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オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
図書委員となった堀川(ほりかわ)は、同じく図書委員の松倉詩門(まつくらしもん)とさまざまな出来事に関わることとなる。
堀川(ほりかわ)と松倉(まつくら)は図書委員として少しずつ仲良くなっていく。先輩の家にある金庫の番号を解明したり、ヘアサロンに髪を切りに行ったりするなかで、2人の知識と鋭い観察眼が活きる様子が描かれる。
現代の新鮮なミステリーという印象である。軽い気持ちで楽しむのにちょうど良いだろう。
幸せを増やすデザイナーの読書レビュー
オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
学びを続けることの重要性を説明している。
全体的に学ぶ習慣のない人向けの内容である。毎日学ぶことが日常の中に構築できている人にとってはそれほど目新しいことはないだろう。
全体的によく言われていることの寄せ集めという感じで、とくに著者自身が新しく調べた事実などはない。煽ったタイトルだったので、期待していたわけではなかったが、予想通り、人の役に立つための本ではなく、著者のの販促のための本という印象である。著者がClubhouse(iOSアプリ)が好きなのが伝わってきた。
タイトルでは何を学ぶべきかを語っているように見せて、中身では学び続けることの重要性や学び方を語っている、という点も煽って売ろうと意図が見えすぎて残念である。こういう手法が著者の信頼を落としていることに業界全体として気づいてほしい。
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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第165回直木賞受賞作品。明治時代、日本画家の娘として生まれたとよの画家としての人生を描く。
明治から大正にかけての6つの時期のとよの人生を描く。画鬼とよばれた父暁斎(きょうさい)の元で育ち、絵を学んでそだったとよは、暁斎(きょうさい)が亡くなったことで、自分の絵のスタイルや、その生き方を悩む様子を描いている。
また、とよだけでなく同じように父の影響を受けて、自らのスタイルに固執する兄周三郎(しゅうさぶろう)や、逆に絵の才能を開花させられなくて早々に居場所を失った弟の記六(きろく)など、画家の家に生まれたさまざな人生が見える。
日本画家として知っているのはせいぜい、狩野家、歌川家程度だったが、本書を読むと、歴史に名を残せなかった多くの画家たちがいたことがわかる。そして、現代の多くの芸術家と同じように、流行りや廃りのなかで自らのスタイルと求められるスタイルのなかで葛藤していたことがわかる。
後半には、関東大震災の場面があり、東北大震災と同じように、当時の家族を心配し、家まで歩いて行く様子が描かれている。物語の中で関東大震災に触れるのは初めてなので新鮮である。随分昔の話のように感じるが実際にはすでに電車が走っていたという事実に気付かされた。
全体的に、芸術家としての生き方の難しさを改めて感じさせられた。
オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
努力をしないで成果を出す方法を語る。
序盤で、むやみに努力することの危険性を語り、その後、楽して成果を出すための考え方を順を追って意説明している。ポイントは、
である。どれも言われてみれば当たり前なことばかりだが、例を交えて説明しているから面白い。
多大な犠牲を払って成功した人々と同じくらい、簡単に成功した人々もいる。ただ、苦労の少ない成功は、物語になりづらいだけなのだ。
努力をするのは悪いことではないが、努力したとしても報われるとは限らない。努力を盲信している人にとっては良いきっかけになるのではないだろうか。
僕自身は楽しいことじゃないと身につかない、という考えで、著者の考え方に近いが、それでも改めてその考えに触れると、自分の考えの純度が上がる気がする。
昨今リモートワーク化が進んでいるが、一方でコロナ禍が収束してオフィスワークに戻して行っている企業もある。しかし、本書を読んで改めて、電車のなかで毎日2,3時間を過ごすオフィスワークスタイルは無駄な努力で決して戻るべきではないと感じた。
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オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第160回直木賞受賞作品。戦後のアメリカの占領下の沖縄で生きるグスク、レイ、ヤマコの3人の若者たちを描く。
物語の舞台は1950年代の沖縄から始まる。戦後の混乱の続くなかで、若者たちは戦果アギヤーとよばれる活動に励む。戦果アギヤーとは米軍基地からの窃盗を働く行為であり、食料品などを盗んで地元の人に配ることなどもあったことから、むしろ英雄視されていたというのである。
序盤から、自分がどれほど沖縄の歴史に疎かったかを思い知らされる。1970年以降に生まれた自分には、沖縄とは一時期アメリカの領土となっていたものがのちに変換された土地という程度の認識しかない。しかし、その混乱のなかで育ってきた若者たちにとっては、まさに人生を左右する出来事だったのである。この物語はそんな混乱の沖縄で思春期を迎えた3人の幼馴染、グスク、レイ、ヤマコの目を通じて一気に物語に引き込んでいく。
3人は、戦果アギヤーの際に行方不明になった3人の英雄のオンちゃんの影を探しながら、自分たち自身もオンちゃんのような沖縄の英雄になりたいという思いを抱いて生きていく。グスクは警察官になり、ヤマコは先生になり、レイは反乱分子となりながらそれぞれの答えを見つけようとする。
やがて、沖縄返還の話が持ち上がる中で、島民も軍の存在に依存する人たちと、軍の圧政に苦しい返還を待ち望むものなど異なる考え方が生まれる中、アメリカ軍の傲慢なふるまいに怒りが積み重なっていく。
さてはアメリカーがやったか、また島民を轢いたな。
基地から吹き荒れる人災に公正な裁きがくだされないことに、住民たちはとっくに忍耐の限界を迎えている。
そんななか3人は英雄オンちゃんの消息に近づいていくのである。
オンちゃんは、帰ってきてたんだなあ
今まで、同じ日本にありながらもほとんど知らなかった沖縄の辿ってきた歴史を、3人の若者の感情と共に、生々しいほどに感じることができた。情けないことにゴサの動乱もVXガス放出事件も、軍用機墜落事故についてもこの物語を読んで初めて知った。
27年間のアメリカ統治がそこで暮らす人々に大きな爪痕を残したことやその時代を生きた人々の強さを感じられる作品。