オススメ度 ★★★★☆ 4/5
都内の銀行の支店で起こるできごとを描いた物語。
他の池井戸潤の作品と同様に本作品も銀行を舞台としている。本作品は短編集の形を取っているが、各章でそれぞれ別の行員の視点から眺めているだけで、全体として物語はつながっている。支店長になるために部下に檄を飛ばす副支店長、良心に従うために上司に反抗する若手行員。支店の稼ぎ頭など、銀行という閉鎖的な世界で生きる人々を描く。
10章で構成されているため10人の銀行員の視点で描かれる。それぞれが銀行というシステムの中、それぞれの価値観で生きている。他人から見ればそれは、「悪」だったり「見栄」だったり、「嘘」だったりしても、本人にはそこにしがみつかなければいけない理由があるのだ。それぞれの生き方について「こんな生き方、考え方もあるのか・・・」とその存在を肯定的に受け入れることができれば本作品を読む意味は大きいだろう。
本作品と同様に「銀行を中心とした、多くの人間物語が作品を通じて感じられたらいい」そう思っていて、それ以上の期待をしていたわけではないのだが、本作品は少し予想を裏切ってくれた。物語を読み進めるうちに全体を包みこんでい不穏な空気に、次第に飲み込まれていってしまった。
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