「コロナ狂騒録」海堂尊

★★★★☆ 4/5
2020年、コロナ禍に対処する東城医大の医師たちとコロナ禍で1年の延期をしながらも東京五輪に突き進む日本の政策を描く。

コロナ黙示録」に続く、コロナ三部作の第二弾である。政府の愚策と東京五輪開催への固執のためにコロナウィルスが蔓延するなかで、引き続きコロナ患者を受け入れ続ける東城医大が次第に疲弊していく様子を描く。

コロナ患者の対応のために、自分達の命を危険に晒しながらも疲弊していく医療現場からは、そんな医療現場を支援するのではなく誰の利益にもならない五輪開催に固執する政治に失望する声が上がるのだ。如月師長の声がそんな政府の愚策の現実を端的に語っている。

世の中で一番辛いのは、ゴールの見えない我慢をすることよ。それなのに一歩外に出たら能天気な人々は居酒屋でどんちゃん騒ぎ、あの患者さんはキャバクラに行って感染したなんて聞かされると気持ちが萎える。
こんな状況下で五輪開催に固執する連中から、五輪に看護師を派遣してほしいという要請が届き、その一報で、現場で懸命に働き、ギリギリで業務に携わっていた看護師のこころが折れた。彼らは『五輪かいのち』か、という二者択一の問いを、突きつけてきたのだ。
子供の運動会はやっちゃダメなのに、なぜ大人の運動会は、やってもいいんですか。

前作の繰り返しになるが、本書は著者の一つの視点から見た出来事にすぎないのですべてを鵜呑みにするのは危険である。それでも、本書を読んで強烈に感じたのは自責の念である。自分達の無知や政治への無関心や諦めが、日本の政治の堕落をどんどん加速させているのである。無駄と思いつつも、簡単ではないと知りつつも、一人一人が声をあげなければダメなのだ。

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投稿者: masatos7

都内でUI / UXデザイナー。ロゴデザイナーをしています。

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