オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第二次世界大戦中にドイツの暗号解読に関わった女性たちを描く。
物語はOsla,Mab,Bethという10代、20代の女性3人を中心に描いたている。彼女らは戦時中にそれぞれの人生を送っていたが、あるきっかけからBletchley Parkにおける暗号の解読に関わるようになるのである。
Bletchley Parkには暗号解読に関わる男女が多く集まって日夜仕事に励んでいた。第二次世界大戦中、彼らの業務は極秘事項であり、彼らは外では一切自分の仕事を明かすことができず、それゆえに多くの葛藤を抱えるのである。男は拘束されて暗号の解読のことを漏らす危険性から戦争に志願することができない。そのため、Bletchley Parkで働く男性たちは、頭脳を使って戦争に貢献しているにも関わらず世間からは白い目で見られる。また、女性たちも恋人や家族に毎日何をやっているのかを一切伝えることができないのである。しかし、だからこそBletchley Park内部では特別な連帯感が生まれていくのである。そんなか、戦争の終結が近づくにしたがって、Osla,Mab,Bethと他のBletchley Parkのメンバーたちは少しずつ異なる道を歩むこととなる。
物語は戦時中の1939年から1944年のBletchley Parkの様子と終戦後の1947年、Bethから裏切り者の存在の示唆によって3人が再び連絡を取り合う様子を交互に動きながら進んでいく。
戦争の様子と暗号解読に奮闘する様子以外にもいくつか見所がある。まずはBethの家庭の様子である。Bethの家は元々はBletchley Parkで働くOsla,Mabのための宿として提供されていたが、母親の厳しい管理下におかれているBethを心配したOsla,Mabが、その暗号解読向きの才能に気づいてBletchley ParkにBethを雇うように進言し、それによってBethは少しずつ母親の束縛から解放されて自由を手に入れていくのである。
また、Osla,Mabは自身の文学好きであることから、Bletchley Park内の文学好きを集めて会合を定期的に行うのである。そこでは「Gone with the Wind」など、過去の有名な文学作品が多々議論されている。知らない作品ばかりであるが、時間があったらぜひ触れてみたいと思った。
また、Oslaの恋人がのちのエリザベス女王の夫となるPhilipである点も面白い。イギリスやヨーロッパの皇族の関係やその葛藤についても触れることができるだろう。
最初はなかなか物語が進まない印象を受けた。過去のKate Quinnの「Alice Network」や「Huntress」に比べると物語展開よりも登場人物の心の動きに焦点が当てられているように感じる。ただ、BethによるBletchley Park内の裏切りのもの存在の示唆によって、Osla,Mabが行動を開始した後半は一気に動き出す。
戦時下という中で自分たちができることに尽くした人々の熱い生き方に何度も泣きそうになった。イギリスに行く機会があったらBletchley Parkも行ってみたいと思った。