「ダークゾーン」貴志祐介

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
目が覚めるとそこは不思議な世界。現実の世界では将棋のプロを目指していた塚田裕史(つかだひろし)は、その世界で、18体のそれぞれの能力を持った生き物を動かして、敵である青軍と七番勝負をすることとなる。そこは夢なのか仮想空間なのか。
なんとも突飛な舞台設定である。実際著者である貴志祐介は「クリムゾンの迷宮」でも人間同士で生き残りをかけたゲームのような物語を描いているが、本作品では塚田(つかだ)含む登場人物たちは、なぜその場所にいて、なぜ戦うことになったかがわからなく、その点が物語のカギなのだと推測できる。
さて、理由もわからず塚田(つかだ)は現実世界で知り合いだった人間を駒として青軍と戦うのだが、その過程で、将棋や囲碁、チェスなど伝統的なゲームについて言及される点が興味深い。またその舞台となっている場所が昨今有名になった長崎の軍艦島をモチーフとしている点も個人的には好奇心を刺激してくれた。むしろそこまで調べ上げているなら将棋や囲碁の純粋な勝負の世界を描いたほうが面白い物語になったのではないかと感じた。
感想としてはやはりこの非現実すぎる物語をすんなり楽しむのは誰にとってもなかなか難しいのではないかと思う。とはいえこのような物語を世に出せるのは著者の過去の実績があるからゆえなのだろう。普通の人が同じものを書いてもまず出版社は却下するに違いない。そういう意味では現代アート的感覚で触れてみるのもいいかもしれない。
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