オススメ度 ★★★★☆ 4/5
10年ぶり2回目の読了である。初めて「ループ」を読んだときの衝撃をもう一度味わいたくて、三部作(「リング」「らせん」「ループ」)を最初から読み直すことにした。
出版社に勤める浅川和行(あさかわかずゆき)は姪の死をきっかけに、同じ日のほぼ同じ時刻に起こった4人の男女の突然死に興味を抱く。4人に共通した行動を洗い出すうちに、4人が死んだ一週間前の夏休みに貸し別荘に宿泊していたことを突き止める。そして、その場所に赴いた浅川(あさかわ)は1本のビデオテープと出会う。浅川(あさかわ)は友人の高山竜司(たかやまりゅうじ)と共にビデオテープの真相に迫る。
物語の中で視点は常に移り変わる。それぞれの登場人物の恐怖に対して抱く気持ちは、誰もが身に覚えのあるもので非常に共感できる。そして、そんな心情描写によりすぐに物語にひきこまれていった。
また、物語中では随所に科学では説明できない小さな出来事が散りばめられており、読者の心の中には非現実的なものを受け入れる体制が作られていくだろう。そのため読み進めるうちに嫌でも心の中にある恐怖心は膨らんでいく。
人の恐怖に対する行動を見事に表現しているように感じる。特に竜司(りゅうじ)が語るこの2つの言葉は初めて読んで10年以上経過した今でも頭の中にしっかり残っている。
物語は無駄な箇所を一切省いてテンポ良く進んでいく。そんな中、ビデオテープの謎を解明する浅川(あさかわ)と竜司(りゅうじ)の行動には、ホラーの登場人物にありがちな「愚かさ」は微塵も感じさせない。むしろわずかな映像から的確に判断して少しずつ真実に近づいていく過程はこの物語を面白くさせている大きな要素と言えるだろう。
物語中盤で、山村貞子(やまむらさだこ)という超能力者の存在が浮かび上がる。そして、貞子(さだこ)からも超能力という特異なものを持ってしまったこと以外は夢を追う普通の女性の生き方が感じられ、共感していくだろう。
ドラマや映画で脚色された「リング」の物語が一人歩きする中、やはり原作が一番だということを改めて感じた。一番の違いは山村貞子(やまむらさだこ)が「恐怖の対象」というよりも、「並外れた能力を持ったがゆえに普通の人生を送ることができなかった可哀想な女性」として描かれている点である。間違ってもテレビの中から這い出てくるような真似はしない。
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