「一瞬の光」白石一文

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
日本を代表する企業の人事課に勤める橋田。幼い頃から母親と兄から虐待を受けて来て、誰にも心を許すことの出来ない20才の女性、香折(かおり)。社長の姪ということで何不自由なく育てられた琉衣(るい)。
登場人物は嫌味なぐらい完璧な人が多い。中でも主人公である橋田は美男子であり、お金も地位も女も持っているのでなかなか共感しにくい。それでも橋田のような、わき目もふらず会社のために生きている生き方は、日本の社会の中では多いのかもしれない。会社の組織の上に行くにしたがって、同僚などを蹴落として行かなければならない現実は感じさせてくれた。
全体的には男1人女2人の三角関係を描いたストーリーなのだが、裏には深いのテーマがちりばめられている。生まれつき困難を背負う人のわずかな愛情と、暗然な立場にいる人の豊富な愛情では、後者の方が分があるかもしれないが、しかしそれがそのままその人の人間の価値と比例するとは言えるだろうか。僕の心に残ったのはそんな問いかけだ。
そしてラストは涙なしには読めないだろう。満足させてくれた内容ではあったが、「本の雑誌が選ぶ2003年度<文庫>第2位」という評価には少々首をひねらざるを得ない。
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