オススメ度 ★★★★☆ 4/5
ソ連国境近くの日本人開拓村で8歳だった勝男(かつお)は日本の敗戦とともに両親を失い、やがて中国の家庭にもらわれ、陸一心(ルーイーシン)として生きていくこととなる。そんな中国と日本という2つの国の間で生きた男の人生を描く。
序盤は、勝男(かつお)が陸一心(ルーイーシン)として中国の家庭に受け入れるまでを描く。しかし、日本人の血を引いているという事実と、文化大革命という歴史的な動きによって、さまざまな障害となって陸一心(ルーイーシン)の未来を阻む、陸一心(ルーイーシン)はスパイの容疑で15年の実刑を宣告されるのである。
中盤からは、陸一心(ルーイーシン)は、育ての親や友人の努力の末に名誉を回復し、日本語を話せるという能力ゆえに、中国の国家をあげての一大プロジェクトである製鉄所建設で重要な役割を担うのである。日本と中国は文化の違いに戸惑いながらも少しずつ製鉄所建設を進めていくのである。
文化大革命という大きな歴史的出来事ではあるが、あまり日本では触れられることが少なく、僕自身も「ワイルド・スワン」という物語で軽く知っている程度であった。本書の序盤はそんな文化大革命の様子を詳細に伝えてくれる。そして、その後の日中合同プロジェクトである製鉄所建設の様子からは、文化大革命という出来事が、中国人の考え方に大きく影響を及ぼしていることがわかる。
2つの国の間で翻弄された人間の様子を描くとなかで、日本と中国の戦後の様子を描き、また日本人と中国人の考え方の違いなども描写している。全体的に、この物語を描くために、多くのことを取材して著者の情熱が伝わってくる。