オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
若者の揺れ動く心を描いた3つの物語を扱った短編集。
短編集ということで、やや控えめではあるがほかの辻村作品同様、憧れ、見栄や嫉妬など人が集まれば当然生じる多くの複雑な感情が描かれている。
最初の物語は、絵画に情熱をかける大学生清水あやめの物語である。表向きは、絵画という共通のものによって結びつき協力し合う友人たちを演じながらも内面ではの絵画の力量で人を評価し、時には貶したりするのだ。
また2話目は売れないモデルの物語。その事務所に所属する人たちは、自分たちより明らかに地位が低いと見えるモデルをみんなで嘲笑する。
嫉妬などの他人の失敗を望む気持ちは、何か汚らわしいもののように世の中では受け入れられていてどこかタブー的な感じもするが、それを必ずといっていいほど描く辻村作品を読むと、不思議なことに、むしろそれが人間の人間らしい感情として見えてくる。
そして今回も、それぞれのエピソードは過去の作品と関連付けられているようだ。1話目には「冷たい校舎の時は止まる」の登場人物が主人公として出てくるし、2話目は「スロウハイツの神様」とつながっている。辻村作品ファンにははずせない一冊。
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