オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
北海道極北市民病院に赴任した今中(いまなか)は、問題山積みの病院の現状を目にして改善しようと努める。
本作品の舞台となっているのは財政破綻の極北市という仮想の自治体。しかしそれは、北海道夕張市をモデルにしていることがあとがきで触れられている。
本作品も著者のほかの作品同様、わかりにくく無駄に長い委員会名や肩書き名などとともにスロースタートし、今中(いまなか)の目を通して、赤字病院の体質やその原因を示してくれる。
また、昨今の医療を話題にした内容の本の中ではすでに当然のように語られることではあるが、本作品でも命を救えなかった産婦人科医師に対する、世間の度を越した非難についての医師目線の意見が語られている。
最後まで、医療問題に関心のある人には興味を惹く内容が多く含まれており、世間が医療に対する考え方を変えなければならない、と再認識させてくれる内容である。
さて、そんな一方で、シリーズではお馴染みの姫宮(ひめみや)や世良(せら)の登場など、もはや海堂作品は、初めて読む人は、海堂作品を読み続けている人の半分も物語を楽しめないのではないか、というような気がしてしまった。
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