オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第161回直木三十五賞受賞作品。
江戸時代の大阪。穂積成章(ほづみなりあき)は浄瑠璃に心を奪われ、やがて近松半二と改名して浄瑠璃の立作者(たてさくしゃ)を目指すのである。
近松門左衛門亡き後の世の中を描いており、本書の主人公である近松半二は近松門左衛門にあやかってつけたということである。調べてみると実際に多くの浄瑠璃作品を世の中に出している実在の人物なのである。近松門左衛門という名前は知っていたが歌舞伎と浄瑠璃の違いもよくわかっていなかった。歌舞伎は人間が演じるのに対して、浄瑠璃は人形劇なのだそうだ。
半二は、同じ竹本座の人形使いの吉田文三郎に言われて浄瑠璃を書き始め、友人である久太が並木正三(なみきしょうざ)と改名して歌舞伎界に少しずつ新たな風を引き起こしながら成功していくのと競うように、半二も浄瑠璃で少しずつ頭角を現して成功していく。やがて、半二は渾身の妹背山を書き上げるのである。母との軋轢や妻との出会いなど、半二の浄瑠璃にかける人生を描いている。
考えてみれば、映画も存在しなかった江戸時代、今の僕らにとっての映画やアニメの役割を担っていたものが浄瑠璃や歌舞伎なのだろう。そして、そんななかで大成しようとする半二や正三、そしてなどの人形遣いは言ってみれば映画監督や、主演俳優なのだろう。当時の娯楽の様子が伝わってくる。
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