「Down River」John Hart

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2008年エドガー賞受賞作品。
5年前に町を離れたAdamの元へ、旧友のDannyから連絡が入り、Adamは生まれ育った町に戻ることを決める。殺人の容疑をかけられた町、そして母が自殺した町へ。
舞台となるのはノースカロライナ州シャーロット。大きなブドウ園を所有する地元の名士の下に生まれ幸せな子供時代をすごしながらも、母親が目の前で拳銃自殺を図ってから家族の歯車が狂い始める、Adamの行動の中からときどきそんなトラウマが見え隠れする。
5年ぶりに故郷に戻ったAdamは、義理の兄弟や旧友、昔の恋人との再会するなかで、その5年という月日の中で変わってしまったもの、そして未だ変わらないものと向き合い、自分だけでなく、多くの人が同じように5年間苦しみながら過ごしてきたことに気付く。
本作品からは、家族でブドウ園を切り盛りしようとするアメリカの一つの家庭の様子が見えてくる。これはそんな家族の中で起こった小さな間違いから生じた大きな悲劇の物語といえよう。
登場人物それぞれが持っている苦悩の描き方が印象的である。誰もが人は弱く、間違いを犯すものだと知りながらも、自分の不幸を他人のせいにしたり、自分を正当化したり、とその心は常に揺れ動いているのである。そしてそれでも月日は流れていく。近くを流れる、子供時代から親しんだ川、そしてなにかを伝えるかのように表れる白いシカ。いったい何を意味するのだろう。

シャーロット(ノースカロライナ州)
ノースカロライナ州南西部に位置する商工業、金融都市。(Wikipedia「シャーロット(ノースカロライナ州)」

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