「詩的私的ジャック」森博嗣

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
大学施設で女子大生が連続して殺害された。現場はいずれも密室状態で、死体にはアルファベットと見られる傷が残されていた。捜査線上に浮かんだのはロック歌手の結城稔(ゆうきみのる)であった。
このシリーズの魅力はなんといっても犀川創平(さいかわそうへい)と西野園萌絵(にしのそのもえ)という2人の常識をはずれた思考能力の持ち主が交わす会話である。その会話は僕自身にいろいろなものを気付かせる。今回も犀川(さいかわ)は言っていた。

みんな、不思議を見逃しているだけだよ。ブーメランがどうして戻ってくるのか、ヘリコプターがどうして前進するのか、工学部の学生だって誰も知らない。

好奇心は目の前を通り過ぎる物事の多さの前で忘れ去られ、不思議は常に存在することで不思議ではなくなる。そしてみんな、深く考えずに事実を受け止めることに慣れていくのだと思った。
今回も萌絵(もえ)の特殊な立場によって2人は捜査の中に介入していき、そして謎が解ける。人を殺さなければならない理由。人に惚れる理由。病的なまでの思い込みが良心を凌駕し、凶悪な事件を起こすさまを見せ付けられる。

あの人は、汚れたものが嫌いなんだ。純粋で、学問が好きで、高尚で、完璧な人だ。傷があったら、腕ごと切り落とすような人なんだ。

僕はこの言葉に共感した。きっと狂気は誰の中にもあるということだ。
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