オススメ度 ★★★★☆ 4/5
1グラムで20キロトンの核爆弾に匹敵する反物質が盗まれ、バチカンのどこかへ持ち込まれた隠された。犯行は宗教と敵対し、過去迫害され続けたいた組織イルミナティによるものだった。
翻訳によるニュアンスの違いが嫌いで、ずいぶん長いこと海外小説から離れていたのだが、周知のようにこの話題性。これだけ話題になる作品はどれほどのものなのか、と久しぶりに手に取ってみた。
物語の舞台はバチカン市国とその周辺のつまりイタリア、ローマである。物語中に出てくる通りの名前や建造物、彫刻まですべて実在する物なので、いやがおうにもそこにある芸術への興味を喚起されることだろう。
また、イルミナティなる、科学を追求しながら教会から迫害されていた組織がその黒幕であるということから、物語中では科学側の主張と、それと相反する宗教側の主張が見られ、それは僕ら日本人のような、無神論者からみても決して理解し難いものではなく、また、ガリレオの地動説など、教会と科学者と間で起こった過去の諍いなどにも触れられているため、いろいろな考え方に触れられるだけでなく、多くのことを考えさせてくれる逸品である。
物事の謎をすべて解き明かそうとするのが科学なら、謎を「神の力」としてきたのが宗教であり、それならその科学と宗教は共存できないのか、敵対しつづけるものなのか…。
なかでも、イルミナティの策略によって窮地に立たされた教会がメディアを通じて教会の必要性を訴えるシーンは強烈な印象を残してくれた。
そして個人的に興味深々だったのが、イルミナティに伝わる伝統的なアンビグラム。土(earth)、空気(air)、火(fire)、水(water)の四台元素の文字が、いずれも点対称(つまり上から見ても下から見てもearthと読める。)で描かれる。そんなことあるのか、と思うかもしれないが、実際にその印は本の中で見ることができる。個人的には本作品のもっとも魅力的な要素の一つだと感じている。
「ダビンチコード」など、他の作品も読まなければならないような気にさせてくれた。
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