オススメ度 ★★★★☆ 4/5
17世紀に数学者フェルマーが残した定理。その余白には「証明を持っているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」とあった。以後、3世紀に渡って世界の数学の天才たちの挑戦を退けてきたこの定理がついに1994年アンドリュー・ワイルズによって証明されることとなった。
数学が好きな人間なら誰でも聞いたことがあるだろう。「フェルマーの最終定理」をここまで有名にしているその理由の一つがそのわかりやすさである。数学の素人でさえもその定理が言っていることの意味はわかるゆえに誰もが証明したくなるのだが、それを証明することも判例をみつけることもできない。
本書は数学における「証明」というものの意味、そして数学者の性質から非常にわかりやすく、そして面白く説明している。タイトルを聞いただけで数学嫌いな人は敬遠してしまうのかもしれないが、本書は本当にすべてをやさしく書いている。
さて、そして物語は徐々にそのフェルマーの最終定理の核心へと繋がっていく。驚いたのは、その証明にあたって、日本人の数学者志村五郎(しむらごろう)と谷山豊(たにやまゆたか)によって考え出された谷山=志村予想が大きな鍵となったことである。
過去、多くの人がその証明に挑戦し敗れるなかで編み出されたいくつもの数学的証明手法をいくつも見ることで、フェルマーの最終定理は決してただ一人の数学者によって証明されたわけではなく、アンドリュー・ワイルズを含む多くの数学者による努力の積み重ねによって成し遂げられたとわかるだろう。
そんな数学者たちの300年の汗と涙がしっかり感じられるから、アンドリュー・ワイルズの証明の瞬間には鳥肌が立ってしまった。
現代に生きる人は思ったことがあるだろう。科学が発展し地上のすべてがすでに切り開かれ、未知なる物など地球上にはなく、なんて退屈な世の中なのだろう…と。しかし、本書は見せてくれる。数学の世界にはまだまだ未知なる世界があふれている、と。
わからない言葉もいくつかあったが、数学という世界の魅力を存分に伝える一冊である。
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