「放火」久間十義

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
池袋の雑居ビルで19名の死傷者を出す火災が発生した。新聞記者のまゆ子は真相を究明するため、そして警部補の黒田(くろだ)も警察上層部の動きに不信を感じながらも関係者を当たる。
2001年に起こった歌舞伎町ビル火災を思い起こさせる。実際著者もこの事件をヒントに本作品を描いたのだろう、最初の従業員が脱出するシーンや都市ガスのガスメーターがガス管から外れている点も事件と同じであり、すでに忘れ去った過去の傷ましい事件へと僕の関心を向けさせてくれたが、その一方で、誰にも知られずに夜な夜な放火を繰り返す、というタイトルの「放火(アカイヌ)」という言葉が僕に与えたイメージとその内容はかけ離れているような違和感を感じた。
とはいえ、風俗店に認可を与える公安委員会の事務作業を警察が行うことよって発生する矛盾、すなわち癒着に触れており、物語の視点は非常に面白い。この視点の面白さをもう少し物語の面白さに繋げられないものか、登場人物に誰一人として感情移入できないほどその薄い描写にそう感じずにはいられない、なんとも残念な作品である。

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