オススメ度 ★★★★☆ 4/5
始まりは論文コンクールでもっとも高い評価を受けた匿名の応募i(アイ)の登場だった。最優秀賞を逃した、狐塚(こづか)、浅葱(あさぎ)とその友人たちの間で起こった出来事を描く。
昨年衝撃を受けた作品の一つである「冷たい校舎の時は止まる」の作者であることから、同じような強いインパクトを求めて本作品を手にとった。本作品も数人の学生たちとそこに関わる大人たちを描いた物語であり、人間関係を形成する引力である、人の気持ちについて非常にシビアな描写がいくつも見られる。その悲しいほどに客観的な人間関係の表現が、辻村深月作品に独特な雰囲気を持たせているような気がする。
そんな中、指導役である秋山教授の言葉はどれも非常に印象的である。
序盤から感じ続けていた不思議な違和感。それは終盤になって一つの事実になる。そしてその事実は大きな惨劇を生む。
物語の面白さを損なわない範囲で計算尽くされた驚きの展開。この衝撃は癖になる。また間にちりばめられたこばなしも魅力的。特に寄生蜂の話と、「かごめかごめ」の解釈にはぞっとさせられた。
どうやらしばらく辻村作品のチェックを怠ることはできなくなったようだ。
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