「火の粉」雫井脩介

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
元裁判官・梶間勲の隣に、以前、勲自身が、無罪判決を言い渡した男、竹内真伍が引っ越して来た。そんな奇妙な偶然で始まる。
竹内が引っ越して来たことによって、梶間家に少しずつ変化が起こりはじめる。そんな展開である。そう、実際に家族なんていうのは、つながりは薄く、隣人のちょっとした策略で簡単に崩れてしまうものなのかもしれない。特に、嫁、姑などの微妙なバランスで保たれている家族はそうなのだろう。
また、裁判官という仕事についても衝撃を受けた。改めて考えてみると、なんて責任の重い職業なのだろう。一つ間違えれば何もしていない人の命までも奪いかねない。そして一方一つ間違えれば凶悪な殺人者を「無実」として世の中に解き放つこともまたあり得るのである。これは裁判官だけでなく、弁護士、検察官についても同様のことが言えるかもしれない、実力があるか否かによって無実の人が有罪判決を受けて人生を棒にふったり、有罪の人が無罪となって世の中に出ていったりするのである。
一時期、弁護士という職業に憧れた時期もあったが、憧れだけに留めていて良かったと感じる。
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「「火の粉」雫井脩介」への1件のフィードバック

  1. 普通とは逆なのですが、読んだあとに、ふとレビューを見たくなって、ここを訪れました。
    あった、あった。
    やはり話題の本は読んでる。しかもずいぶん前ですね。
    なかなか興味深い本でした。
    読書版カッパえびせんみたいに一気に読めた。
    個人的には「人間がずいぶんよく描かれているな〜」と感心しました。
    本編の主題である隣人との関係をはじめとして、嫁と姑。実娘と嫁の魂の戦い。老いた父と息子の力関係。母と娘、夫婦間の微妙な愛憎。
    どれもこれも、う〜んと唸りたくなるような描かれ方でした。
    また、家庭内の関係性にとどまらず、学生時代から続く悪友との異常的なエピソードや、裁判官(または元裁判官)と検察との対決も見所でした。
    非現実的な要素を排除するのがこういうジャンルの小説の掟ではあるけど、それにしても、登場人物の内面描写や、些細な出来事で化学反応を起こして変化していく対人関係の有様が、ストーリーの進展とともに非現実的になればなるほど、現実的に描かれすぎていて、空恐ろしくなるほど。
    巧いなぁ。
    作者はよほどの苦労人らしい。
    異常な殺人鬼さえも、「異常」でだけでは片付けられなくさせる手腕はお見事。
    面白かった。
    人間って、恐ろしいけど、やはり哀しく愛おしい。
    最近忘れてたけど、あらためて、
    読書っていいですね〜

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