「やってはいけない勉強法」石井貴士

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
代々木ゼミナール全国模試1位の経験を持つ著者が、勉強法について語る。

100年時代、人間は大学を卒業した後も常に学び続けなければならない。そんな一生勉強を実践する人間の一人として、いい勉強方法があったら常に取り入れ、勉強方法を改善したいと考えているなか、本書にたどりついた。

どちらかというとやってはいけない勉強法というよりも、著者がやった勉強法とやらなかった勉強法のような印象を受けるが、1人の実績がある人間の勉強方法を紹介している本として、参考にできる部分もあるかもしれない。

同意できる部分もあれば同意できない部分もあるが、もっとも印象的だったのは

NG 書いて覚える
OK 目で見て覚える

という点だろう。僕自身記憶というのは五感をフル活用してこそ記憶に定着しやすいと考えていて、目で見ると同時に手の感覚で記憶することができる「書いて覚える」(と同時に声に出して口の感覚と聴覚で覚える)は悪くない方法だと考えていた、しかし著者がいうように確かに書いて覚えるよりも見て覚える方が時間効率が良いのはそのとおりだろう。

しかし効率を言い始めると、例えば著者は

NG 独学でがんばる
OK 先生をつける

NG 通信教育で済ませる
OK 直接、話を聞いて教わる

と書いているが、実際どんなにお金を払ったとしても先生に聞ける時間など限られており、時間効率を考えるとかならずしも同意できないと感じた。勉強方法は合う合わないがあるので、読んだ人が納得できる部分から取り入れればいいだろう。「目で見て覚える」などはぜひ試してみたいと感じた。

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「燃えよ剣」司馬遼太郎

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
新撰組副長土方歳三を中心に幕末の新撰組の様子を描く。

新撰組や副長の土方歳三、沖田総司など、名前と最後の函館の様子や沖田総司が病気で亡くなったことだけは知っていたが、どのようにして新撰組が発足し、どのような動きをしていたかはほどんと知らなかったため、今回ようやく名作である本書に至った。

世の中は、攘夷、倒幕、という考え方で時代が大きく動く中、攘夷を目的とした団体として立ち上がる。幕府の管理下の団体として発足したために、倒幕を目的として動く長州藩と敵対していく。新撰組を大きくしたいという野望と、攘夷、つまり外国人を退けることを目的として立ち上がった親善組なので、少しずつ世の中の流れが幕府から、長州藩、薩摩藩へと移行する中で、幕府の下で動くことが、賊として名を歴史に残すことに繋がりかねないとして葛藤したり離脱したりする隊士たちの様子が面白い。

やがて、近藤勇や沖田総司を失い、土方歳三は北へ北へと戦いの場所を求めて移動し、やがて函館にたどり着き最後の戦いを迎えるのである。

賊名を残したくない。私はお前と違って大義名分を知っている。

土方歳三の生き方に感銘を受けながらも、わずか150年程度前の時代に、離脱をしようとする隊士たちに切腹を命じたり、隊の存続に邪魔になりそうな人々を暗殺したりする、そんな新撰組の秩序維持の方法に時代の移り変わりの速さを感じる。残念ながら薩長同盟や坂本龍馬についての記述はほとんどないので、今度はもう一つの名作「龍馬を行く」などにも触れてみたいと思った。

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「錆びた滑車」若竹七海

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
女性探偵の葉村晶(はむらあきら)は老女の尾行を依頼され、やがてある青沼ミツエとうい女性のアパートに移り住むこととなる。

単純な調査の依頼からやがてアパートに移り住み、そこでミツエの孫のヒロトと出会う。ヒロトは父親と一緒のところおを交通事故に会い、ヒロトは重傷を負い父親は無くなった。事故前後の記憶が失われているヒロトは、なぜその場所に父親と一緒にいたのかを知ろうと晶(あきら)に頼むのである。本書はそんなヒロトの事故前後の謎を解き明かしていくまでの様子を描いている。

葉村晶(はむらあきら)がいろんな場所を移動し、いろんな人に聞きながら少しずつ真実に近づいていく様子を描いていて、実際の探偵業なんてそんなものかもしれないが、山や谷がなく、登場人物もかなり多いので読みにくい。

