんな考えで少しずつ実行していきたいと思った。

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「桜風堂ものがたり」村山早紀

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
本を愛する書店員、月原一整(つきはらいっせい)が星野百貨店内の銀河堂書店で仲間たちを務める様子を描く。

一整(いっせい)は無口な書店員でありながらも、銀河堂書店で優しい仲間に囲まれて働く。卯佐美苑絵(うさみそのえ)や三神渚砂(みかみなぎさ)など同年代の書店員また個性があり、書店の仕事という物を身近に感じられるかもしれない。

そんななか、一整(いっせい)の書店員人生は、銀河堂書店で起こった少年の万引き事件により大きく動くことになり、やがて一整(いっせい)はネット上でやりとりしていた桜風堂(おうふうどう)という書店の店主に会いに行くこととなる。

ただ書店に行って本を買うだけではわからない本屋の業務がわかるだろう。例えば、本の棚にはその担当者の個性が現れ、また同じように書店の棚にはその店の個性が出るのだという。書店員同士の横のつながりも新鮮だったし、地域と繋がりのある書店の役割の重要性も本書を読んで初めて知った。

星野百貨店は同じ著者の「百貨の魔法」の舞台となった百貨店であり、「百貨の魔法」との共通の登場人物が出てくるので、そんな視点で楽しむこともできるだろう。本書で描かれているような本屋さんの紙の書籍に対する愛情や、良い本を人々に届けたいという思いはしっかりおきたいと思った。本屋で本を買うことにまた新しい価値観を与えてくれる優しい物語。

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「ベルリンは晴れているか」深緑野分

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
アウグステはベルリンに駐在するロシア軍の人物から、殺人容疑のかかったある人物エーリヒを探すことを依頼される。自らもエーリヒに伝えたいことがあることから、荒地となったベルリンでエーリヒを探し始めるのである。

時々挟み込まれる対戦中のアウグステとまだ健在だった父と母の様子が痛ましい。そんな過去の描写の中では少しずつナチスが力をつけていき、ユダヤ人や反政府を叫ぶ人への弾圧が強まっていくのである。

また、旅の共となったユダヤ人のカフカとアウグステがエーリヒを探す中で少しずつ打ち解けていき、お互いの過去を語るようになる。カフカだけでなく、ロシア人、ユダヤ人、イギリス人が行き交う戦後の混乱のなかで、辛い過去を抱えた人々と出会い時に助け合いながらエーリヒを見つけようとするのである。

第二次世界大戦中、そして大戦後のドイツの様子を丹念に調べてあることは、物語の中から感じるが、物語自体に展開の遅さやながながしさを感じてしまった。もう少しコンパクトに話を展開したら綺麗にまとまったのではないかと感じてしまった。

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「本屋さんのダイアナ」柚木麻子

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
大穴と書いてダイアナと読む。そんな名前にコンプレックスを持つダイアナは本をこよなく愛する。小学校に入り同じように本を愛する彩子(あやこ)と出会う。そんなダイアナと彩子(あやこ)という文学を愛する2人の女性の成長を描く。

豊かな家庭に生まれた彩子(あやこ)とシングルマザーのもとで生きるダイアナを対比し、ダイアナ視点と彩子(あやこ)視点で交互に、小学校低学年、中学校、高校、大学、社会人と成長していく様子を描く。ダイアナは彩子の豊かな家庭と、本への造形の深いその両親がいる家庭に憧れ、また一方で、彩子(あやこ)はダイアナの自由で個性溢れる生き方に憧れているの点が面白い。

やがて、私立の中学校に進学した彩子(あやこ)と地元の中学校に進んだダイアナは違い道を進むこととなる。ダイアナよりも、私立という恵まれた環境におかれながらも、考えや行動に深みのない生徒ばかりに囲まれて悩む彩子(あやこ)がより印象的である。その後、ダイアナは社会人になり、彩子(あやこ)は大学生になる。10年以上隔たっていた2人の人生が再び近づいていくのである。

