「ビブリア古書堂の事件手帖 栞子さんと奇妙な客人たち」三上延

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
鎌倉の古本屋の店主である篠川栞子(しのかわしおりこ)は人見知りで口下手だが、古本をこよなく愛し、古本に関わることではすぐれた洞察力を発揮する。就職浪人中の五浦大輔(いつうらだいすけ)は本の鑑定のためにその古本屋を訪れる。
やはり本シリーズの魅力は篠川栞子(しのかわしおりこ)のその個性だろう。「千里眼シリーズ」で有名な著者、松岡圭祐も「万能鑑定士」シリーズで、非常に知識のある女性を描いているが、最近で言えば「鉄子」と言われる女性鉄道オタクが市民権を得たように、世の中が度を越して知識を持っている女性を求めているのかもしれない。
物語はそんな篠川栞子(しのかわしおりこ)と五浦大輔(いつうらだいすけ)の周辺で起きる、言ってしまえばそれほど深刻でない日常の問題を、栞子(しおりこ)が解いていく。その過程で語られる、古本に関わる小話や、夏目漱石、太宰治などの日本文学が非常に好奇心を掻き立ててくれる。誰もが聞いたことのある著者でありながら、なんとなく「古臭い」「退屈」といったイメージをぬぐえずに実際に読んだことのない人は多いのだろう。本作品は、そんな躊躇している人の背中を押してくれるだろう。実際僕も、太宰治を何冊か読んでみようか、と読み終わって思った。物語自体が、「ものすごい面白い」とかいうわけではないが、心地よく視野を広げてくれる作品である。
本作品では、鑑定、古本に深くかかわる内容である、古本屋といえば京極夏彦の「姑獲鳥の夏」、鑑定といえば松岡圭祐の「万能鑑定士シリーズ」が僕のなかで印象的だったので、まだ読んだことのない人は読み比べてみてはどうだろうか。

小山清
東京府出身の小説家。1952年(昭和27年)に『文學界』に発表した「小さな町」や『新潮』発表の「落穂拾ひ」など、一連の清純な私小説で作家としての地位を確立。 1951年(昭和26年)に「安い頭」が第26回芥川賞候補に、1952年に「小さな町」が第27回芥川賞候補に、1953年(昭和28年)「をぢさんの話」が第30回芥川賞候補にあげられた。(Wikipedia「小山清」
ピーター・ディキンスン
イギリスのSF作家、ファンタジー作家、推理作家、絵本作家。ディッキンソンの表記もある。アフリカの北ローデシア(現ザンビア)、リヴィングストン生まれ。(Wikipedia「ピーター・ディキンスン」
太宰治
日本の小説家。1936年(昭和11年)に最初の作品集『晩年』を刊行した。1948年(昭和23年)に山崎富栄と共に玉川上水で入水自殺を完遂させた。主な作品に『走れメロス』『津軽』『お伽草紙』『斜陽』『人間失格』。その作風から坂口安吾、織田作之助、石川淳らとともに新戯作派、無頼派と称された。(Wikipedia「ピーター・ディキンスン」

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