
オススメ度 ★★★★☆ 4/5
人間は実際には世の中が思っているほど合理的に行動していないのではないか、そんな疑問を抱いた著者がさまざまな実験を通して人間の不合理さを確認していく。
人間の不合理な行動をさまざまな実験や研究結果とあわせて説明していく。本書で触れられている内容の中には聞いたことがある事象もあるので、有名な書籍だと「ファスト&スロー」や「ヤバい経済学」「影響力の武器」と似ている部分があるし、内容としても若干重なっている部分があるだろう。
それでも新鮮な内容や改めて日常生活の中で意識したいと思える発見がいくつかあった。個人的に印象的だったのが社会規範と市場規範を扱った「社会規範のコスト」の章とプラシーボ効果を扱った「価格の力」の章である。
普通にお願いすると引き受けている頼み事が、お金を払うと拒絶されたり不快感を与えることがあることは誰しも体験として知っているあろう。本書では、そんな行動を社会規範と市場規範という二つの言葉で説明している。
- 社会規範…わたしたちの社交性や共同体の必要性と切っても切れない関係にある。たいていほのぼのとしている。
- 市場規範…ほのぼのとしたものは何もない。賃金、価格、賃貸料、利息、費用便益など、やりとりはシビアだ。
仕事やプライベートで現在うまくいっていない関係があるのだとしたら、現在どちらの規範に基づいてやりとりしているか、関係者はそれぞれどちらの認識で受け取っているかを考えると解決への糸口が見えるかもしれない。
「価格の力」の章ではプラシーボ効果について深掘りしていく。誰もがプラシーボ効果というのは聞いたことがあるだろう。思い込みが実際に効用として現れるという現象である。驚いたのは今でも、長年効果があるとされてきた薬や治療法が実はただのプラシーボ効果だったと判明する例があるのだという。
数年前に妻の大腸癌の抗がん剤治療治療をデータを見て受けない決断をしたことがあった。データを見てわずか8%の人間にしか効果がないにもかかわらず高い費用とつらい副作用を考慮して決断したのだが、あれもひょっとしたら数年後にはただのプラシーボ効果だった判明するかもしれない。
一方で、高いお金を払っているからこそより高い確率でプラシーボ効果が発揮されるという点や、医師自身も信じているからこそ効果が出やすいという点で、医療費や薬代の高騰は今後も簡単には止まらないのだと思い知った。
前述のように似た内容の本によく出会うが、このような本にも定期的に触れる必要があるだろう。早速日常生活に活かしていきたい。
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