オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
松岡圭祐の「催眠」シリーズの第三弾であり、嵯峨敏也(さがとしや)を主人公とする物語である。
響野由佳里(ひびのゆかり)は、児童にピアノを自由に弾かせることで、その児童と心で会話することができる。そのような考えを基に教育を行い続けた結果、文部科学賞から表賞されるに至った。そして同じ日、由佳里(ゆかり)が外出中に、息子の巽(たつみ、娘の麻里(まり)を含む家族4人が13才の少年によって残殺された。少年法によって刑罰の科せられない少年に対して、由佳里(ゆかり)の心には復讐の気持ちが膨らみはじめる。
聴覚に著しい才能に恵まれたが故に、悩み、葛藤するが由佳里(ゆかり)の考えは新鮮である。
嵯峨(さが)は復讐の念に捕われた由佳里(ゆかり)を責めるでもなく、心を救おうとするのである。
この物語を通じて考えさせられたのは13歳以下の少年へは刑罰の対象としない現行の少年法への疑問である。インターネットの普及という情報社会の波の中で、犯罪が低年齢化するのは誰にも疑いのないものである。それに対して法律がどのように犯罪を抑制する方向に働くのか、一歩間違えば14歳以下の犯罪を助長することにもなりかねない。今後の動向を気にかけていきたいと思った。
【Amazon.co.jp】「カウンセラー」