「この夏の星を見る」辻村深月

★★★★☆ 4/5
コロナ禍で思い通りにいかない学生生活を送る日本各地の中高生たちが、星を見ることで繋がっていく。

茨城、東京、長崎県の五島列島の中高生たちの様子を描く。それぞれがコロナ禍の影響によって、部活動の大会などが自粛を余儀なくされる。期待していた学生生活とは程遠い現実に戸惑いながらも、星を見る活動へと導かれていく。やがてそんな動きは、同じ思いを抱く学生同士を結びつけることとなるのだ。

「この夏の星を見る」辻村深月

著者の久しぶりの学園ものである。また、著者辻村深月の作品によく見られる人間関係の暗い部分はあまり描かれず、珍しいほど爽やかな青春物語という印象である。新鮮なのはコロナ禍の学生たちの様子を描いている点である。東北大震災も震災から数年経って各物語に震災を扱った物語が増えたが、コロナ禍もまざまな物語の題材として描かれる時期なのだろう。

序盤はコロナ禍で思い通りにいかない学生生活が、終盤には、コロナ禍だからこそ開けた世界、としてプラスに描いている点が素敵である。社会人としてコロナ禍を経験していると、比較的問題なくリモートワークに移行したので、対面が基本の学生生活にコロナ禍が影響を与えたのかなかなか想像し難いが、そこに一つの視点を与えてくれる。また、舞台となる登場する高校の一つが五島列島の高校である点も面白い。沖縄ほど注目されない離島ではあるが、いつか行ってみたいと感じた。

物語の学生たちの情熱に感化されて、望遠鏡で星を見たくなった。人工衛星を作って打ち上げたくなった。いろんな刺激をもたらしてくれた。

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投稿者: masatos7

都内でUI / UXデザイナー。ロゴデザイナーをしています。

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