もう20年以上前になるだろうが、初めて読んだ著者若竹七海の作品「遺品」がインパクトがあっただけにちょっと残念である。とはいえ本書自体それなりの評価を得ているので、葉村晶のシリーズを通して読むとひょっとしたらまた違った印象を持ったのかもしれない。

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「この英語、訳せない!」越前敏弥

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
数々の著名作品を翻訳している翻訳家の著者が、訳すのが難しい英語を解説する。

著者越前敏弥さんの本は本書で3冊目になるが、毎回意味をつかむのが難しい文章を紹介してくれて勉強になる。本書でも日本人には難しかったり、間違えがちな様々な英語表現を紹介している。teenagerは十代ではないなど、知っていることも多々あったが、改めて学んだこともたくさんあった。例えば次の表現。

The room was badly heated.

その部屋は暑すぎるのか寒すぎるのか、なんとネイティブに質問しても意見が分かれるのだという。確かにbadlyの意味の撮り方でどちらにも取れる。このように実際日常的に使われていながら、実際には人によって意味のとり方が異なる単語は日本語にも多くあるような気がしてきた。本書でも紹介されている「カーキ色」などはその代表例だろう。文脈上重要じゃないから誰も意味が正しく取れているかどうかを確認しないのである。

また、Hopefullyの使い方については、僕がときどき英会話で使っている方法は誤用ということを初めて知った。今後は気をつけたい。

いつものように翻訳の難しさと、言語の奥深さを改めて教えてもらった。

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「リカーシブル」米澤穂信

オススメ度 ★★☆☆☆ 2/5
中学生の越野ハルカは母と弟サトルともに母の故郷へ引っ越してきた。その町ではタマナヒメという未来を予知できる女性の伝説があった。

寂れた地方都市で起きる不思議な物語。ハルカとサトルは子供でありながらも新しい環境、新しい友人に馴染もうとするが、そこには地方都市特有の、外から来た人間に対する敵視と、地元に長く住んでいる人のみが知る暗黙のルールが存在するのであった。

そんななかサトルの不可思議な言動から、少しずつハルカはタマノヒメの伝説に興味を持っていくのである。

中学生の女性が主人公ということで、懐かしい感じがする。特に物語として新鮮な点はなかった。最近の米澤穂信の作品には人間の心の深い部分を描くような鋭さを感じていたのだが、本書はそこまで期待に沿うものではなかった。

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「絵でわかる英文法」波瀬篤雄

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
日本人には捉えづらい英単語のイメージを絵でわかりやすく伝えている。

英単語のほとんどは日本語の単語と1対1で対応されるものではない。例えばonなどは「〜の上に」と訳されることが多いが、その理解だけだとどうしてもうまく訳せない時がある。そんな日本語に置き換えることができない英単語をイメージで説明している斬新な内容である。

僕自身すでに大学を卒業してからだけでも15年以上は英語を勉強している身だったが、それでも新鮮な考え方にいくつか出会えた。面白かったのはスイッチをつける意味のturn onという表現。onの流れでの説明だったが、なぜturn onというのかがスイッチの構造をイメージするとすっきりした。

また、日本人が混乱しがちなcomeとgoの使い分けの考え方も新鮮だった。

comeは手に負える
goは手に負えない

としていて、例として挙がっている

  • Where has my eraser gone?
  • Winter has gone.
  • come true
  • come off
  • go hungry
  • go mad

などをみると納得できる。

いままで特に疑問に思わずにただ暗記していたことに気付かされる部分もあった。イメージとして持っておくとより自然に英語の意味を捉えられるようになるかもしれない。どちらかというと手元に置いておいてなんども読み返すべき本なのだろうと思った。

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「The Good Daughter」Karin Slaughter

オススメ度 ★★★★☆ 4/5
CharlieとSamの姉妹は父親の弁護士RustyとかつてNASAに勤めていたこともある賢い母親Gammaと暮らしていた。そんななか、ある日現れた2人の男によって母親を殺され、姉妹は命からがら生き延びる。本書ではそれから26年後の姉妹を描く。

