オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
澪(みお)の通う高校に、白石要(しらいしかなめ)が転校してくる。澪(みお)は要(かなめ)の澪(みお)に対する行動に悩む中で、陸上部の憧れの存在である神原(かんばら)先輩と近づいていく。
高校生の澪(みお)の物語をはじめとする5つの物語である。いずれの物語もその登場人物たちは、人の嫉妬などの負の感情や悪意に悩まされ、それが周囲に伝染し、不幸の連鎖が起こる様子が描かれる。
序盤から負の言動の描写が、著者辻村深月らしく秀逸で、どんな行動も攻撃しようと思えば攻撃できると感じた。
薄い感謝なんかじゃありませんて、どうしてすぐに言わなかったの?
部活休ませてごめんって謝るのも、謝るから許してくださいって考えで言っているとすれば、こちらは許すしかなくなります。謝ることが他者への圧力や暴力になることをわかったうえで言葉を選ぶのは優しさではなく、ずるさです。
5つの物語で描かれる負の感情の多くは、どれも社会で生活している人には身に覚えのあるものである。自分を不幸にするだけではなく、周囲の人間の気分や人生まで狂わせかねない負の感情を、何のために発するか。論理的に考えて誰の利益にもならない言動にもかかわらず、そんな負の感情は社会からは消えないどころか、常に強く渦巻いているのである。本書では比較的わかりやすい完結に向かうが、世の中の負の感情を風刺してているようにも感じた。