「The Girl Who Kicked the Hornets’ Nest」Stieg Larsson

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
前作のラストで実の父親でありスパイであるZalachenkoとの死闘の末、頭に銃弾を浴びたSalander。本作品はまさにそのSalanderが病院に運び込まれるシーンから始まる。
前作「The Girl Who Played with Fire」の続編であり、「The Girl…」シリーズ三部作の最終話である。大怪我を追ったとはいえ、殺人未遂などの罪の容疑によって拘束中の身であるSalanderは、再び、Zalachenkoがロシアのスパイであるという事実を隠蔽しようとする闇の組織「The Section」のターゲットとなる。
その一方で、は「The Section」の秘密を暴いて世に知らしめようと、出版社Milleniumの仲間たちと動き出す。そんななか、再びネット上で協力し合う、SalanderとBlomkvistの少しちぐはぐな協力関係が面白い。実際、前作「The Girl Who Played with Fire」でもSalanderはひたすら、Blomkvistと顔をあわせるのを避けており、ようやくBlomkvistがSalanderに出会えたときはすでにSalanderは品詞の状態、という結末であった。本作品中で2人が平和に面と向かって会話をすることがあるのか、というのが気になるひとつである。
本作品では前二作で、脇役に徹していた人物の活躍も目覚しい。出版社Milleniumの代表のBergerは大手新聞社に引き抜かれてそこで新たなスタートを切り、新たな職場で、保守的な経営陣と対立する。また、Blomkvistの妹で、弁護士のGianniniはSalanderの弁護を担当し、Salanderの発言のすべてを社会不適格者の妄想として処理しようとする「The Section」の一味と法廷で争うことになる。本作品でもっともかっこいいのはGianniniかもしれない。
人付き合いの苦手なSalanderがGianniniに少しずつ心を開いていくシーンに心が温まる。いつものようにそれぞれの登場人物の個性や、それぞれの人間関係まで、最後まで飽きさせない作品である。
著者Stieg Larssonはすでに亡くなってしまったが、本作品の終わり方を見る限り、まだまだMilleniumシリーズには続く物語が彼の頭のなかにはあったのではないか、と思えてなんとも残念である。