最初の惨劇の印象がすごいが、物語の中心はその惨劇から26年後、再び妹のCharieが事件に巻き込まれたことから始まる。構内の発砲事件により男性と少女が亡くなり、中学生の女の子が拘束されたのである。その弁護を担当することになった父Rustyにより、26年前の事件により深刻な後遺症を持ったまま生きているSamもNewYorkから故郷に戻ることとなる。

一方、父Rustyを手伝いながら故郷で生活していたCharlieは夫のBenとの関係がうまくいかず、浮気をしたりなど不安定な生活を送っている。後遺症に悩むSamは、26年前に自らが犠牲になったせいでCharlieが生き延びたこと、幸せに生きていることを救いとして自らの人生に向き合ってきた。にも関わらず、なかなか幸せな結婚生活をCharlieに苛立つのである。やがて、CharlieとSamは26年前には話すことのできなかった心のうちをぶつけあうこととなる。 Everybody thinks I blame myself for running away. No, blame myself for not running faster. みんな私が逃げた自分自身責めていると思っているけど違うの。早く走れなかった自分を責めているの。

CharlieやSamと接するときに父Rustyの語る言葉が印象的である。

It is a father’s job to love his daughter in the way that she needs to be loved.
娘に合わせて愛するのが父親の務めなんだよ。

There is value in forgiveness.
許すことには価値がある。

やがて物語は26年前の知られざる真実へとつながっていく。

物語全体としては、ChrlieとSamの悲劇によって生み出された悲しい生き方も印象的だが、そんな2人を支えた父と母の異なるタイプの人間像がなによりも印象的である。死んだあともこんな風に思われる親になりたいと思った。悲しい物語ではあるが、同時に地位ちゃ母のありかた、姉妹のありかたを考えさせられる作品。

「反応しない練習」草薙龍瞬

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
すべての悩みを根本的に解決する方法を、「ムダな反応しないこと」としてその考え方を説明する。

幸せに生きるための考え方を書いた本は昨今溢れており、本書もそんななかの一つである。基本的に書かれていることでそれほど新鮮な内容はなかった。とはいえ本書が役に立たないとか読む価値がないとかそういうことではなく、このような物事の考え方は、ただ単に知識として持っているだけで満足するのではなく、繰り返し触れてその精度を上げていくべきなのだろう。

個人的にもっとも印象的だったのは

相手はいつでも「初めて会った人」

という考え方である。人を過去の何度かの振る舞いでこの人はこういう人と判断するのではなく、その人自身も成長している変化しているかもしれない。だからこそ、過去に会ったことある人でも曇りのない目で見るべきだということである。もちろん言うほど簡単ではないが、今後意識していきたいと思った。

上にも書いたことだが、内容としてはよくある種類の生き方の考え方である、「嫌われる勇気」などが有名だろう。しかしこのような考え方は定期的に接して、自らを省みることが重要だと考えると、本書は一定の役割は果たしていると言えるだろう。

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「ラプラスの魔女」東野圭吾

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
遠く離れた2つの温泉街で硫化水素の発生による死亡事故が起こった。研究者の青江(あおえ)は警察の依頼で意見を求められ現場に赴き、2つの場所で同じ女性を目撃する。

様々な登場人物の視点を行き来しながら物語は展開していく。刑事の中岡(なかおか)と研究者の青江(あおえ)という硫化水素による事故に興味を持った2人はお互いに牽制しながらも少しずつ真実に近づいていく。また、若い女性の警護を任された武尾(たけお)も不思議な体験をする。その若い女性の周囲でたびたび不思議なことが起きるのである。物語はやがて一つの大きな流れに向かっていく。

いつものように東野圭吾はエンターテイメントとしては最高で、一気に読ませる面白さがある。ただ、残念なのは読み終わった後数週間もすればすべて忘れ去れててしまうということだろう。つまり時間潰しにはなるが学びにはならないということである。学びや知的好奇心を読書に求める僕のような読者にとっては若干物足りないかもしれない。

【楽天ブックス】「ラプラスの魔女」