「カタコンベ」神山裕右

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
第50回江戸川乱歩賞受賞作品。
新たに発見された鍾乳洞の調査に参加することになった水無月弥生(みなづきやよい)は、悪天候のための落石によって、アタック班の数名とともに洞窟内に閉じ込められることとなる。
まずケイビングという今まで聞いたことも無かったスポーツに興味を惹かれた。ダイビングの地上版、と例えるのがわかりやすいのだろうか。序盤はそんなめずらしいスポーツについての記述から始まる。
そして、鍾乳洞調査が始まり、調査隊のなかで最初に洞窟に入るアタック班の数名が閉じ込められることによって物語が動き出すのだが、それまでの過程で、アタック班および、その周辺の人の背景や性格がしっかり描かれている点が、物語を面白くさせているのだろう。権力者同士の駆け引きなどを含むそれぞれの思惑と背景、例えば、それは数年前にダイビング中の事故で父親を亡くしている弥生(やよい)や、その事故のときに同じ場所にいたケイブダイバーの東馬(とうま)にもあてはまる。そして、参加者の誰かが犯罪にかかわっているという情報も浮かび上がる。また、雨天のために洞窟が水没するまでに数時間、というタイムリミットもまたスピード感を増すのに一役買っている。
著者の別の作品「サスツルギの亡霊」は南極を舞台にした物語だったが、本作品も洞窟、ということで、今回もまた僕等が普段触れることのない世界を題材にスリリングな物語に仕上げている。
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