オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
村上春樹の作品を読むのは「スプートニクの恋人」に続いて2作品目である。
主人公のカフカ少年はそれまでの自分の生き方に疑問を持ち家出をする、そして運命に導かれたかのように四国の図書館に辿り着く。とそんなストーリーである。
感想はというと、正直わからない。この本が世界中の多くの人から支持を受けていることももちろん知っている。それでも僕にはわからない。
現実と非現実の境界線、意識下と無意識下の境界線が曖昧すぎて、謎が謎のまま残される。もちろん意図的に謎を残して、真実は読者自身の考えに委ねているのだろうが、明確な意図をもってその謎を残しているのか疑問が残る。また、登場人物がみんな個性が薄いことも気になる。「個性が薄い」という言い方は少し違うかもしれない。個性はあるのだが現実感が乏しいのである。大島さんも佐伯さんも、カフカ少年も、ホシノさんも、ナカタさんもあまりにも非現実なキャラクターなため誰一人として感情移入できないのだ。
作者自身、ホシノさんも、ナカタさんなどのキャラクターについて、こんなキャラがいたら読者はいろいろ考えるだろう。読者にたくさんのことを考えさせることを目的に書かれたような作品のように思う。そして、僕はいろいろ考えさせられ、そして答えが出ないことに悩むのである「指はなぜ6本ある?」そう聞かれたら誰もが困るように、やはり僕もこの本を読み終わって困るのであった。おそらくすべてに説明、理論を求める僕自身に問題があるのだろう。僕がこの本をもう一度開きたくなったときには僕自身少し違った人間になっていることだろう・・
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カフカ少年も、ホシノさんも、ナカタさんも皆、同じキャラクターで同工異曲の人物たちを並べてみただけの小説のように感じた。登場人物の会話とか食べ物や音楽の使い方といった細部はとても魅力的だ。しかしそれも作者のあざとさ、こうすれば受けるだろうというこの作家の芸達者さも感じる。とにかく技巧的に走りすぎているという気がする。謎が謎を呼ぶにはどういう書き方をすればいいか、読者が喜ぶかをよく知り抜いている。