豊かだからといって幸せなわけでもなく、貧しいからといって不幸でもない。結局は自分の信念とどう向き合い、自分の与えられた環境をどのように楽しみ、活かしていくことだ自分を幸せにするのだ、というメッセージを感じる。うまく行かない人生を環境や人のせいにして諦めている人がいたら、そんな人は本書を読んでもらいたい。前向きな勇気をくれる物語である。

赤毛のアンの話がかなり引用されるため、赤毛のアンというタイトルはものすごい有名だが、読んだことはないので、機会があったら読みたいと思った。

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「崩れる脳を抱きしめて」知念実希人

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
研修医として配属された神奈川の病院で、碓氷蒼馬(うすいそうま)は豪華な個室で過ごし、残りの命の短い弓狩環(ゆがりたまき)と出会う。

碓氷蒼馬(うすいそうま)は幼い頃に父親が借金を作って失踪したために、お金に強い執着があり必死で勉強し優秀な医者になろうとしている。一方、弓狩(ゆがり)は莫大な遺産を相続したために豪華な個室で過ごすことはできるが、残りの人生に限りがあり、またある不安から外にでることもできないという。やがて蒼馬(そうま)は弓狩(ゆがり)の過ごす病室を勉強部屋として使わせてもらうこととなり、少しずつ胸の内を明かしていくうちに、惹かれていくのである。

物語展開として病気の女性を暑かった物語は多数あり(最近でいうと「君の膵臓を食べたい」、一昔前なら「世界の中心で愛を叫ぶ」)、そういう意味では特別新鮮さは感じなかったが、横浜港のシーンが印象的で弓狩(ゆがり)自身も病室でたくさんの絵を描いていたために、その美しい印象が残った。みなとみらいに久しぶりに行きたくなるだろう。

知念実希人という著者名は最近よく聞くが、本書がその作品に初めて触れる機会となった。もう少し読んでみたいと思った。

【楽天ブックス】「崩れる脳を抱きしめて」

「正しいものを正しくつくる」市谷聡啓

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
アジャイルで発生しがちな問題を、どのように解決していくかを書いている。

序盤はアジャイル以前のウォーターフォール型の開発手法についての説明とその限界について説明し、アジャイルの一般的な考え方と流れを説明している。本書を手に取る人の多くはおそらくアジャイル経験者であることを考えると最初の三分の一はほとんど読む必要がないのではないかと思える。

中盤以降はアジャイル開発で起こりがちな課題と、その解消方法について書いている。また、その過程でいくつかのフレームワークを紹介している。ユーザーストーリーマッピングサービスブループリントなどの説明は他にも詳しい書籍があるので特に新鮮さはなかったが、リーンキャンバスを改善したという仮説キャンバス検証キャンバスという筆者オリジナルの手法を紹介しており、機会があれば使ってみたいと思った。リーンキャンバスには目的やビジョンがないので内容がぶれてしまうのだという。

また、仮説検証をわからないことをわかるようにする活動として、3つの種類に分ける考え方は本書で初めて出会った。

  • 課題仮説(本質)
  • ソリューション仮説(実体)
  • インターフェース仮説(形態)

別の言い方をすると、課題仮説とはどんなユーザーストーリーを実現すべきか、ということであり、ソリューション仮説はどんな機能を実装すべきか、そしてインターフェース仮説はどんな見た目にすべきか、ということなのだろう。自分たちがどこまでわかっていてどこまでわかっていないかを明確にするためにこの3種を分けて考え、チーム全体の現在地を共有することは意味があるだろう。

最後に、アジャイル開発をうまく行うためには参加メンバーの視野視座を動かして物事を見ることが重要と説明している。視野を動かすとは、自分、チーム、顧客、ユーザーといった人を軸に自分以外の視野で物事を見ることで、視座を動かすとはプロジェクト、プロダクト、事業、組織、などのように規模を大きくして物事を見つめることである。面白いのは、必ずしも大きな視点で物事をみることが重要と言っているのではなく、様々な視点で物事を見る能力をもっていてそれを状況に応じて使い分けることが重要だとしている。

