「1分で話せ」伊藤洋一

1分で話せ

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
短くシンプルに伝える方法を語る。

人は人の80%の話を聞いていないとして、意思を伝え、人を動かすために1分で話すことの重要性を説いている。そんななか話が伝わらなくなる4つのパターンが印象的である。

「プロセス」を話す
気を遣いすぎる
自分の意見とは違うことを言う
笑いを入れる

確かに僕自身の周囲でよく見るのは、「気を遣いすぎる」である。人を傷つけまいと一生懸命オブラートに包むから何を欲しいのだかわからなくなるのである。また、人を動かすのは「頭の中に生まれたイメージ」であり、そのために2つの手法があると言う。

ビジュアルなイメージを直接的に描いてもらう
聞き手をそこにあてはめていく、聞き手にそのイメージの中にはいっていってもらう

自分はどちらかというと直接的に物を言いすぎる傾向があって、よく「言い方が悪い」と言われる。しかし、むしろ人に思いをしっかり伝え、動かすためにはその方向で正しいと思えるようになった。ビジュアルのイメージを喚起する方法は心がけていきたいと思った。

伝え方でヒントになる箇所はあったが、全体としては内容の薄さを感じてしまった。後半に進むにしたがって前の章で語ったことの繰り返しで、最後の章はほとんど時間の無駄だった。

【楽天ブックス】「1分で話せ」

「The Monk Who Sold His Ferrari」Robin Sharma

The Monk Who Sold His Ferrari

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
心筋梗塞をきっかけに輝かしい法律家の経歴と私財を捨ててインドに旅立った友人が、若返って帰ってきてヒマラヤで得た豊かな人生のための教訓を語る。

すべてを捨ててヒマラヤに行った友人という話が印象的だったため序盤から興味津々である。ヒマラヤでしあわせにに長生きをする人々の秘訣を教わって帰ってきたJulianは話し始める。灯台のある美しい庭に関取がいる、不思議な逸話から、徐々にその奇妙な話が意図するところを説明していく。

まとめてしまうと、本書で語っている豊かな人生を生きる鍵はは次の7つである。

Master Your Mind
Follow The Purpose
Practice Kaizen
Live With Discipline
Respect Your Time
Selflessly Serve Others
Embrace the Present

つい先日「アファメーション」を読んだばかりであるが、それだけでなく「嫌われる勇気」など、本書で語られていることは、形や順番は異なれど、どれも多くの場所で語られることばかりである。それでも、語り方が異なればまた伝わり方や感じ方が違うもので、今回も改めて自分の生き方の純度をあげるきっかけとなった。

言葉の重要性、周囲で起きたことに対する自分の反応のコントロール、そして人や社会に尽くすこと、この3点は常に忘れないようにしたい。また、そのほかにも、人に伝えたい言葉であふれていた。

There are no mistakes in life, only lessons. There is no such thing as a negative experience, only opportunities to grow, learn and advance along the road of self-mastery. From struggle comes strength. Even pain can be a wonderful teacher.
No matter what happens to you in your life, you alone have the capacity to choose your response to it.
Your I can is more important than your IQ.
Don't pick up the phone every time it rings. It is there for your convenience, not the convenience of others.

世の中にはすでに本書で書かれていることができている人も多いだろう。しかし、そんな人でも何度もその考え方を忘れないために同じ考えに触れ、その純度を上げていくべきなのだろう。

「アファメーション」ルー・タイス

アファメーション

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
人生を好転させる5つの法則を語る。

たびたび良書として名前が挙がってくるため、「アファメーション」という言葉から、おおよその内容の想像はできるのもかかわらず、自分の人生の密度をさらにあげるために本書を読むに至った。

本書は次の5つのステップを順番に語っている。

ステップ1 ビジョン、使命、価値観、動機、態度を明らかにする。
ステップ2 創造的な思考、ポジティブなセルフトークを取り入れる。
ステップ3 ターゲットを定義し、目標の刷り込みを行う。
ステップ4 行動を起こし、方向を正す。
ステップ5 人を育て、組織を改善する。

人生のすべては自分の選択であり、行きたい場所を明確にして、それを言葉にすることで実現に近づく、これは間違いない。また、この考えは、昨年読んだおすすめの本「自動的に夢がかなっていくブレインプログラミング」と非常に似ており、結局、豊かな理想の人生を達成するための誰もが認める方法ということだろう。

そういう意味では、考え方としてはすでに何度か触れたものだったので、大きな驚きはなかったが、表現の仕方、説明の仕方のなかに、いくつか新しいと思えるものがあり、この考え方の重要性を改めて再認識できた気がする。なかでも、自分のネガティブな考え方によって束縛され、不幸になっている人を端的に表した次の言葉が印象的だった。

