オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
大宮の地に建設中の高層ビルO-miyaスパイラルに関わる建築士の犬飼(いぬかい)と建設作業員、隼人(はやと)の生活を描く。
基本的に吉田修一の作品は、読者に解釈を委ねる部分が多く、僕が小説に求めるものとは異なるという認識を持っている。それでも、大宮という、僕が生まれ育った街を舞台にしていることや、「パレード」で受けたような奇妙かつ、強烈な衝撃をもう一度味わいたいと思って久しぶりに手に取った。
本作品も、ほかの吉田修一作品と同様に、吉田修一らしい視点を物語の中に断片的に散りばめ、最終的な解釈は読者にお任せ、というスタンスである。一つ一つの小さなエピソードや台詞は物語の本筋とは一切関係ないようで、それでいて何か重要なものを訴えているようにも感じられる。これぞまさに吉田修一ワールドといった感じである。
「東京」でもなければ「地方」でもない大宮という地。その位置的な中途半端さを、なかなか自分の気持ちにに正直に生きることの出来ない男たちの生き方と対比させているようである。
そしてまた、物語のタイトルにもなっているランドマーク、O-miyaスパイラル。超高層ビルという物理的には最も目立つ存在でありながら、冷たく存在感がない。それはまさに、豊かな日本のなかで、大きな目標も生き甲斐も無く生きている、世の中の多くの人々を象徴しているようだ。
著者が物語の中に埋め込んだテーマをそれなりに斟酌したつもりでも、やはり物足りなさが残る。これはもはや好みの問題だろう。
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