オススメ度 ★★★★☆ 4/5
深夜の住宅街の空き家で通りがかりの警察官により、首を吊った女子中学生春日井のぞみが見つかり、その場にいた女子中学生冬野ネガが拘束された。「私が殺した」と主張する冬野ネガに対して、神奈川県警の真壁と仲田が真実解明していく。
本書を読んで初めて知ったのが、2000年に少年法が改正されて、現在の少年法の適用は14歳までとされていることである。本書の冬野ネガは14歳で、少年法の適用範囲を出ており、それにより取調室が使われるなど、通常の被疑者と同じ扱いをされるのである。
送検するまでの2日間にできるかぎり真実を明らかにしようと真壁(まかべ)と仲田(なかた)が奔走する様子を描いている。真壁は将来を期待される刑事なので、一つの実績と位置付けてできるかぎりスムーズに真実を解明したいと考える。一方でパートナーとなる仲田蛍(なかたほたる)は生活安全課の仕事をしながら過去数々の少年に絡んだ事件を解決した経歴を持っている。論理的に状況を分析して真実に近づこうとする真壁と、関係者の心のうちを想像しながら真実を見出そうとする仲田という異なる考え方を持つ2人がともに行動するのだが、少しずつ真壁の考え方に変化が現れていくのである。
やがて、冬野ネガの家庭が貧困家庭であったことが判明していく。真壁自身シングルマザーの貧困家庭から刑事になった経歴を持つため、それでも殺人の言い訳にはならない、と見ていたのだが、少しずつ真実が明らかになるにつれて考え方を変えていく。
送検までの2日間の事件解決の物語ではあるがその間の真壁の人間的な成長の物語でもある。女子中学生2人の友情を描きながら、親のあり方や生活保護に対する世の中の偏見など多くの題材がつまった密度の濃い一冊。
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