見てごらん、鍵は君のポケットの中にあるよ。君はただ鍵を開けて、自由になればいいんだ。

後半は目標設定の必要性やそれに関わる逸話を多く書いており、また個人だけではなくグループへの適用などにも触れており、必要以上に長く感じた。個人的に人生を好転させたくて本書を読もうと考えているなら、上にも書いたように「自動的に夢がかなっていくブレインプログラミング」の方が端的でわかりやすく、また楽しく読めるだろう。

【楽天ブックス】「アファメーション」

「解きたくなる数学」佐藤雅彦/大島遼/廣瀬隼也

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
いくつかの数学の問題を写真とともに提示し、解説していく。

数学の問題を興味深い写真とともに解説している。それぞれが特別難しい問題ということはないが、普通の数学の問題を解くのと、実際の場面を見せられて数学を応用して答えを導き出さなければならないのとでは、少し考え方が異なると感じた。「数学的帰納法」など久しぶりに触れる考え方もあれば、「鳩の巣原理」など、新しい発見もあった。

面白いのは著者が末尾でも語っているように、同じ問題でも写真とともに示すと興味深く見えるということである。興味をそそる見せ方をするという考え方は他のことにも応用できそうだと思った。

【楽天ブックス】「解きたくなる数学」

「白い巨塔」山崎豊子

白い巨塔

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
国立大学医学部助教授の財前五郎(ざいぜんごろう)が、医者としてのキャリアを築いていく様子を描く。

前半は大学内の教授選、後半は財前五郎(ざいぜんごろう)が巻き込まれた医療訴訟を中心に展開する。

自身が教授に選ばれるため、またその周囲の人間は財前(ざいぜん)を教授にするために、それぞれが様々な人脈を駆使して票を集める様子は、醜くもあるが、学ぶところもあると感じた。どんな人でも、お金や地位や家族の豊かな人生を約束されれば小さな信念など簡単に譲ってしまうのだ。

後半の医療訴訟では、一人の医師が証言している言葉が印象的だった。医師に厳しすぎる判決は、逆に医療の発展を損ねる結果となり、どこまでを誤診と定義するかは、医療の発展に影響する判決なだけに、常に難しさがあると感じた。

全体的に、貧しい家庭に生まれた財前(ざいぜん)が、助教授から教授へと少しずつ医者としての地位を登っていく過程で忙しさも増す中で、傲慢になっていくところが痛々しい。その一方で、自らの信念を全うしたことで医者としての立場を追われた里見(さとみ)教授や、立場に関係なく事実しか証言しない大河内(おおかわうち)教授など、尊敬できる生き方にも触れることができた。

本書の舞台となっているのは昭和30年代とかなり昔だが、技術的にはもちろん、本書で描かれているような、医療の発展を阻みかねない封建制も改善されていると期待したい。

「白い巨塔」といえば過去豪華キャストでドラマ化されており、山崎豊子の最高傑作という印象を持っていたが、おうして実際に読んでみると、一人の傲慢な医者の周囲で起こった出来事に閉じており、「大地の子」「二つの祖国」「沈まぬ太陽」に比べると、登場人物の浮き沈みや、世界の大きな変化など、物語の壮大さはあまり感じなかった。

【楽天ブックス】「白い巨塔(一)」「白い巨塔(二)」「白い巨塔(三)」「白い巨塔(四)」「白い巨塔(五)」

「In the Dream House」Carmen Maria Machado

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
女性同性愛者である著者の、恋人との出会いとその後の同棲の様子を語る。

著者自身が、ある女性と恋に落ち、ともに生活を始め、やがてその女性から振り回されるまでの様子や心のうちをを描いている。その過程で恋人に対する感情たけでなく、社会や家族のレズビアンに対する考え方も吐露していく。同時に、女性の同性愛者間で起きた数々の事件などに触れ、思うことを語っていく。

回想録ということで、物語の展開自体が面白いということは特にないし、有名人の伝記のように、自らの生き方に対して、良い刺激になることもない。

おそらく、この本がベストセラーとなった理由は、内容の面白さよりも、そのレズビアン視点のカップル間の暴力という、斬新さゆえなのだろう。今までに考えたこともなかった、同性愛者視点の社会の見方を知ることができた。世の中が同性愛者を理解していないことに対する、著者のストレスを行間から感じた。そして、さまざまな映画やMVなどのシーンが語られるので、アメリカの文化を知る上では面白いだろう。

一方で、日本ではあまり有名ではない出来事やアーティストや映画の話題にもたびたび触れられているので、アメリカの文化にかなり詳しくないと楽しめないだろう。徹底的に引用される出来事を調べるつもりで読むぐらいが面白いかもしれない。また、スラングがかなり多く登場する。こちらも普通に読んでいくよりも、アメリカ英語を徹底的に学ぶつもりで調べながら読むと面白いかもしれない。

面白かったとか刺激になったとかではないが、間違いなく新しい世界観や視点をもたらしてくれる。