おそらく著者も同じような書籍を読んできたのだろう。前半はだらだらと別の書籍や記事で詳しく触れられていてすでに一般的になったといえる考え方や、手法について書いており、普段からさまざまな情報に触れている人にとっては特にあたらしさはない。ページを増やすための戦略なのかもしれないが、たくさん書けばたくさん伝わるという考え方はエンジニア出身の著者っぽいなと感じた。言いたいことを絞ればもっと読みやすくわかりやすい本になったのではないかと思う。そういう意味では後半はアジャイルを実践しながらなんども悩み解決策を考えてきた経験からくる内容の濃さを感じた。本書を読み始めて前半で挫折しそうになった人には、後半だけ読むように教えてあげたい。

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「許されようとは思いません」芦沢央

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
現代の人々を描いた5つの物語。

家族や社会の中で悩みながら生きていく5人を扱っている。特に全体に共通するようなテーマは感じられないし、登場人物もそれぞればらばらである。個人的には最初の「目撃者はいなかった」が一番印象的だった。営業成績がなかなかあがらない若手社員が、自分のミスをかくそうとするなかで少しずつ嘘を重ねていく物語である。

短編集というのはなかなか評価が難しいと感じた。本書のタイトルを耳にしていたから、手に取ったのだが、物語として長く記憶に残るものがあったかというと疑問である。どちらかというとその個性的なタイトルで成功した例のようにも思える。

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「屍人荘の殺人」今村昌弘

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2018年このミステリーがすごい!国内編第1位作品。

大学のミステリー愛好会の葉村譲(はむらゆずる)と明智恭介(あけちきょうすけ)が、映画研究会の合宿に参加すると、周囲からゾンビが集まってきた。合宿のメンバーたちは合宿所に立てこもるが、ゾンビの入ってこれないはずの部屋で人が殺される。

ゾンビによるパニックと、古き時代のミステリーを融合させた物語。あくまでもペンションのなかでの事件解決が主軸であり、なぜゾンビが生まれたかと言う点にはほとんど触れられていない。葉村譲(はむらゆずる)と剣崎比留子(けんざきひるこ)が、3フロアのペンションのなかで、少しずつ真実に迫っていく様子がおもしろい。

特に物語時代に、謎の解決以外の深みはない。一昔前のミステリーをゾンビという味付けをして現代版に作り直したような印象である。いくつかの賞を受賞していることから期待度は高かったのだが、残念ながらその期待に沿うほどの内容ではなかった。物語中でも「密室」などの言葉が飛び交うように、昔のミステリーが好きな人は楽しめるのではないだろうか。

【楽天ブックス】「屍人荘の殺人」

「ツバキ文具店」小川糸

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
鎌倉のツバキ文具店のポッポちゃんの生活を描く。

ツバキ文具店は文房具を販売する一方で、代筆屋も兼ねている。代筆とは依頼主に変わって手紙を書くことで、年賀状の宛名を書くこともあれば、離婚報告などを書くこともあり、口コミでその噂を知った人がツバキ店にやってくるのである。序盤はその依頼から手紙を作成するまでの様子を描いており、目的や依頼主の人柄に応じて、紙、字、インク、ときには切ってまで選んで手紙を作成する様子に驚かされるとともに、改めて字や形式の大切さを思い知らされる。

そして、後半は、少しずつ代筆屋のポッポちゃんが、どのような敬意を経て鎌倉の文具店を継ぐことになったのか、先代との角質などに話が及んで行く。また、近所の人々との交流も描かれており、鎌倉という土地の暖かさも感る。きっと本書を読んだ多くの人が、鎌倉に行きたくなるのではないだろうか。

代筆屋という今まで聞いたことない職業を、鎌倉を舞台として暖かく、読みやすい気軽な雰囲気で描きながらも、文字や言葉の対して改めて目を向けさせてくれる、気軽さと深みをバランスよく備えた作品。

【楽天ブックス】「ツバキ文具店」

「お父さんが教える13歳からの金融入門」デヴィッド・ビアンキ

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
生きていくためにはお金の知識は避けて通ることはできない。そんなお金について著者が子供に教えるために書いたのが本書である。

