「スリー・アゲーツ 三つの瑪瑙」五條瑛

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第3回大藪春彦賞受賞作品。
北朝鮮の工作員チョンが日本に潜入した。葉山(はやま)はチョンの残したものを分析してその足取りを追ううちにしだいにチョンの人間性が明らかになっていく。
北朝鮮、日本、アメリカと国をまたいで繰り広げられる諜報活動。そんな中で生きる人々を描く。僕らは諜報活動やスパイと言った言葉を聞くと、そこに関わる人々は、どこか冷血で非人間的な印象をもっているが、むしろ本書で中心となるのはその生まれ育った境遇故に、国家間の陰謀に巻き込まれていったむしろ不幸な人々である。
物語はチョンと、チョンを追う人々と、人間としてのチョンと関わる事に成った、その家族の視点で描かれる。北朝鮮に住む、チョンの家族の目線では、その言論統制の厳しさが見え、また日本に潜入したチョンの目線からは日本の物質的な豊かさが感じられるだろう。
諜報活動を扱った物語は、往々にしてわかりやすい展開にはならず、どこか難しい印象が常にあり、そういう点では本書も例外ではない。ただ、国の違いに置ける文化や豊かさの違いなどが感じられる点が新しい。
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「上陸」五條瑛

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
会社勤めを辞めた兄貴分の金満(かねみつ)、若い前科者の安二(やすじ)、本国の家族のために働く不法滞在者のアキム。3人は共同生活を送りながら建設現場で働く。そんな3人の少し変わった生活を綴った。
格差社会の底辺とも言えそうな3人の生活。そこには僕らが知らない出来事が毎日のように起こり、そして彼らには彼らのルールと常識がある。
特に、不法滞在者であるアキムの生活や人間関係の中には、アジア諸国の人たちの生活が見える。そして本国へお金を送金するつもりで日本に密入国したが、日本にある多くの誘惑の中で、信仰をなくし、質素な生活から離れていく不法滞在者が多く存在するこエピソードが描かれていて、なぜ不法滞在者が犯罪に走るのかがわかるような気がする。彼らは悪ではなく、弱いだけなのだ。

どんな金でも、金は金です。それがなければ生きていけない。ボクも家族も

日本で生まれ育った人は、弱ければ誰かに頼って生きようとするだろう。しかし、彼らは、犯罪に走ることしか知らない。彼らの育った国がそういう文化だったのだから。そんな海外の事情とあわせて、日本がアジアの特殊な存在であることも改めて感じさせてくれた。

俺は家族に話すよ。東の果てにはいろいろなものがあった。見たこともない物で溢れていた。俺の言葉じゃ説明できないくらい、いろいろあったんだよって、そして、いろいろな人間がいたよって。いい人も悪い人もいた。でも俺は幸運だった。

HALAL
コーランの用語で、 「許された」または「合法の」という意味。HALAL食品は、アラー(神)により食べることを許されたもので、HALAL食品を摂ることは すべてのイスラム教徒の義務とされている。

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