「Where the Crawdads Sing」Delia Owens

オススメ度 ★★★☆☆ 3/5
2021年本屋大賞翻訳小説部門受賞作品。ノースカロライナ州の湿地帯に暮らすKyaの家族は、父のアルコール依存症と暴力の前に一人、また一人と家を出て行って、最後にはKyaと父の二人だけになった。やがて父も家に戻らなくなり、Kyaは一人で野生の生き物とともに生きていくこととなった。

狼少年など、幼い子供が文明と離れて生きていく物語はあるが、この物語のKyaの場合、幼い頃は両親がいたために言葉を話すこともでき、また、人間の文化から遠く離れて生きているわけではないので、ボートの燃料を買うためにとった貝を近所のお店で売ったりして生ききているのである。両親がいないために、学校のなじむこともできずに、やがて人々から「Marsh Girl」と蔑んで呼ばれ、様々なうわさが飛び交うこととなる。

前半は、Kyaの家族がいなくなったあとに一人で生きる様子を描いている。Kyaの様子だけでなく、その近隣で見られる、鳥や植物の描写が非常に細かく、物語の展開以外にも新たな視点を与えてくれるだろう。

十代後半になると、そんな不思議な存在に魅力を感じる男性たちと恋愛関係に陥る。教育や街の生活と離れて生きていくKyaの物語。後半はそんなときに起こった一つの事件を描いている。

一人の女性を中心として自然を描いたあまり類を見ない作品。物語の展開として面白いとは言えないかもしれないが一読の価値はありである。

投稿者: masatos7

都内でUI / UXデザイナー。ロゴデザイナーをしています。

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