「あの日にドライブ」荻原浩

オススメ度 ★★★☆☆
現在43歳の伸郎(のぶろう)は元銀行員で現在はタクシーの運転手。その生活を描く。
「もしあのときこうしていたら…ああしていたら…」。誰もが一度は考えたことがあるのではないだろうか。生きているうちに時に迫られる選択。人生のターニングポイント。一つの道を選択したら、もう一方の道を選択した場合に自分の人生に起こる結果を僕らは知ることができない。
過去のエリート人生から脱落して、その間の期間だけのつもりで選んだタクシーの運転手という職業。長距離の客に出会えるかどうかが運に左右され、それ以外の時間を車の中で一人でいろいろ考えてしまうからこそ陥いる、後ろ向きな後悔のスパイラル。読んでいる人間までへこませるようなマイナス思考のオンパレードだが、やがて自分だけが不幸なわけではなく、また、青く見える隣の芝生も、実際には多くの欠点を抱えていることに気付いていく。

曲がるべき道を、何度も曲がりそこねた。脇道に迷ったし、遠回りもした。でも、どっちにしたって、通り過ぎた道に、もう一度戻るのは、ちっとも楽しいことじゃない。

結局は今を前向きにとらえて生きることこそ人生を楽しむ最良の方法なのだと伝えたいのだろう。僕にとってはそれは新しい考え方でもなんでもなく普段から意識していることではあるが、普段人生や運命をどうとらえているか、そういう読者の人生に対する姿勢によって、本作品の受け止め方は変わってくるのではないだろうか。
難しいことを考えずにのんびりとした気分で読むには悪くないかもしれない。
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