「交渉人」五十嵐貴久

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
三人組のコンビニ強盗が総合病院に人質をとって立てこもった。交渉人の石田修平(いしだしゅうへい)警視正が現場に到着するまでの間、遠野麻衣子(とおのまいこ)は現場を守る任務に就く。
海外では一般的となりつつあり、日本でも「踊る大捜査線」のシリーズ「交渉人 真下正義」などによって認知されつつある交渉人という職業。この物語では交渉人の第一人者とされる石田修平(いしだしゅうへい)が犯人との巧みな交渉を中心に展開されていく。

ネゴシエーターにとって一番重要なことは、喋らないということなんです。自分は話さずに、相手の話を聞く。それがすべてだ。

仕事でもプライベートでも、社会は人間関係を無視して生きることなどできない。多くの読者は物語中で展開する交渉術を自身の淀みない人間関係を構築するために役立てたいと思うことだろう。
また、捜査の合間に触れている警察の最新技術もまた非常に興味を掻き立てられる。

昔ならともかく、今はいちいち警察の担当者が番号を書き写したりはしない。並べた札をビデオカメラで撮影しておけば後は警視庁装備課の画像解析機で紙幣の番号を読み取ることが出来る。さらに警察はすべての札に特殊塗料を塗布していた。一定時間以上が経過すると札の表面に模様が浮き出すため、使用することは不可能になる。

圧倒的なスピード感、一切中だるみすることなく終わりまで完結する作品である。そして、スピード感だけでなく現代社会を蝕み見過ごされている大きな問題もしっかりと物語中に取り入れているところを評価したい。


医療過誤
医療に関わる場所で発生する人身事故を医療事故という。そのうち人為的ミスに起因し、医療従事者が注意を払い対策を講じていれば防げるケースを医療過誤という。病院側が素直に過失を認めることは少なく、被害者が病院側に謝罪・賠償を求めるには、告訴(医療過誤訴訟)するしかないのが現状。原告の主張が認められた割合は一般的な民事訴訟の約3分の1。一審が終わるまで最低5年かかるという。当然、弁護士費用もかかる
心筋炎
心臓の筋肉(心筋)に主にウイルスが感染し炎症がおこり心筋自体の破壊が生じて、結果として心臓の収縮機能を低下させる疾患。
返報性の原理
人間が何か人からもらったり、手伝ってもらった際に自然と感じてしまう「お礼をしなくては」心理のこと。
ドア・イン・ザ・フェイス
初めに誰もが拒否するような負担の大きな要請し、一度断らせる。その後に、それよりも負担の小さい要請をすると、それが受け入れられやすくなるというもの。
フット・イン・ザ・ドア
初めに小さいお願い事を受け入れてもらうことで、次に大きなお願い事を受け入れてもらいやすくする方法。販売活動でよく使われる技術で、販売員は、商品を購入する気持ちのない主婦に、最初は「あいさつ だけでも・・・」と玄関に入れてもらえるように頼む。あいさつを受け入れれば(小さな承諾)、 次の機会に商品購入の同意(大きな承諾)が得られやすくなる。

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