「交渉人・爆弾魔」五十嵐貴久

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
交渉人である遠野麻衣子の携帯に、シヴァと名乗る人物から、宗教団体の幹部を釈放するよう要求があった。時を同じくして都内で爆弾事件が発生する。
「交渉人」の続編であり、遠野麻衣子も前作で活躍したヒロインであり、前作の2年後を描いている。交渉人という言葉は、すでにその名を使った数多くのドラマや映画が存在していることからも分かるとおり、一般的なものとなっている。
そんな中、僕らが持っているイメージはおそらく、立てこもり犯などと電話で交渉する姿だろう。ところが本作品の「交渉」はメールと、警視庁のウェブサイトへのメッセージのアップロードという形を取っている。どちらかというと「交渉人」というより、優れた洞察力を持つ女性刑事の事件といった印象が強い。
物語では中盤、爆弾が仕掛けられているという情報をメディアが流したことによって、都内は逃げようとする人々でパニックになり、交通網は麻痺していく様子が描かれている。そこには物語の展開という以上に、日本の大都市の大規模なテロに対する備えに対する作者の危惧が見て取れるような気がする。
ただ個人的にはやや違和感を覚えた。たった一つの爆弾の存在だけで、人々は電車から勝手に降りようとするだろうか、と。物語に必要な展開だったから、と言ってしまえばそれまでだが。
ケチをつけられるところはいくつかあったが、物語の演出として受け入れられる程度のもの、五十嵐貴久のほかの作品と同様に、一気に読ませるそのスピード感は評価できる。
ちなみに本作品は米倉涼子主演のドラマ「交渉人」とはまったく関係がない。
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