オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第5回ホラーサスペンス大賞受賞作品。
息子である高校生の文彦が失踪してから、佐知子(さちこ)の周囲で不幸なことが連続するようになる。文彦の行方を捜しながら、佐知子(さちこ)はその因果関係に疑いを持つ。
まず人間関係を把握する必要がある。佐知子(さちこ)の元夫雄一郎(ゆういちろう)との間に文彦(ふみひこ)という息子がいて、雄一郎は精神課の医師であり、そこの患者であった亜沙実(あさみ)と結婚して現在1人の娘冬子(ふゆこ)がいる。
そんな中で、本書の際立っている部分は、亜沙実(あさみ)とその娘、冬子(ふゆこ)の存在感だろう。繰り返し強姦されるという経験から精神を病む亜沙実(あさみ)。周囲の人間は「なぜ彼女ばかりが?」と疑問に思い、その理由については本作品ではまったく触れられていないのだが、なにか読者を納得させるものがある。
きっとそれは、誰もがそうやってただそこにいるだけで男性を性的に惹きつけるような魅力を持った女性の存在を信じているからだろう。そして同様にその娘、女子高校生冬子(ふゆこ)もまた異彩を放っている。
なにより佐知子の別れた夫で精神科意思である雄一郎と、その現在の妻で度重なる不幸ゆえに精神に異常をきたした亜沙実(あさみ)の不思議な関係は何か異世界観のようなものを感じさせる。
全体的漂う空気は非常に異色で際立っているものの、今ひとつ「よくある小説」の域から抜け出しきれていない気がする。次回作に期待する。
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