オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
古典部の高校生4人が2年生が作りかけたミステリーを見せられ、その続きの脚本の製作に手を貸すよう依頼される…。
「氷菓」に続く古典部シリーズの第2弾である。筆者米澤穂信の作品にいくつか触れるとわかることだが、ミステリーに対してかなりの強い思い入れがあるようだ。(特に「インシテミル」のなかでミステリーに対する言及が多かった)そして、そのミステリーにおける暗黙のルールを強調しながらも、そのルールの枠からどうにかして逸脱しようと終始試みているように感じられる。
本作品で興味深いのはその舞台設定だろう。折木ホータロー、千反田えるを含む古典部4人は素人によって途中まで映像化されて放り出されたミステリーを見せられ、続きがどうなるのか考えるよう依頼されるのだ。
つまりそれは、単純に目の前で起きた殺人事件の謎を解くのとは実はかなり異なる。彼らは常に、映像のなかで得られた手がかりのほかに「実は脚本を担当した人は、この窓が空きにくい事実を見逃していたかも?」とか「脚本担当がこの建物を下見したときは冬でここはもっと草が少なかったかも」という、そのミステリーの作成のなかで生じた見落としや誤りをつねに想定しながら、推理を進めていかなければならないのだ。
そんななか、ホータローは「これが真実」と提出される案を論破していく。では、真実は?というよりも真実として描かれるはずだった映像の脚本は?物語の出来不出来にかかわらず、この奇妙さはかなり新鮮である。結末よりもこの奇妙な設定にずいぶん魅力を感じてしまう。
全体的には前作同様、力を抜いてのんびり読める作品である。
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