「学習する組織 システム思考で未来を創造する」ピーター・M・センゲ

オススメ度 ★★★★★ 5/5
社員の誰もが学習し、組織全体としても学習して発展していくというのは企業としての理想の姿であるが、多くの企業がそれを目ざしながらもできないでいる。本書はそんな学習する組織を作るために必要な考え方や、陥りがちな問題を丁寧に解説する。
印象的に残った話はいくつかあるが、そのうちの一つが「探求と主張のバランス」である。

最も生産的な学習は、通常、主張と探求のスキルが融合された場合に起こる。別の言い方をすれば「相互探求」である。つまり、全員が自分の考えを明らかにし、公の検証の場にさらすのだ。それによって、防御的な行動に走ることなく、弱みをさらけ出せる雰囲気が生まれる。誰も自分の意見の裏にある証拠や推論を隠しだてしない、つまり誰もが綿密な検証を受けるのを避けようとせずに意見を言う状態だ。

企業はどうしても大きくなるにつれ、生産性のない会議の数が増えていく。不要な会議を減らし、必要な会議はより充実したものにするためにあるべき姿はまさに「探求と主張のバランス」なのだろう。
また、「意識の変容」という章のなかで説明されている内容も面白い。多くの人は物事を線形に捉えようとするが、実際には環状であり、世の中にある多くの問題が、物事を環状に捉えられないゆえに解決されていないのだという。本書ではその例を「コップに水を満たす」という行為で説明している。

私たちが日常的な会話で「コップに水を満たしている」と言うとき、一方の因果関係「蛇口に載せた手が、コップに入る水の流量を調節している」を意味している。しかし「コップの推移が私の手を調節している」という説明も同じように真実であろう。

その他にも組織に関わる人に知って欲しいおおくの内容で溢れている。

企業にとって利益を上げることは、人間にとっての酸素のようなものである。十分な利益がなければ脱落する」。利益を目的とする企業は、「人生の目的は息をすること」と考える人のようなものだ。こうした企業は、大切な何かを失いつつある。

とてもすべてを理解したとは言えないが、組織のなかでの行動に大きく影響を与えるであろう内容がたくさん詰まっている。ぜひ、もう一度読んでみたい。やや英語の翻訳にわかりずらい点があるのでひょっとしたら英語で読んだ方が内容の理解はしやすいかもしれない。
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