子供向けに書かれた内容ではあるが、大人でも知らないようなこともある。何かしら学ぶ部分はあるだろう。金融の最初の一歩として読むといいかもしれない。ただ、残念ながら、すでに株式投資やFXなどを日常的にやっている人にとってはあまり、実戦で役立つような新しい知識は張っていないかもしれない。

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「アート思考 ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法」秋元雄史

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
ビジネス業界においてもアートに注目が集まる中、その考え方を語る。

まずはデザインとアーティストの違いを「解決策」と「問いかけ」と説明した上で、さまざまなアーティストやアートを紹介している。現代のビジネスに役立つとしたら、その常識を打ち破って問いを投げかける完成なのだという。

しかし、著者も「学びに即効性はない」としており、ビジネスにアートが役に立つと言われたから少しかじってみる程度ではまったく役に立たないし、そもそも「アートはビジネスに役に立つ」という考え自体が、現代アートの鑑賞は自らの頭で考えるトレーニングになるという。よく「現代アートはわからない」という人がいるが、著者に言わせれば、わからないからこそ面白いのだという。

なかでも「使用価値」と「交換価値」という考え方で現代アートを理解するという話が印象的であった。使用価値がほとんどないのに交換価値の代表的なものがお金であり、現代アートもまた使用価値がほとんどないにも関わらず、アーティストの著名度によって大きく値段が上がる可能性があるのである。

また、本書のなかではさまざまな現代アートのアーティストたちが紹介されている。それを一つ一つみるのも一つの楽しみになるだろう。章と章の間で、注意書きでそれぞれのアーティストを紹介しているが、特にページを割いて紹介している次のアーティストはしっかりチェックして、アーティスト名から作品がイメージできるようにしておきたい。ダミアン・ハーストの作品などは一度見たら忘れることはないだろう。

全体的に特にアートについて新しい考え方をもたらしてくれた印象はあまりないが、多くのアーティストを知ることができた点がありがたい。

  • ヨーゼフ・ボイス
  • リアム・ギリック
  • リクリット・ティラバーニャ
  • スゥ・ドーホー
  • ジェフ・クーンズ
  • 増田セバスチャン
  • 松山智一
  • 葉山有樹
  • 沖潤子

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「さざなみのよる」木皿泉

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
40代で癌で亡くなったナスミとその死の周囲にいる家族や友人を描く。

夫の日出男(ひでお)、姉の鷹子(たかこ)、妹の月美(つきみ)と、それぞれの視点からナスミの死を描く。40代の死という早すぎるわけでもない、そのやや早めな死に、周囲の人々の捉え方や感じ方もそれぞれである。その視点は、ナスミの幼馴染や、昔の同僚など少しずつ関係の薄い人たちへ移っていくが、少なからずナスミの生き方が影響を与えていることがわかる。

なによりもナスミの死が周囲の人にプラスの影響を与えている点がすごい。誰しも最期はこんな風にありたいと思うだろう。もちろんそれは、死に方よりもそれまでの生き方が何よりも大事なのである。そんな、今日の生き方を考えさせてくれる優しい一冊。

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「海の見える理髪店」萩原浩

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第155回直木三十五賞受賞作品。

家族を描いた6つの短編集。

どれも家族愛を描いた作品ではあるが、個人的に印象的だったのが6番目の「成人式」である。中学生の時に交通事故で亡くなった娘、鈴音(すずね)の代わりに、40を過ぎた両親が成人式に出ようと試みる物語である。娘のためにと思いついた出来事が、娘を失った2人の人生に輝きを与えるのである。

優しい物語ではあるが、自分としては若干物足りない。もう少し年を取ってから読むといいのかもしれない。

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「スペイン語のしくみ」岡本信輝

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
スペイン語の基本を説明している。

スペイン語の勉強を日々しているので、手がかりになるものが少しでもあればと思い、本書を手に取った。

印象としては初心者向けの内容で、僕のように5年以上スペイン語を勉強しているような人にとって新しい内容はほとんどなかった。1点新しく知った点として、形容詞の位置によって意味が変わることがあるというものだ。

amigo viejo 年を取った友達
viejo amigo 古い友達
gran hombre 偉大な男
hombre grande 大きな男

スペイン語学習者であっても、初心に戻るために読むのはいいのかもしれない。

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