オススメ度 ★★★★☆ 4/5
第148回直木35賞受賞作品。
就職活動に悩む4人の大学生を描いている。
ルームシェアをする拓人(たくと)、光太郎(こうたろう)と、たまたまそのアパートの上の階に住んでいた理香(りか)とその留学友達瑞月(みづき)は、エントリーシートなどの作成とともに就職活動をしていた。それぞれの就職活動の進捗状況を伺いながら、強がりながらも、すこしずつそれぞれの行動に本性が滲み出てくる。そんななか、それぞれが、TwitterやInstagramを発信しており、そこで強がったり、人を見下したりしている様子が描かれるのである。
実際の就職活動がここまで陰鬱としたものかどうかは疑わしいし、ここまで今のこの世代の人たちがSNSに縛られているとは思えないが、誰もが本書で描かれているようなん、強がっている自信家の外向けの顔と、思い悩む弱いうち向けの顔、他人を思う優しい顔、などを使い分けているのかもしれない。
朝井リョウの作品は今まで2作品読んだが、どこか薄っぺらい印象を持っていたが、人の二面性を描いていて、一皮むけた感じがする。人を冷めた目で見る拓人(たくと)や、不器用にも就職活動を突き進む理香(りか)、そして就職活動をしている人々を「没個性」と語って夢に逃げる理香(りか)の恋人の隆良(たかよし)など、誰もが、いずれかの行動に共感を覚えるのではないだろうか。
若い作家の作品は、あるとき突然進化するが、朝井リョウにとって本書がそれにあたるように感じた。この先の作品も読んでみたいと思った。
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