オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
社会・経済学者である著者は、世界で発生するテロの原因として、「ユース・バルジ」というものに着目した。
「ユース・バルジ」とは「過剰なまでに多い若者世代」と言い換えることもできる。僕らが扮装や戦争の原因としてあげるとしたら何だろう。おそらく「宗教問題」や「貧困」を挙げるのではないだろうか。しかし、上でも書いたように、本書の著者の視点はやや異なる。若い男性の比率が多くなりすぎると彼らは自らの有り余ったエネルギーの矛先を求めそれがやがて内戦や虐殺につながるのだという。
ある意味「貧困」などより非常に納得のできる考え方である。著者はその「ユース・バルジ」がいかに過去紛争や内戦に影響を与え、また今後どのようなことに警戒しなければならないかを語る。面白いのは例えば、出生率が1の先進国と出生率が6のイスラムの国が戦争をした場合の話。イスラムの国の戦死者は多くの場合、その家族の次男や三男であるのに対して、先進国の場合その家族の長男である場合が多い。そうなると当然一家の大黒柱を失った親によって、先進国では戦争に対する反発も高まる、というもの。
今までこんな視点で考えたことがなかっただけに新鮮であった。残念ながらそんな今後も続く第三世界の「ユース・バルジ」に対してどのように対応すべきか、というようなことは書かれていない。残念ながら将来を悲観しているだけである。個人的には、そんな若者がエネルギーを平和的に消費する手段として「スポーツ」という答えもあるような気がするが、本書はそのようなことには触れていない。それでも全体的に非常に面白いと思える考え方だった。
残念なのは翻訳があまりにも酷いということ。関係代名詞を無理やり訳したのか4行にもわたる文章が頻出し、3,4回読み直さないと意味の取れない文章が多々あり、非常に読みにくい。英語が読める人には迷うことなく原書で読むことをお勧めする。
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