オススメ度 ★★★★☆ 4/5
マジックだけを唯一の趣味とする少年、椎橋彬(しいばしあきら)は15才のとき、世の中にも両親にも絶望したて家を飛び出すことになった。そして椎橋(しいばし)は生きるために年齢を偽り、唯一の趣味を生かして悪事に手を染めていく。
タイトルの通り「マジシャン」の続編である。「マジシャン」で天才マジック少女として登場した里見沙希(さとみさき)は椎橋を追う舛城(ますじょう)警部補の協力者として登場するが、残念ながら見せ場はあまり多くはない。この物語の中では、椎橋(しいばし)の社会や大人への嫌悪、次第に孤独を深めることに対する心の葛藤や、それを追跡する舛城(ますじょう)の同行に多くのページが割かれている。
椎橋(しいばし)は社会から認められないことの原因を、理解力のない大人のせいだと解釈することで自身を正当化する。
彼の家庭環境が、歪んだモノの見方を作り出したことが痛ましい。
椎橋(しいばし)の世の中に対する敵意は、世の中で葛藤を繰り返しながら生きている多くの人に、多少なりとも共感できるものではないだろうか。そして、そんな人には舛城(ますじょう)が椎橋(しいばし)言う言葉が強く胸に響くに違いない。
この物語は、椎橋(しいばし)と真っ正面から向き合う舛城(ますじょう)の行動を通じて、読者の生き方まで考えさせられる作品に仕上がっていると感じた。
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